この記事では「達観」について解説する。

端的に言えば達観の意味は「物事の真理を見通すこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「達観」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「達観」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「達観」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「達観」の意味は?

「達観」には、次のような意味があります。

1.全体の情勢を広く見わたすこと。また、遠い将来の情勢まで見とおすこと。

2細部にとらわれないで、物事の真理を見とおすこと。また、物事にとらわれないで、喜怒哀楽を超越すること。

3.真理を悟った人。悟りを開いた人。特に仏のこと。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「たっ‐かん」

「達観」は「物事を広く見わたすこと」「真理を見通すこと」という意味の言葉です。高い山に登って広い景色を見る、といった「見わたす」とは意味合いが異なります。対象が何にしろ、物事の本質に目を向けるということを表す言葉だと言えるでしょう。

人の様子を説明するときに「達観した人」という使い方をするのを聞いたことがあるでしょうか。それは「落ち着いている・老成している」というニュアンスで使う場合が多いです。一方「斜に構えている・冷たい・自分に酔っている」というマイナスのイメージで使う場合もあります。ただ、「達観」のもともとの意味は「広く見わたす・見通すこと」というものであることをおさえておきましょう。

「達観」の語源は?

次に「達観」の語源を確認しておきましょう。三番目の辞書的意味にあるように、「達観」は仏教の用語として出てくることが多いです。

「達観」の「達」は「すぐれる。物事によく通じる。」という意味を持ちます。「観」は「かんがえる。ものの見かた。考え方。」という意味です。「達観」はそれらを組み合わせて成り立っています。

\次のページで「「達観」の使い方・例文」を解説!/

「達観」の使い方・例文

「達観」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼は同年代の生徒の中でも、達観した考えを持っている。

2.社会の情勢を達観視した上で会社を運営する社長は、社員全員の尊敬を集めている。

3.彼女の、人生を達観したような態度にはついていけない。

4.達観の境地に至った母は、安らかな毎日を送るようになった。

「達観」は単なる「達観する」という形以外にも「達観視する」「人生を達観する」「達観の境地」というような言い回しで使うことができます。

「達観視する」は、「達観した視点を持つ」という意味です。「達観」の意味としては辞書の一つ目の意味が使われます。熟語の構成としては「危険視」や「疑問視」と同様です。

「人生を達観する」は、「人生を悟る」と言い換えることができ、何事にも動じない姿勢を表しています。「達観の境地」は「細部にとらわれないで、物事の真理を見とおすこと。」という「達観」の考えに行きついたことを示していますね。

「達観」の類義語は?違いは?

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ここでは、「達観」の類義語について見ていきましょう。それぞれの類義語と「達観」がどのような点で異なるかについても紹介していきます。

その1「俯瞰」

「俯瞰」の読み方は「ふかん」です。「高い所から広い範囲を見おろしながめること。鳥瞰。」という意味を持ちます。「広く物事を見わたす」という点で「達観」と類似していると言うことができるでしょう。

「達観」と「俯瞰」で異なる点は、「達観」は広く物事を見渡した上で悟りを開くという意味も含まれているのに対し、「俯瞰」にはそれがないという点です。

\次のページで「その2「諦観」」を解説!/

その2「諦観」

「諦観」は「対象をはっきり明確に観ずること。本質を明らかに見極めること。ていかん。」という意味を持ちます。「諦」は「あきらか。つまびらか。」という意味を持つ漢字です。本質を見極める、という点では「達観」と類似していると言うことができるでしょう。

「達観」と「諦観」で異なる点は、「達観」は「広く物事を見わたす」という意味を持つものの「諦観」にはそれがないという点です。また、「達観」は「細部にこだわらない」「喜怒哀楽を超越する」という意味があるのに対し、「諦観」はそれがありません。

「達観」の対義語は?

ここでは、「達観」の対義語について見ていきましょう。

「達観」とは、「全体の情勢を広く見わたすこと。細部にとらわれないで、物事の真理を見とおすこと。」という意味を持ちます。そのため、その反対の言葉は「視野が狭い」また「物事の些細なことにこだわる」という意味を持つ言葉が適切でしょう。

その1「拘泥」

「拘泥」は「こうでい」と読みます。意味は「あることを必要以上に気にしてそれにとらわれること。こだわること。」です。「達観」が「細かいことにはとらわれない」という意味であるのに対する反対語と言うことができるでしょう。

「拘泥」はどちらも「こだわる」という意味を持つ漢字で成り立っています。「拘泥」はどうしてもある物事が気になってしまうというニュアンスを持っていることが分かりますね。

その2「偏狭」

「偏狭」は「自分だけの狭い考えにとらわれること。度量の小さいこと。また、そのさま。狭量。」という意味です。「達観」が「細部にこだわらない」という意味を持つのに比べて対義的であると言えるでしょう。

「達観」の英訳は?

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ここでは、「達観」の英訳について見ていきましょう。

その1「philosophy」

「philosophy」は「哲学」を第一義に持つ言葉です。「経験などで得た人生哲学」「悟り」そしてもちろん「達観」という意味をも持っています。

「達観」の英訳として用いるには最適な単語であると言えるでしょう。

\次のページで「その2「perspective」」を解説!/

その2「perspective」

「perspective」は「見方、考え方」という意味から「透視図法」「釣り合いのとれた見方」「眺望」という意味を持ちます。「透視図法」とは、 ある一点を視点とし、物体を人間の目に映るのと同様に遠くを小さく描き、近くを大きく描く画法です。「遠くを見わたす」という意味につながりますね。

その3「take a long view」

「take a long view」は「長い目で見る」「深謀遠慮をめぐらす」という意味です。「達観」のように「悟る」という意味合いが含まれているかはなんとも言えないのですが、「遠くを見わたす」という意味はカバーできていると言えるでしょう。

「達観」を使いこなそう

この記事では「達観」の意味・使い方・類語などを説明しました。「達観」は細かいところや感情を省いて、物事を見わたすという意味です。この言葉を人物評価に使う時は、その人が一目置かれていることが多いですね。こういった語彙も積極的に身につけていきたいものです。

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国語言葉の意味

「達観」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説!

その2「諦観」

「諦観」は「対象をはっきり明確に観ずること。本質を明らかに見極めること。ていかん。」という意味を持ちます。「諦」は「あきらか。つまびらか。」という意味を持つ漢字です。本質を見極める、という点では「達観」と類似していると言うことができるでしょう。

「達観」と「諦観」で異なる点は、「達観」は「広く物事を見わたす」という意味を持つものの「諦観」にはそれがないという点です。また、「達観」は「細部にこだわらない」「喜怒哀楽を超越する」という意味があるのに対し、「諦観」はそれがありません。

「達観」の対義語は?

ここでは、「達観」の対義語について見ていきましょう。

「達観」とは、「全体の情勢を広く見わたすこと。細部にとらわれないで、物事の真理を見とおすこと。」という意味を持ちます。そのため、その反対の言葉は「視野が狭い」また「物事の些細なことにこだわる」という意味を持つ言葉が適切でしょう。

その1「拘泥」

「拘泥」は「こうでい」と読みます。意味は「あることを必要以上に気にしてそれにとらわれること。こだわること。」です。「達観」が「細かいことにはとらわれない」という意味であるのに対する反対語と言うことができるでしょう。

「拘泥」はどちらも「こだわる」という意味を持つ漢字で成り立っています。「拘泥」はどうしてもある物事が気になってしまうというニュアンスを持っていることが分かりますね。

その2「偏狭」

「偏狭」は「自分だけの狭い考えにとらわれること。度量の小さいこと。また、そのさま。狭量。」という意味です。「達観」が「細部にこだわらない」という意味を持つのに比べて対義的であると言えるでしょう。

「達観」の英訳は?

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ここでは、「達観」の英訳について見ていきましょう。

その1「philosophy」

「philosophy」は「哲学」を第一義に持つ言葉です。「経験などで得た人生哲学」「悟り」そしてもちろん「達観」という意味をも持っています。

「達観」の英訳として用いるには最適な単語であると言えるでしょう。

\次のページで「その2「perspective」」を解説!/

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