この記事では「殊勝」について解説する。

端的に言えば殊勝の意味は「優れている」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「殊勝」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や用語を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「殊勝」の意味や語源・使い方まとめ

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「殊勝」は「しゅしょう」と読みます。年配の方が「殊勝な心掛けだ」などと口にしているのを見たことがある人もいるかもしれません。話し言葉でも文章でも登場する一般的な表現ですが、正しい意味は押さえられているでしょうか。相手を褒める意味合いも持つので、使いこなせるとコミュニケーション力がアップしますよ。

それでは早速「殊勝」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「殊勝」の意味は?

「殊勝」には、次のような意味があります。

1.とりわけすぐれているさま。格別。
2.心がけや行動などが感心なさま。けなげであるさま。
3.神々しいさま。心打たれるさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「殊勝」

3つの意味を並べましたが、共通するのは「人の様子や態度が良い、好ましいものである」という点ですね。最も見かける用法は2の意味の場合です。相手の行動や心掛けがとても良いなあと感じ入ったときに、「殊勝な態度だ」と言ったりします。相手を褒める良い意味を持つ言葉ですが、一般的には「目上の人から目下の人に」対して使われることに注意しましょう。

1の「非常に優れている」という意味の「殊勝」は、仏教由来の古文的用法です。現代において、この意味で用いられることはあまりありません。

「殊勝」の語源は?

次に「殊勝」の語源を確認しておきましょう。漢字1文字ずつ見ていくと、よくわかります。

まず「殊」は「特に、殊更(ことさら)」という意味ですね。ただし元々は「殺す、真っ二つに斬り殺す」という意味を持っていました。転じて「普通とは異なる、違うものになる」というニュアンスで使われるようになり、現代の「特別な」という解釈に至ります。一方、「勝」は「勝つ、勝る、優れている」という意味です。

「普通とは異なる」「優れている」という意味の2つの漢字が重なってできたのが「殊勝」であり、相手の行動や心掛けをとても良いものだと褒める意味になりました。

「殊勝」の使い方・例文

「殊勝」は例文を見ながら意味を考えていくと分かりやすいですよ。たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「殊勝」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.休日に墓参りに行くとは、君もなかなか殊勝な心掛けをしている。
2.入院中の親に心配をかけまいとする殊勝な子どもの姿に心を打たれた。
3.今日はやけに殊勝だね。なにかあったのかい?

例文1は、休日にお墓参りをしたということを「とても感心できる」と褒めている場面です。休み明けに、部下の休日の様子を聞いた上司が言ったのかもしれませんね。「殊勝」は元々仏教用語だったこともあって、神仏を崇める行為に対してよく使われます。

例文2は子どもの健気な振る舞いに対して使われる「殊勝」です。子どもが年齢に合わない立派な行動をしたときにも使います。

例文3は日頃は賑やかな人が神妙で静かにしているさまに対して使う「殊勝」です。落ち着いた振る舞いは良いものとされますよね。よって「(いつもとはうってかわって)静かなさま」を「殊勝である=好ましい」と表現するようになりました。

「殊勝」の類義語は?違いは?

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「殊勝」と似た意味を持つ言葉には、どのようなものがあるでしょうか?一つずつ見ていきましょう。

その1「神妙」

「神妙(しんみょう)」は、ほぼ「殊勝」と置き換えが可能な言葉です。心掛けや行いが感心する、いつもとは変わっておとなしくかしこまっているなどの様子を表します。

その2「感心」

「感心」は「殊勝」や「神妙」より、もっと口語的で気軽に使えますね。行為が立派であることや、すぐれた技量に心を動かされる様子を表します。「散歩のついでにゴミを拾うとは、感心な心掛けだ」と言ったりしますね。

その3「健気」

「健気(けなげ)」は「殊勝」の「困難なことに勇敢に立ち向かう、年齢に合わない立派な行いをする」という意味と置き換えができる言葉です。力の弱いもの、幼いものに対して「小さい(若い)のに頑張っているね」と褒めてあげたい気持ちが込められています。

\次のページで「その4「天晴れ」」を解説!/

その4「天晴れ」

「天晴れ(あっぱれ)」はとてもポジティブな表現ですね。「賞賛すべきさま、素晴らしく見事な様子」を表す言葉です。敵の見事な戦術に感じいったときにも、「的ながら天晴れ」と言うことができます。

その5「奇特」

「奇特」は「珍しい、不思議だ」という意味で使うことが多いのですが、実は「言行や心がけなどがすぐれていて、褒めるに値するさま」という意味を持っています。「殊勝」と異なるのは、「奇特」には「おとなしくかしこまっている」というニュアンスが含まれない点です。

「殊勝」の対義語は?

行為や心掛けを褒めたり、あるいは普段と違った神妙な様子を表すのが「殊勝」ですが、実は対義語はありません。「殊勝」の反対の概念を考えてみると「けなす」「いつも通り」でしかないからです。これらの概念を表現したいときは、都度適切な言葉を見つけるようにしましょう。

「殊勝」の英訳は?

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仏教由来の言葉である「殊勝」は、英語にできるのでしょうか?「殊勝」の英訳を見てみましょう。

その1「admirable」

「admirable」は「称賛に値する、あっぱれな、立派な」という意味を持つ形容詞です。行いや心掛けが立派だと感心して使う「殊勝」に最も近い英単語と言えます。

You are an admirable man.
「あなたは立派な男だ」

その2「commendable」

「commendable」も「ほめるに足る、立派な、感心な」という意味です。「commend」が「褒める、称賛する」という意味の動詞であり、「~できる」という意味を加える接尾辞「-abel」がついて「褒めることができる=称賛に値する」という意味を形成しています。

\次のページで「その3「laudable」」を解説!/

He was rewarded for his action as being commendable.
「彼は見事な行動により栄誉をたたえられた」

その3「laudable」

「laudable」は「称賛するに足る、見上げた、あっぱれな」という意味です。

His conduct is laudable.
「彼の指示は非常に立派だった」

「殊勝」を使いこなそう

この記事では「殊勝」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「殊勝」は態度や行いが立派であると感心したり、また健気さに心動かされたときにも使える表現です。こうした場面に遭遇することは日常でもよくあるものですが、ピッタリの表現を持っていなかったという人もいるのではないでしょうか。今回、「殊勝」の意味と使い方を理解しましたから、これからはぜひ使ってみてください。表現の幅が広がりますよ。

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国語言葉の意味

「殊勝」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

1.休日に墓参りに行くとは、君もなかなか殊勝な心掛けをしている。
2.入院中の親に心配をかけまいとする殊勝な子どもの姿に心を打たれた。
3.今日はやけに殊勝だね。なにかあったのかい?

例文1は、休日にお墓参りをしたということを「とても感心できる」と褒めている場面です。休み明けに、部下の休日の様子を聞いた上司が言ったのかもしれませんね。「殊勝」は元々仏教用語だったこともあって、神仏を崇める行為に対してよく使われます。

例文2は子どもの健気な振る舞いに対して使われる「殊勝」です。子どもが年齢に合わない立派な行動をしたときにも使います。

例文3は日頃は賑やかな人が神妙で静かにしているさまに対して使う「殊勝」です。落ち着いた振る舞いは良いものとされますよね。よって「(いつもとはうってかわって)静かなさま」を「殊勝である=好ましい」と表現するようになりました。

「殊勝」の類義語は?違いは?

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「殊勝」と似た意味を持つ言葉には、どのようなものがあるでしょうか?一つずつ見ていきましょう。

その1「神妙」

「神妙(しんみょう)」は、ほぼ「殊勝」と置き換えが可能な言葉です。心掛けや行いが感心する、いつもとは変わっておとなしくかしこまっているなどの様子を表します。

その2「感心」

「感心」は「殊勝」や「神妙」より、もっと口語的で気軽に使えますね。行為が立派であることや、すぐれた技量に心を動かされる様子を表します。「散歩のついでにゴミを拾うとは、感心な心掛けだ」と言ったりしますね。

その3「健気」

「健気(けなげ)」は「殊勝」の「困難なことに勇敢に立ち向かう、年齢に合わない立派な行いをする」という意味と置き換えができる言葉です。力の弱いもの、幼いものに対して「小さい(若い)のに頑張っているね」と褒めてあげたい気持ちが込められています。

\次のページで「その4「天晴れ」」を解説!/

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