この記事では「稀有」について解説する。

端的に言えば稀有の意味は「とても珍しい」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「稀有」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に、「言葉」について分かりやすく解説していく。

「稀有」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「稀有」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「稀有」の意味は?

「稀有」には、次のような意味があります。

1.めったにないこと。とても珍しいこと。また、そのさま。まれ。「―な(の)出来事」
2.不思議なこと。また、そのさま。
3.とんでもないこと。けしからぬこと。
4.(「希有の命」の形で)危うく死を免れること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「け‐う【▽希有/×稀有】」

稀有」は「とても珍しいこと」「不思議なこと」という2つの意味を持った言葉です。どちらの意味にも悪いマイナスのニュアンスはありません

「稀有」は「希有」とも書くことができ、読み方は「けう」が一般的です。ただ、昔は「きゆう」と読む場合もあったそうで、現在でも「希有金属(きゆうきんぞく)」など、一部で「きゆう」の読み方が使われることがあります。ただ、普段「稀有/希有」を使う時は、「けう」と読んだ方が良いでしょう。なお、「う」とは読まないので注意してください。

ちなみに、3番目と4番目の意味は現代語ではほとんど使用されません。また、「きゆう」と読む単語に「杞憂」がありますが、意味は全く違うので気をつけましょう。

「稀有」の語源は?

次に「稀有」の語源を確認しておきましょう。「稀有」の語源は定かではありませんが、大陸から渡って来た仏典を通じて受け入れられた語だとする説があります。

「とても珍しいこと」の意味では、飛鳥時代(611年)の聖徳太子が書いたとされる『勝鬘経義疏』に「但聞是希故云希有」という記述が、「不思議なこと」という意味では、平安時代(810-824年)の説話集『霊異記』に「是に希有の想を発して禅師に白して言はく」という記述が確認される、とても古い言葉です。

「稀有」の使い方・例文

「稀有」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「稀有」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.山田さんは学生時代に野球とサッカーで日本代表に選ばれたという稀有な経験を持つ。
2.私はタイを旅行したとき、軍に体験入隊するという稀有な経験をした。
3.今日は空は晴れているのに大雨が降っているという、稀有な天気だ。
4.彼女には他人が心の中で考えていることが分かるという稀有な能力がある。

「稀有」は形容動詞で、通常「稀有な」という形で使用されます。

例文1と例文2は、「とても珍しいこと」という意味です。「学生時代に野球とサッカーで日本代表に選ばれたこと」も「タイを旅行中に軍に体験入隊したこと」も、どちらも「とても珍しいこと」ですよね。

例文3と例文4では、「不思議なこと」という意味で「稀有」が使用されています。「晴れているのに大雨が降っていること」も「他人が心の中で考えていることが分かること」もどちらも「不思議なこと」ですよね。ただ、今回の例文にも当てはまりますが、「不思議なこと」という意味の場合も、「とても珍しいこと」というニュアンスが同時に含まれています。

「稀有」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「稀有」の類義語には、「稀代(希代)」「稀少(希少)」「類まれ」があります。それぞれ意味や違いを見ていきましょう。

その1「稀代」

稀代」は「きたい」または「きだい」と読み、「希代」とも書きます。「世にもまれなこと」「めったに見られないこと」という意味を持った言葉です。「稀代」と「稀有」の違いは2つあります。

1つは、「稀代」は「稀代名馬」「稀代出来事」のように、「稀代の」という形で使うことが多いです。もう1つは、「稀代」はマイナスのニュアンスでも使うことができます。たとえば、「稀代の殺人犯」や「稀代の悲惨な事件」といった使われ方も可能です。

その2「稀少」

稀少」は「きしょう」と読み、「希少」とも書きます。「少なくて珍しいこと」「極めてまれなこと」という意味を持った言葉です。

「稀有」との違いは、「稀少」は「数が少ない」というニュアンスが入ってくることですね。それ以外はほぼ意味の違いはありません。

たとえば、「この宝石は世界で数がとても少ない___ものだ」といった表現の場合は、「稀有な」ではなく「稀少な」を使う方が一般的です。

その3「類まれ」

類まれ」は「たぐいまれ」と読みます。「非常に珍しいこと」「めったにないこと」という意味の言葉です。

「稀有」との意味的な違いはほとんどありませんが、「類まれな才能」「類まれな美貌」などのように、人について褒めたり肯定的に評価したりするときは、「類まれ」を使うことが多いですね。また、「類まれ」には「不思議なこと」というニュアンスがないので、純粋に人について褒めたい時は、場合によっては「稀有」より「類まれ」の方がより適切なことがあります。

\次のページで「「稀有」の対義語は?」を解説!/

「稀有」の対義語は?

「稀有」の対義語は、「普通」「平凡」「ありきたり」です。意味や使い方を見ていきましょう。

その1「普通」

普通」は名詞・形容動詞の場合、「特に変わっていないこと」「ごくありふれたものであること」「それがあたりまえであること、そのさま」という意味があります。「とても珍しいこと」という意味の「稀有」とはまさに反対の意味の言葉ですね。

「山田君は公立の高校に通う普通の学生である」のように使用されます。

その2「平凡」

平凡」は「これといったすぐれた特色もなく、ごくあたりまえなこと。また、そのさま」という意味を持った言葉です。こちらも「とても珍しいこと」という意味の「稀有」とは反対の意味ですね。

「彼は平凡なサラリーマンである」のように使われます。

その3「ありきたり」

ありきたり」は「珍しくないこと」「ありふれていること、そのさま」という意味を持った言葉です。漢字で表記する場合は「在り来たり」か「在り来り」となります。「とても珍しいこと」という意味の「稀有」とはまさに反対の言葉ですね。

「田中という名字はありきたりの名字である」といったように使用されます。

「稀有」の英訳は?

image by iStockphoto

「稀有」の英訳には、「rare」「unusual」があります。意味や使い方を見ていきましょう。

その1「rare」

rare」は「稀な」「めったにない」という意味の英単語で、「稀有」の1つ目の意味の「とても珍しいこと」に当てはまります。日本語でもカタカナで「レア」という言葉を使いますよね。その元の単語が「rare」です。

例文を見てみましょう。

「We were lucky to see a rare golden car.」 私たちは稀有な金色の車を見ることができてラッキーだった。

\次のページで「その2「unusual」」を解説!/

その2「unusual」

unusual」は「普通ではない」「な」「異常な」という意味の言葉です。「稀有」の1つ目の意味の「とても珍しいこと」に当てはまります。ただ、「unusual」は「普通」を意味する「usual」に否定の接頭辞「un」が付いたものです。よって「普通ではない」という意味・ニュアンスもついてきます

例文を見てみましょう。

「It’s unusual to have a snow in Okinawa.」 沖縄で雪が降るのは稀有なことだ。

「稀有」を使いこなそう

この記事では「稀有」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「稀有」は「とても珍しいこと」「不思議なこと」という2つの意味を持った言葉で、「稀有才能」「稀有経験」のように「稀有な」の形で使うことが一般的です。また、悪いマイナスのニュアンスはありません

対義語には「普通」「平凡」「ありきたり」がありましたね。

みなさんは、これからどのような「稀有な」経験をしてみたいですか?

" /> 「稀有」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「稀有」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「稀有」について解説する。

端的に言えば稀有の意味は「とても珍しい」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「稀有」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に、「言葉」について分かりやすく解説していく。

「稀有」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「稀有」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「稀有」の意味は?

「稀有」には、次のような意味があります。

1.めったにないこと。とても珍しいこと。また、そのさま。まれ。「―な(の)出来事」
2.不思議なこと。また、そのさま。
3.とんでもないこと。けしからぬこと。
4.(「希有の命」の形で)危うく死を免れること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「け‐う【▽希有/×稀有】」

稀有」は「とても珍しいこと」「不思議なこと」という2つの意味を持った言葉です。どちらの意味にも悪いマイナスのニュアンスはありません

「稀有」は「希有」とも書くことができ、読み方は「けう」が一般的です。ただ、昔は「きゆう」と読む場合もあったそうで、現在でも「希有金属(きゆうきんぞく)」など、一部で「きゆう」の読み方が使われることがあります。ただ、普段「稀有/希有」を使う時は、「けう」と読んだ方が良いでしょう。なお、「う」とは読まないので注意してください。

ちなみに、3番目と4番目の意味は現代語ではほとんど使用されません。また、「きゆう」と読む単語に「杞憂」がありますが、意味は全く違うので気をつけましょう。

「稀有」の語源は?

次に「稀有」の語源を確認しておきましょう。「稀有」の語源は定かではありませんが、大陸から渡って来た仏典を通じて受け入れられた語だとする説があります。

「とても珍しいこと」の意味では、飛鳥時代(611年)の聖徳太子が書いたとされる『勝鬘経義疏』に「但聞是希故云希有」という記述が、「不思議なこと」という意味では、平安時代(810-824年)の説話集『霊異記』に「是に希有の想を発して禅師に白して言はく」という記述が確認される、とても古い言葉です。

「稀有」の使い方・例文

「稀有」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「稀有」の類義語は?違いは?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: