この記事では「胡乱」について解説する。

端的に言えば胡乱の意味は「疑わしく怪しいこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「胡乱」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「胡乱」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「胡乱」の意味や語源・使い方まとめ

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胡乱」は「うろん」と読みます。口語表現ではあまり使われない言葉ですが、小説などでは良く見かける言葉ではないでしょうか。それでは早速、「胡乱」を深く理解するために、正確な意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「胡乱」の意味は?

まず初めに「胡乱」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「胡乱」には、次のような意味があります。

1.正体の怪しく疑わしいこと。また、そのさま。
2.確かでないこと。真実かどうか疑わしいこと。また、そのさま。
3.乱雑であること。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「胡乱」

上記のように「胡乱」には三つの意味があります。

一つめは、正体が怪しく疑わしい、と言う意味です。これは、不審な人や不審な物に対して良く使われますね。現在では一般的にこちらの意味で使われることが一番多いのではないでしょうか。

二つめは、曖昧(あいまい)で不確か、疑わしいと言う意味です。一つめと意味が似ていますが、こちらは、「胡乱な話」「胡乱な情報」と言うように、人や者でないものに用いられます。

三つめの意味は、乱雑で整っていないと言う意味です。今ではあまり用いられませんが、古典文学や中国語ではこの意味で用いられていることがありますので、覚えておきましょう。

「胡乱」の語源は?

次に「胡乱」の語源を確認しておきましょう。「胡乱」の読み方は少し変わっていますね。これは「唐音」と言って、中国から伝わった読み方です。「胡乱」は『正法眼蔵 』と言う書物に載っていることから、室町時代に禅宗によって中国から伝わったと考えられています。また、語源については二つ説がありますので紹介しましょう。

一つめは、中国の故事に由来していると言う説です。昔、中国ではモンゴル平原を治めていた騎馬民族(匈奴)のことを「胡」と言いました。そしてこの「胡」が、中国へ攻め入った際、中国側は慌てふためいて逃げ回った、と言う故事が残されています。これが語源となって、「胡乱」が、乱雑な、と言う意味になったのです。

二つめの説は、漢字の意味に由来があると言う説ですね。「胡」がもともと、疑わしい、不審な、と言う意味があるため、乱れたと言う意味の「乱」を付して「胡乱」と言う言葉ができたと考えられているのです。どちらが正しい語源なのかはまだ明らかではありません。

\次のページで「「胡乱」の使い方・例文」を解説!/

「胡乱」の使い方・例文

それでは「胡乱」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.近所の住民ではない胡乱な人物が、何かを探す様子で家の前をうろついていた。
2.彼女は私を不誠実な商談相手と思っていたらしく、胡乱な目つきで見てきた。
3.友人に英語のノートを借りたが、彼の字はひどく胡乱で単語の一つも読むことができなかった。

辞書からの引用の項目で述べた通り、「胡乱」の意味は三つあります。

例文1の「胡乱」は、正体が怪しい、と言う意味です。このように、挙動不審な人物や、不審な人や者に対して「胡乱」は用いられます。

例文2は、確かでない、疑わしい、と言う意味です。例文中の「うろんな目つき」と言う表現はとても良く使われますね。これは、疑っているような目で見ている様子、を表現している言葉です。怪しい変な目つき、と意味を間違えやすいので気をつけて下さいね。

例文3は、乱雑な、と言う意味です。この例文では、字が乱雑で汚い、と表現しています。「胡乱」は、現在では、乱雑、と言う意味ではあまり使われませんが、古い時代の作品などではこちらの意味で使われることもありますので、覚えておいてください。

「胡乱」の類義語は?違いは?

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「胡乱」の類義語には、「訝しい」「不審」などが挙げられます。

その1「訝しい」

訝しい」は「いぶかしい」と読み、物事が不明で怪しい、または怪しむ、と言う意味です。飛鳥時代から奈良時代の古代では「いふかし」と言う言葉で、知りたくて心が引かれる、気がかりである、と言う意味でした。それが転じて、今現在一般的には、物事を疑い怪しむと言う意味になったようです。「胡乱」を、疑わしく不確かだと疑う意味で用いた場合、「訝しい」は類義語にふさわしいでしょう。

\次のページで「その2「不審」」を解説!/

その2「不審」

不審」は「ふしん」と読みます。「不審者」や「挙動不審」「不審物」と言う言葉をよく聞きますね。「不審」とは、疑わしく思うこと、疑わしく思えることです。つまり「不審者」と言うのは怪しく疑わしい人の事で、「挙動不審」は、その行動や様子が怪しい、と言うことですね。「胡乱」を、怪しい人物や物などに用いた場合、「不審」が類義語にふさわしいでしょう。

「胡乱」の対義語は?

「胡乱」の対義語は、「明白」が挙げられます。

「明白」

明白」は「めいはく」と読みます。意味は、明らかで疑う余地がない、と言う意味です。「明」は、明るい、明らか、と言う意味の漢字で、「白」は白いの他にも、明るい、明らか、と言う意味があります。同じ意味の漢字を並べて意味を強調している熟語ですね。

「胡乱」を、疑わしい、と言う意味で用いた場合に、対義語としてふさわしいでしょう。

似ている言葉「胡散」

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「胡乱」と「胡散(うさん)」は、同じ「胡」を使っており、とても良く似ています。そして、意味も同じく、怪しく疑わしい、と言う意味ですね。「胡散」に「臭い」を付した同義語の「胡散臭い」と言う言葉は良く使われますから知っている方も多いでしょう。

実は、「胡散」は「胡乱」から派生した言葉だと考えられています「胡乱」が唐音で読まれているのと違い、「胡散」は「胡」が唐音、「散」が日本の読み方なので、「胡散」は和製の漢語と考えられるのです。つまり、「胡乱」と「胡散」は、同じ意味の言葉ですが、中国製の言葉と和製の同義語である、ということですね。

「胡乱」を使いこなそう

この記事では「胡乱」の意味・使い方・類語などを説明しました。「胡乱」は、中国から禅宗によって持ち込まれたと考えられています。中国語での「胡乱」は、いい加減にそそくさと、やたらに、勝手に、と言う意味で使われている言葉です。日本で用いられている、乱雑な、と言う意味に近いですね。もとは中国語ですが、日本に渡ってきて意味が変わってしまった言葉の一つでしょう。言葉の意味や音が、時代や文化と共に変遷していくことが良くわかりますね。

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国語言葉の意味

「胡乱」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

「胡乱」の使い方・例文

それでは「胡乱」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.近所の住民ではない胡乱な人物が、何かを探す様子で家の前をうろついていた。
2.彼女は私を不誠実な商談相手と思っていたらしく、胡乱な目つきで見てきた。
3.友人に英語のノートを借りたが、彼の字はひどく胡乱で単語の一つも読むことができなかった。

辞書からの引用の項目で述べた通り、「胡乱」の意味は三つあります。

例文1の「胡乱」は、正体が怪しい、と言う意味です。このように、挙動不審な人物や、不審な人や者に対して「胡乱」は用いられます。

例文2は、確かでない、疑わしい、と言う意味です。例文中の「うろんな目つき」と言う表現はとても良く使われますね。これは、疑っているような目で見ている様子、を表現している言葉です。怪しい変な目つき、と意味を間違えやすいので気をつけて下さいね。

例文3は、乱雑な、と言う意味です。この例文では、字が乱雑で汚い、と表現しています。「胡乱」は、現在では、乱雑、と言う意味ではあまり使われませんが、古い時代の作品などではこちらの意味で使われることもありますので、覚えておいてください。

「胡乱」の類義語は?違いは?

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「胡乱」の類義語には、「訝しい」「不審」などが挙げられます。

その1「訝しい」

訝しい」は「いぶかしい」と読み、物事が不明で怪しい、または怪しむ、と言う意味です。飛鳥時代から奈良時代の古代では「いふかし」と言う言葉で、知りたくて心が引かれる、気がかりである、と言う意味でした。それが転じて、今現在一般的には、物事を疑い怪しむと言う意味になったようです。「胡乱」を、疑わしく不確かだと疑う意味で用いた場合、「訝しい」は類義語にふさわしいでしょう。

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