
5分で分かる「双極子-双極子相互作用」分子に働く弱い電気の引力の正体は?京大卒の研究員がわかりやすく解説!
今日学ぶ「双極子-双極子相互作用」は酸素や塩素などの原子が含まれる分子で働く引力です。この相互作用のおかげで酸素や塩素を含む分子は沸点が高くなる。化学に詳しいライター珈琲マニアと一緒に学んでいこう。
ライター/珈琲マニア
京都大学で化学を学び、現在はメーカー研究職として勤務。学生時代に物理化学、量子化学を専門として学んでおり、分子に関する知識が豊富なライター。
1.分子の双極子

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本日学習するのは双極子-双極子相互作用です。この相互作用は非常に弱い力で、水素結合などに比べてあまり注目される力ではありません。高校の化学でも「水素結合」や「ファンデルワールス力」などは勉強しますが、双極子-双極子相互作用は学習しなかったのではないでしょうか。しかし実は双極子-双極子相互作用はファンデルワールス力の由来となる重要な相互作用の一つです。
双極子-双極子相互作用を学ぶためにこの章ではまず「双極子」について学んでいきましょう。そして次にどのような分子が双極子を生成するか見ていきましょう。
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1-1.双極子

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双極子(ダイポール)とは二つの極、すなわちプラスの電荷とマイナスの電荷を両方持ったもののことです。以下に示す模式図に沿って説明しますね。ある場所にプラスの電荷(正電荷)qが存在し、距離dだけ離れた場所にマイナスの電荷(負電荷)-qが存在するとします。
ここである点Pに電荷を置いたときに正電荷、負電荷から受ける力を考えてみましょう。点Pは負電荷よりも正電荷のほうが近いため、正電荷の力をより強く受けます。つまり電荷の大きさが等しい正電荷、負電荷が短い距離を隔てて存在するとき、周りに電気的な力を及ぼすのです。そこでこの正電荷/負電荷のセットを「双極子」と呼んでいます。ちなみに双極子の大小は「双極子モーメント」で表され、その大きさは電荷の間の距離dと電荷の大きさqの積です。
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