この記事では「恍惚」について解説する。

端的に言えば恍惚の意味は「物事に心を奪われてうっとりすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

哲学書を愛するライターtakk1976を呼んです。一緒に「恍惚」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Takk1976

学生時代から読書の虫。特に東洋、西洋の哲学書に親しみ、日々新しい言葉に出会うことが喜び。田舎に住み、米作りに励みながら晴耕雨読の日々を暮らす異色のライターが「恍惚」について解説していく。

「恍惚」の意味や語源・使い方まとめ

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「恍惚」は「こうこつ」と読みます。日常会話ではあまり聞き慣れない言葉かも知れませんが、小説の中では人物の心理を描写する時にしばしば使われる言葉です。意味を知ればより作家が表現したいことが理解できます。この機会にぜひ使い方を覚えましょう。

それでは早速「恍惚」の意味や語源・使い方を見ていきます。

「恍惚」の意味は?

まずは「恍惚」について辞書で意味を調べてみましょう。

1 :  物事に心を奪われてうっとりするさま。

2 :  意識がはっきりしないさま。

3 :  老人の、病的に頭がぼんやりしているさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

以上3つのうち、最もよく用いられるのは1の使い方で、我を忘れるほど何かに夢中になっている精神状態を表す時に使います。そして1の使い方のポイントは「自分の世界にひたっている」状態が意味に含まれていることです。つまり、まわりの誰かと喜びを共有するのではなく、何かの対象にものすごく心が魅かれた結果、自分の世界に入り込んでいる状態を表す時に使われます。

2は単純に疲労などで頭がぼーっとした状態。3は老いによって意識がぼんやりした状態を指します。

「恍惚」は単体で用いられることもありますが、「恍惚の〜」「恍惚とした〜」というように形容詞的に使われたり、そのほかには「恍惚として」など副詞として用いられる事も多いです。

「恍惚」の語源は?

では、「恍惚」の語源について説明します。ここでは漢字の作りから考えてみましょう。「恍」も「惚」もどちらも「心」を意味する「立身弁(りっしんべん)」がつくので、精神状態に関連した言葉だということがわかりますね。「恍」は「ほのか」とも読む字で、意識がはっきりとしていない状態を指し、「惚」は立身弁に「心」が「勿い(ない)」と書くので、こちらも心理的にぼうっとした状態を指します。どちらの漢字も心がぼんやりと定まらない状態を指すことが漢字の作りからも理解できますね。

「恍惚」の使い方・例文

それでは次に例文を挙げながら、「恍惚」が実際にどのように使われるか確認していきましょう。

\次のページで「「恍惚」の類義語は?違いは?」を解説!/

1 桜の木の下で一人の女が恍惚の表情を浮かべている。

2 その男は一日中働き通しで、極度の疲労のために恍惚として座り込んでいた。

3 祖母は過度の認知症のため病院のベッドで恍惚とした日々を過ごしている。

これら3つの例文は先に挙げた3つの代表的な意味にそれぞれ対応しています。いずれの例文も誰かがぼんやり、うっとりした精神状態になっていることを表現するために使われていますが、その原因がそれぞれ異なることに気づいたでしょうか?

例文1は桜の美しさに心を奪われており、例文2は肉体的な疲労によるもの、例文3は認知症が「恍惚」の原因です。また。3つの文中で「恍惚の表情」「恍惚とした日々」は形容詞的に、「恍惚として」は副詞的に異なる方法で使われてますので、その点も参考にしてください。

「恍惚」の類義語は?違いは?

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「恍惚」の類義語には「陶酔」や「有頂天」が挙げられます。

その1「陶酔」

「陶酔」は物事に魅了され酔うほどに心地がよい状態を言います。「酔」という字が入っているので想像しやすいですね。「恍惚」も「うっとりした」心の状態を指す言葉なので「陶酔」はふさわしい類義語とい言えます。それでは「陶酔」を使った例文として以下を見てみましょう。

1 神秘とも言えるほど見事なオーケストラの演奏はすべての聴衆を陶酔させた。

2 その日の夜は高級レストランで超一流のサービスと美酒に陶酔した。

1の例文は「恍惚」とほぼ同じ意味で使われています。ただ、「恍惚」は自分の世界に入り込んでいる様子がより強調されるのに対し、「陶酔」はそれが弱く、純粋に「何かに魅了される」という意味合いが強いです。

「陶酔」は例文2のように実際にお酒を飲んでいい気分で酔っている状態時にも使うことができます。逆にお酒を飲んで「恍惚とする」とは言いません。

\次のページで「その2「有頂天」」を解説!/

その2「有頂天」

次に「有頂天」です。現在では広く使われるこの言葉は元々「有頂天」は仏教の独自の世界観に由来します。仏教ではこの世を欲界、色界、無色界という3つの世界に分けて考えますが、その中でも最上位である無色界の頂点にある世界が「有頂天」と呼ばれるのです。

つまり、「有頂天」は自分が世界の頂点に立っているかのような気持ちになることを指し、一般的には「自分に酔っている状態」を指す場合に使われます。

では「有頂天」を使った例文を見てみましょう。

あの人は過去の栄光にひたり過ぎて、最近少し有頂天になっているように見える。

この例文のような使い方を日常生活で聞いたことはありませんか?こういうケースで「有頂天」は「うぬぼれている」という意味で使われます。それに対し「恍惚」は「うぬぼれる」という意味合いで使われることはあまりないので、その点で「有頂天」とは若干意味合いが違いますが、「自分の世界に酔いしれる」という意味では同じですので、これを機会に類義語として覚えておきましょう。

「恍惚」の対義語は?

さて、次に「恍惚」の対義語を見ていきましょう。

「恍惚」は自分を失うほど何かに心を奪われている状態ですので、「我に返る」「正気に戻る」などが対義語に挙げられます「我に返る」も「正気に戻る」通常の意識状態に戻ることを指す表現なので、「恍惚」と一緒に使われた例文を見ることで、これらがピッタリの対義語であることがわかるでしょう。

それでは「我に返る」「正気に戻る」「恍惚」をすべて使った例文を紹介します。

1 彼はしばらくベッドに横たわって恍惚とした時間を過ごしていたが、彼の携帯電話が鳴ると我に帰った。

2 恍惚感におそわれしばし呆然としていたが、誰かに後ろから肩を叩かれ正気に戻った。

どうでしょうか?これらの対義語を用いた例文を通して、「恍惚」が通常とは反対の精神状態を指す言葉であることがさらに理解できたかと思います。

「恍惚」の英訳は?

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さて、ここで問題です。「恍惚」は英語でなんというでしょうか?

\次のページで「「恍惚」の英語は「ecstasy」」を解説!/

「恍惚」の英語は「ecstasy」

「恍惚」に対応する英語として最も適当なのは「ecstasy」です。日本語でも「エクスタシー」という言葉を聞くこともあると思いますが、これはもともと「宗教儀礼において神秘的な体験を通して達する心境」を指す言葉で、それが現在ではより広い意味で「我を忘れるほど快感にひたる」という意味に解釈されています。

「be in an ecstasy (または be in ecstasies)」と言えば「恍惚としている」を意味し、「go into ecstasy(または go into ecstasies)」と言えば「恍惚とした状態になる」と表現することが可能です。

では「ecstasty」を使った英語の例文を見てみましょう。

1 Everyone went into ecstasies at the concert.
コンサートではすべての人が恍惚となった。

2 He was in an ecstasty during he was holding a hand of his girlfriend"
彼は彼女の手を握っているあいだ恍惚としていた。

このように「恍惚」は英語で「ecsatasy」と言います。ところで、日本語で「エクスタシー」という時に性的な意味合いで使われることがありますが、英語でもそれは同じです。必要に応じて注意しながら使うことをおすすめします。

「恍惚」を使いこなそう

ここでは「恍惚」について様々な観点から説明してきました。このような言葉は日常生活ではあまり使う機会もないので意味を忘れがちですが、小説などではしばしば使われている言葉でもあります。物語の世界をより豊かに表現するこういった言葉を身につけることで、自分の感性もより磨かれていくことでしょう。ぜひ覚えておいてくださいね。

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国語言葉の意味

「恍惚」の意味や使い方は?例文や類語を哲学書好きライターがわかりやすく解説!

この記事では「恍惚」について解説する。

端的に言えば恍惚の意味は「物事に心を奪われてうっとりすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

哲学書を愛するライターtakk1976を呼んです。一緒に「恍惚」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/Takk1976

学生時代から読書の虫。特に東洋、西洋の哲学書に親しみ、日々新しい言葉に出会うことが喜び。田舎に住み、米作りに励みながら晴耕雨読の日々を暮らす異色のライターが「恍惚」について解説していく。

「恍惚」の意味や語源・使い方まとめ

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「恍惚」は「こうこつ」と読みます。日常会話ではあまり聞き慣れない言葉かも知れませんが、小説の中では人物の心理を描写する時にしばしば使われる言葉です。意味を知ればより作家が表現したいことが理解できます。この機会にぜひ使い方を覚えましょう。

それでは早速「恍惚」の意味や語源・使い方を見ていきます。

「恍惚」の意味は?

まずは「恍惚」について辞書で意味を調べてみましょう。

1 :  物事に心を奪われてうっとりするさま。

2 :  意識がはっきりしないさま。

3 :  老人の、病的に頭がぼんやりしているさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

以上3つのうち、最もよく用いられるのは1の使い方で、我を忘れるほど何かに夢中になっている精神状態を表す時に使います。そして1の使い方のポイントは「自分の世界にひたっている」状態が意味に含まれていることです。つまり、まわりの誰かと喜びを共有するのではなく、何かの対象にものすごく心が魅かれた結果、自分の世界に入り込んでいる状態を表す時に使われます。

2は単純に疲労などで頭がぼーっとした状態。3は老いによって意識がぼんやりした状態を指します。

「恍惚」は単体で用いられることもありますが、「恍惚の〜」「恍惚とした〜」というように形容詞的に使われたり、そのほかには「恍惚として」など副詞として用いられる事も多いです。

「恍惚」の語源は?

では、「恍惚」の語源について説明します。ここでは漢字の作りから考えてみましょう。「恍」も「惚」もどちらも「心」を意味する「立身弁(りっしんべん)」がつくので、精神状態に関連した言葉だということがわかりますね。「恍」は「ほのか」とも読む字で、意識がはっきりとしていない状態を指し、「惚」は立身弁に「心」が「勿い(ない)」と書くので、こちらも心理的にぼうっとした状態を指します。どちらの漢字も心がぼんやりと定まらない状態を指すことが漢字の作りからも理解できますね。

「恍惚」の使い方・例文

それでは次に例文を挙げながら、「恍惚」が実際にどのように使われるか確認していきましょう。

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