この記事では「私用」について解説する。

端的に言えば私用の意味は「個人的な用事」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「私用」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に、「言葉」について分かりやすく解説していく。

「私用」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「私用」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「私用」の意味は?

「私用」には、次のような意味があります。

1.私事に用いること。「社用封筒を―する」「―電話」⇔公用。
2.自分個人の用事。私事。「―で早退する」⇔公用。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「し‐よう【私用】」

私用」は「しよう」と読み、「自分個人の用事に用いること」「自分個人の用事」という2つの意味を持った言葉です。

日本語では、国や公共団体、職場や仕事に関わることについては「公」、それ以外の家族や友人、恋人、趣味などに関わることは「私」という字を使って分ける傾向があります。今回ご紹介する「私用」は後者に該当する言葉です。

「私用」の語源は?

「私用」の正確な語源については分かりませんが、「私用」は古くから使われてきた言葉であるということは明らかです。

「自分個人の用事に用いること」という意味では、鎌倉時代(1257年)の『私聚百因縁集』という仏教説話集に「常燈仏餉(ぶっしゃう)用ひて私用(シヨウ)とし」という記述が確認されています。

「自分個人の用事」という意味では、「毎朝若依病気、奉行人之内不能出頭者、可捧起請文。又難去私用之時者、可言上子細事」と、戦国時代(1481年)の『大内氏掟書』に記述が確認されていますね。

\次のページで「「私用」の使い方・例文」を解説!/

「私用」の使い方・例文

「私用」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.私用のスマートフォンに仕事の連絡はしないでほしい。
2.会社から支給された業務用タブレットを私用していたら怒られてしまった。
3.今日、私用のため早退させていただきたいのですが…。
4.私用のため、来週の火曜日に有給をいただきたいのですが…

例文1,2は「自分個人の用事に用いること」、例文3,4は「自分個人の用事」という意味で「私用」が使われています。

例文1は「プライベート用のスマートフォンに仕事の連絡はしないでほしい」という意味です。プライベート用と仕事用でスマートフォンを2台持っている人がいますよね。プライベート用が「私用」です

例文2は、「業務用のタブレットをプライベートで使っていたら怒られた」という意味です。業務用のものをプライベートで使うのはいけませんよね。

例文3,4では、「私用」という言葉を使うことで具体的な用事の内容を言わないことが可能になっています。たとえば、「子どもの入学式」「妻が出産」などの理由であれば言っても問題はないですが、「プロ野球観戦」「大好きなアイドルの公演」といった理由は言いづらいですよね。そのような場合に「私用」を使えば、用事の内容を隠すことができます。(もちろん、都合の悪い用事を隠す場合以外でも「私用」は使われます。)

「私用」の類義語は?違いは?

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「私用」の類義語には「所用」「野暮用」「私事」があります。意味の範囲やニュアンスが少しずつ違うので、一緒に見ていきましょう。

その1「所用」

所用」は「しょよう」と読み「用事」という意味を持つ言葉です。「所用のため早退します」のように使用されるため、「私用」との意味の区別がややこしいことがあります。

「所用」と「私用」の違いは、「所用」の場合、仕事の用事も個人的な用事もどちらも含まれますが、「私用」の場合は個人的な用事しか意味に含まれない点です。

つまり、「所用」の中の用事の一つに「私用」がある…と考えればいいでしょう。

\次のページで「その2「野暮用」」を解説!/

その2「野暮用」

野暮用」は「やぼよう」と読み、「趣味や遊びではない、仕事上やつきあい上のちょっとした用事」という意味の表現です。

「私用」との違いは、「野暮用」は「趣味や遊びではない」用事を意味する点ですね。

たとえば、会議の途中に「野暮用があるので一旦退出しますね」といった場合は、完全に個人的な用事ではないですが、「仕事や実務関連のちょっとした用事がある」ということを意味しています。ややフランクな表現になるので、ビジネス場面で使用する際は気をつけましょう。

その3「私事」

私事」は「わたくしごと」か「しじ」と読み、「自分個人のこと」「私生活に関係したこと」という意味の言葉です。

「私事」と「私用」の違いは、「私事」は「個人的な事情」を表すのに対し、「私用」は「個人的な用事」を表す点ですね。

「私事」は「個人的事情ですが…」という意味で、「私事ですが、来月結婚いたします」のように個人的なことについて話す時の前置きの言葉として使用されることが一般的です。

「私用」の対義語は?

「私用」の対義語は「公用」です。意味や使い方を見ていきましょう。

「公用」

公用」は「こうよう」と読み、(1)「公の用事」、(2)「国や公共団体が使用すること」という意味の言葉です。(1)の意味では、「国や公共団体の用事」という意味の他に「勤務先の用事」という意味でも使用されます。

「私用」は「自分個人の用事」「自分個人の用事に用いること」という意味なので、反対の意味といえますね。

「私用」の英訳は?

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「私用」は英語でどのように表現するのでしょうか?一緒に見ていきましょう。

その1「private use」「private purpose」

「私用」を意味する英単語として、まずは「private use」「private purpose」が挙げられます。外来語で「プライベート」という言い方も定着していますよね。

この2つは「私用」の「自分個人の用事に用いること」という意味に該当します。例文を確認してみましょう。

\次のページで「その2「personal reasons」」を解説!/

「Copy for private use」…私用のためのコピー
「Don’t use the car for private purpose.」…その車を私用で使ってはいけません。

その2「personal reasons」

もう1つは「personal reasons」です。こちらは「私用のため…」と、理由を説明するときに使う表現ですね。例文を確認してみましょう。

「I will take a vacation next week for personal reasons.」…私用のため来週休暇をいただきます。

「私用」を使いこなそう

この記事では「私用」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「私用」は「自分個人の用事に用いること」「自分個人の用事」という2つの意味を持った言葉です。理由を説明するときに「私用」を使用すると、具体的な用事の内容を言わずに個人的な用事があることだけを伝えることができます。

類義語の「所用」と意味の区別がややこしいですが、「所用」の方が「私用」より意味の範囲が広く、個人的な用事以外にも使用できるので、覚えておきましょう。

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国語言葉の意味

「私用」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「私用」について解説する。

端的に言えば私用の意味は「個人的な用事」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「私用」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に、「言葉」について分かりやすく解説していく。

「私用」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「私用」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「私用」の意味は?

「私用」には、次のような意味があります。

1.私事に用いること。「社用封筒を―する」「―電話」⇔公用。
2.自分個人の用事。私事。「―で早退する」⇔公用。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「し‐よう【私用】」

私用」は「しよう」と読み、「自分個人の用事に用いること」「自分個人の用事」という2つの意味を持った言葉です。

日本語では、国や公共団体、職場や仕事に関わることについては「公」、それ以外の家族や友人、恋人、趣味などに関わることは「私」という字を使って分ける傾向があります。今回ご紹介する「私用」は後者に該当する言葉です。

「私用」の語源は?

「私用」の正確な語源については分かりませんが、「私用」は古くから使われてきた言葉であるということは明らかです。

「自分個人の用事に用いること」という意味では、鎌倉時代(1257年)の『私聚百因縁集』という仏教説話集に「常燈仏餉(ぶっしゃう)用ひて私用(シヨウ)とし」という記述が確認されています。

「自分個人の用事」という意味では、「毎朝若依病気、奉行人之内不能出頭者、可捧起請文。又難去私用之時者、可言上子細事」と、戦国時代(1481年)の『大内氏掟書』に記述が確認されていますね。

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