
端的に言えば小職の意味は「私」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「小職」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル
某国立大で日本語学を専攻。当方(筆者)はしがないライターであることを十分に自覚している。よって、「小生」や「小職」などのへりくだる呼称については任せていただきたいとのこと。
「小職」の意味は?
「小職」を辞書で調べた場合、2つの項目が掲載されていることがあります。まずは、現代においてよく使われている方の「小職」について意味を確認しましょう。
1.地位の低い官職。
2.官職についている人が自分をへりくだっていう語。小官。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「小職(しょうしょく)」
「小職」(しょうしょく)の元の意味は、辞書の1にある「低い地位の官職」です。しかし、現代社会においては、この意味で使うことがほとんどありません。今のビジネスシーンで聞く「小職」は、ほぼ辞書2にある「自分をへりくだって言う呼称」です。「私」や「僕」の代わりに「小職」を使います。
しかし、誰もが「小職」を使ってもいいわけではありません。主に公務員が自らを称するときに「小職」を使います。民間企業の場合は、管理職以上の社員が「小職」を使ってもいいというのが近年の慣習です。よって、一般の社員が自らを「小職」と称することは控えましょう。
ちなみに、辞書によっては「小職」の項目がもう1つ、以下のように掲載されています。
一.[名]《見習いの弟子の意》
1.江戸時代、岡場所や町芸者のもとで見習い・雑用をした女児。 2..子供をいやしめていう語。小わっぱ。「やい、若い者ども。ここな―めを知ったか」〈浄・孕常盤〉
二.[形動ナリ]ちっぽけなさま。僅少なさま。「―なる金銀に目を懸け」〈仮・浮世物語・一〉
出典:デジタル大辞泉(小学館)「小職(こじょく)」
この場合も漢字で「小職」と書きますが、こちらの意味では「こじょく」と読みます。辞書の内容を見れば分かるとおり、掲載されている意味はすべて古語的なものであり、現代では使われることがありません。ビジネスの場で恥をかかないようにするためにも、「小職」は「しょうしょく」と読み、意味は「私」をへりくだって言うものとしっかり覚えましょう。
「小職」の使い方・例文
「小職」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.すぐに小職がそちらに伺います。
2.大変恐縮ではございますが、小職は午後からの出勤となります。
3.先日依頼いたしました記事を今月中に小職宛まで郵送いただきたいのですが、その後の進捗状況はいかがでしょうか。
「小職」は、公職に就いている人や役職付きの人が自らをへりくだって言うために使う呼称であると前述しました。そのため、「小職」を用いた文章には敬語表現が欠かせないものとなります。例文1の「伺う」(うかがう)や例文3の「いたす」などといった具合です。
敬語には、尊敬語・謙譲語・丁寧語の3つがあります。丁寧語の「です・ます」は区別しやすいでしょう。あとは尊敬語と謙譲語ですよね。これらを区別するには、動作の主体が誰であるかを見極めればいいのです。たとえば「お話しになる」や「いらっしゃる」は、尊敬する対象の人がしていることなので尊敬語となります。それらに対して、前掲の「伺う」や「いたす」はどちらも相手を敬う立場の者の行動なので、どちらも謙譲語であると導けるはずです。
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