
5分で分かる「二原子分子」量子化学を使って分子が作られる理由を考えよう!京大卒の研究者がわかりやすく解説!
今日は最も単純な分子である「二原子分子」が作られる理由について量子化学の原理から一緒に学んでいこう。化学に詳しいライター珈琲マニアと一緒に解説していきます。
ライター/珈琲マニア
京都大学で化学を学び、現在はメーカーの研究職として勤務。学生時代の専門である物理化学、量子化学に関する知識が豊富なライター。
1.原子における電子の運動

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化学という学問は「原子や分子同士を反応させて新しいものを合成する学問」であり、「原子や分子の構造や性質を調べる学問」でもあります。では、そもそもなぜ原子は結合を形成して分子になるのでしょうか。この根本的な問題は量子化学が登場する20世紀初頭まで解消されていませんでした。
今回学習する「二原子分子」とは最もシンプルな分子であり、二原子分子の結合形成の仕組みを理解することは量子化学の入門となります。まずは分子の形成を学ぶ前に、結合形成に重要な役割を担う電子について学んでいきましょう。
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1-1.電子の波動関数と電子軌道

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原子の中で陽子と中性子から構成される原子核の周りを電子は飛び回る、そのような原子モデルを高校で勉強された方々もいるのではないでしょうか。このモデルは直感的にはわかりやすいですが、電子の動きを正確に表しているわけではありません。このモデルでは「太陽の周りを回る地球」のように電子を球と見立てて考えています。しかし、実際の電子はこのような「球(粒子)としての性質」だけではなく、「波の性質」もあることが分かりました。
量子化学ではこのような電子の動きを「波動関数」と呼ばれる関数で表現します。波の性質を持つ電子の運動を表すので「波動」という言葉が入っているわけですね。そしてオーストリアの科学者であるシュレーディンガーは電子の運動を記述するために「シュレーディンガー方程式」を提案しました。この方程式を満たす波動関数を基にして描かれる電子の空間的な分布を「電子軌道」と呼び、量子化学では電子の動きを表すときに電子軌道や波動関数を用いています。
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