この記事では「満を持して」を勉強していきます。

「満を持して(まんをじして)」の言葉の意味は、ずばり「しっかり準備して機会を待つこと」です。プレゼンや勝負事などに挑戦するときは誰でも失敗を恐れ緊張してしまうものですが、準備が十分であればだいぶ心持ちが変わってくるよな。

正しく自信を持って使えるように、「満を持して」の意味や語源、使い方について、現役日本語教師のスヨメナと一緒に解説していきます。

ライター/スヨメナ

現役日本語教師。対面、オンライン問わず、世界中の国の人に日本語を教えている。ブログでも相手の立場に立って考え、わかりやすく発信していく。

「満を持して」の意味は?

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ここでは「満を持して」の言葉の正しい意味をしっかり押さえましょう。

「満を持して」の意味は「しっかり準備して機会を待つこと」

まずは辞書で意味を確認してみましょう。

弓を十分に引いて構える。転じて、準備を十分にして機会を待つ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「満を持する」

「満を持する」とは、”十分な準備をして機会を待つこと”です。引用にあるとおり、もともと「満を持する」は、弓を十分に引いて矢を射る機会を待つことを言いました。それが転じて、万全な準備をして待つという意味合いになったものです。

主に「満を持して◯◯する」のように、動詞を修飾する形で使われ、”準備万端な状態で◯◯する”という表現ができます。

「持満」とは?弓を引いて待機していた弓兵たち

次に「満を持して」の語源を確認しておきましょう。「満を持して」の語源は中国の歴史書『史記』周勃世家に載っている話の中にあります。

敵の襲撃に備えている将軍のところへ、皇帝が激励に訪れたときのことです。配下の兵士たちは、いつでも戦えるよう鎧を着て、弓兵は弓をいっぱいに引き絞った状態で待機していました。この弓を引き絞っているのを「持満」と言う言葉で表していたのです。

「満」は、満たす、いっぱいになること。「持」には、状態を保つという意味があります。したがって「持満」は、”弓をいっぱいに引き絞って待ち受ける”という意味の単語になるのです。このエピソードに由来し「満を持する」は、”十分に準備して機会が訪れるのを待ち受ける”ことを表すようになったと考えられています。

\次のページで「「満を持して」の使い方は?」を解説!/

「満を持して」の使い方は?

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「満を持して」の意味がわかったところで、使い方を解説します。

例文で「満を持して」の使い方をチェック!

いくつか「満を持して」を使った例文に触れていきましょう。

1.前回のリリースから5年、ついにあのアーティストの新しいアルバムが満を持して発表された。
2.今年は勉強する時間が十分取れたので、満を持して試験に臨むことができた。
3.講師デビューの日、彼は満を持して登壇した。

1は、あるアーティストが5年かけて待ちに待った新しいアルバムをリリースしたという意味です。準備期間がファンの期待を押し上げていますね。2は、勉強時間が十分にあったので準備万端で試験に臨めたということです。「満を持して」から余裕がうかがえます。3は、登壇日に向けて周到に用意をしてデビュー日を迎えたという意味ですね。

どの例文もしっかり時間をかけて準備ができています。あとはタイミングが合ったところで「満を持して」行動するだけなのです。

「満を持して」と似たような意味を持つ言葉は?

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「満を持して」に関連する似たような言葉があるので、一緒に覚えていきましょう。

\次のページで「「機が熟す」:絶好の機会がくること」を解説!/

「機が熟す」:絶好の機会がくること

「機が熟す(きがじゅくす)」の意味は、”物事を行うのに、絶好の機会がくること”。「機」は「機会」の機、「熟す」は、果物で「食べごろ」という意味でよく使われていますね。

例えば、「彼をリーダーに起用するのはまだ早い。もう少し機が熟すのを待とう」であれば、彼をリーダーにするのには、もう少しタイミングを見ようということです。

「準備万端」:準備が完璧である様子

「準備万端(じゅんびばんたん)」は、”準備が完璧である様子”を表す四字熟語。「万端」は「あらゆるもの、すべて」という意味です。例えば「明日の旅行に向けて、準備万端整いました」は、旅行の準備が完全に終わったという意味になります。動詞「整う」と相性が良いです。

「爪を研ぐ」:用意して待ち構えること

「爪を研ぐ(つめをとぐ)」は、”爪をするどく研ぐ”ということから”用意して待ち構えること”の意味です。前の2つの類義語と違うのは、向かう相手を倒すための準備だということ。それ以外では使えません。

例えば「明日は昨年負けた相手との決勝戦。この日のために1年間かけて爪を研いできた」は、ライバルチームとの雪辱を晴らすために1年間みっちり準備してきたことを言います。その他「今は売上ナンバーワンを目指すために爪を研いでいる」のような使い方もできるでしょう。

「満を持して」と反対の意味を持つ言葉は?

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「満を持して」と反対の意味を持つ言葉は何があるのでしょうか。いくつか見ていきましょう。

「時期尚早」:物事をするタイミングがまだ早いこと

「時期尚早(じきしょうそう)」は、”何かをすることが時間的にまだ早すぎること”。例えば、「まだ1年の経験しかないのに、独立しようとするとは時期尚早な考えである」は、十分な経験や知識がないのに独立することは早すぎるの意味になります。

よく政治家が政策を検討した結果に対して「まだ時期尚早です」といって先延ばしすることがあるでしょう。タイミングが今じゃないときに使ってください。

「早計」:早まった判断をすること

「早計(そうけい)」の意味は、”誤った考え、早まった判断をすること”。例えば「勢い余って快い返事をしたが、早計だったと後から後悔する」は、勢いで「はい、できます」などと返事をしたが、後になって考えたら誤った判断だったと後悔するの意味になります。

ほかにも「ウイルスは収束されたと思われたが、早計だった」という例文であれば、ウイルスはまだ収まっておらず早まった判断をしてしまったという意味を表すでしょう。

\次のページで「「拙速」:質は劣るが、早く仕上げること」を解説!/

「拙速」:質は劣るが、早く仕上げること

「拙速(せっそく)」は、”質は劣るが、早く仕上げること”の意味。スピード重視ということです。例えば「提出されたレポートは、かなり拙速なものだった」は、仕上がったレポートは、期日は守って早かったが内容はいまひとつのものだったという意味になりますね。

「満を持して」の意味を理解して正しく使ってみよう!

この記事では「満を持して」の意味や使い方・語源・類語・対義語などを説明しました。「満を持して」は、弓をめいっぱいまで引いて待つという「持満」が語源で、”しっかり準備して機会を待つこと”という意味の言葉でした。

何事も事前準備が大事です。準備が足りないと「時期尚早」「早計」となり、失敗することになるでしょう。”満を持して”臨んだときこそ、本来の力を発揮していけるのです。言葉を使用するときも勉強を積んで、満を持して使っていってください。

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国語言葉の意味

準備OK?「満を持して」の正しい意味や語源・使い方・類語など現役日本語教師がわかりやすく解説

この記事では「満を持して」を勉強していきます。

「満を持して(まんをじして)」の言葉の意味は、ずばり「しっかり準備して機会を待つこと」です。プレゼンや勝負事などに挑戦するときは誰でも失敗を恐れ緊張してしまうものですが、準備が十分であればだいぶ心持ちが変わってくるよな。

正しく自信を持って使えるように、「満を持して」の意味や語源、使い方について、現役日本語教師のスヨメナと一緒に解説していきます。

ライター/スヨメナ

現役日本語教師。対面、オンライン問わず、世界中の国の人に日本語を教えている。ブログでも相手の立場に立って考え、わかりやすく発信していく。

「満を持して」の意味は?

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ここでは「満を持して」の言葉の正しい意味をしっかり押さえましょう。

「満を持して」の意味は「しっかり準備して機会を待つこと」

まずは辞書で意味を確認してみましょう。

弓を十分に引いて構える。転じて、準備を十分にして機会を待つ。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「満を持する」

「満を持する」とは、”十分な準備をして機会を待つこと”です。引用にあるとおり、もともと「満を持する」は、弓を十分に引いて矢を射る機会を待つことを言いました。それが転じて、万全な準備をして待つという意味合いになったものです。

主に「満を持して◯◯する」のように、動詞を修飾する形で使われ、”準備万端な状態で◯◯する”という表現ができます。

「持満」とは?弓を引いて待機していた弓兵たち

次に「満を持して」の語源を確認しておきましょう。「満を持して」の語源は中国の歴史書『史記』周勃世家に載っている話の中にあります。

敵の襲撃に備えている将軍のところへ、皇帝が激励に訪れたときのことです。配下の兵士たちは、いつでも戦えるよう鎧を着て、弓兵は弓をいっぱいに引き絞った状態で待機していました。この弓を引き絞っているのを「持満」と言う言葉で表していたのです。

「満」は、満たす、いっぱいになること。「持」には、状態を保つという意味があります。したがって「持満」は、”弓をいっぱいに引き絞って待ち受ける”という意味の単語になるのです。このエピソードに由来し「満を持する」は、”十分に準備して機会が訪れるのを待ち受ける”ことを表すようになったと考えられています。

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