この記事では「レゾンデートル」について解説する。

端的に言えばレゾンデートルの意味は「存在理由」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「レゾンデートル」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「レゾンデートル」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「レゾンデートル」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「レゾンデートル」の意味は?

「レゾンデートル」には、次のような意味があります。

《「レゾンデートル」とも》存在理由。存在価値。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「レーゾン - デートル」

「レゾンデートル」とは、生きる理由や生きる目的のことです。「生きがい」と考えると分かりやすいでしょう。

辞書にある「存在理由」という言葉には「存在する意義」という意味合いを感じますが、レゾンデートルは「意義」とは微妙に違います。2つの文章を比べてみましょう。

「歌を歌うことが私の存在理由だ」は、歌を歌うことが人生で一番大切で、生きがいであるという文章です。「歌を歌うことが私の生きがいだ」と言い換えられますね。これが「レゾンデートル」です。「歌を歌うことが私のレゾンデートルだ」と使います。

「家族を守ることが私の存在理由だ」は、私は家族を守るために生きているという文章です。「家族を守ることで私が存在する意義がある」と受け取ると「私が存在する価値」について言っているように感じませんか。「家族を守ることが生きがいだ」と全く違うわけでもないですが、微妙な違いがあるのを理解しましょう。

「レゾンデートル」の語源は?

次に「レゾンデートル」の語源を確認しておきましょう。「レゾンデートル」の語源はフランス語の「raison d'être」。英語に直すと「raison」は「reason(理由)」、「de」は「of(~の)」、「être」は「be(存在)」です。まとめると「reason of being(存在の理由)」となります。

「raison d'être」は、そのまま英語としても使えるのです。「e」の上のアクセント記号無しの「raison d'etre」でも使えますよ。

日本でレゾンデートルの言葉が広まったのは1960年代、学生運動が盛んだったころ。レゾンデートルはフランスのジャン=ポール・サルトルが広めた「実存主義」と深くつながる概念です。戦後の「サルトルブーム」はレゾンデートルの言葉とともに日本に伝わり、青年たちに大きな影響を与えました。

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「レゾンデートル」の使い方・例文

「レゾンデートル」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.19世紀にデンマークのキルケゴールがとなえた「実存主義」という哲学は、人間は大きな構造の一部ではなくレゾンデートルを追求するべき存在だという解釈をもって、戦争による荒廃で不安をかかえる人びとの救いとなった。
2.ネットに自作のアニメをアップすることと、食べログで点数の高いラーメンのお店でつけ麺を食べることは、自分にとって大切なレゾンデートルなんだっ!
3.この会社は中小企業だが、世界一の品質を誇る製品を生み出すことをレゾンデートルとする熱い社員たちが、みんな一丸となって仕事に当たっている。

例文1、2、3のすべての「レゾンデートル」は「生きがい」に置き換えられます。例文3については「(自分たちの)存在意義・役割」とも言い換えられますが、「仕方なく請け負う役割」「惰性で請け負う役割」ではなく、希望や使命感をもって仕事に臨む姿勢が伝わりますね。

語源である「raison d'etre」を正しく訳すと「自分が信じる生きる理由」。「社会の役に立っている」「家族のために働いている」というような客観的な存在価値ではなく、自分が信じる生き方、生きがいをさすのだと理解しましょう。

日本語の「存在理由」あるいは「存在意義」「存在価値」という言葉は、「それがどう役に立っているか」をも表す言葉であるため、ニュアンスが変わってしまいがちです。「レゾンデートル」の正しい意味に沿えば、レゾンデートルを貫くときには、むしろ客観的な存在意義や価値はゼロである場合もありえますよ。

「レゾンデートル」の類義語は?違いは?

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「レゾンデートル」の類義語には「アイデンティティ」があります。

「アイデンティティ」

「生きる目的」という言葉において、「レゾンデートル」と「アイデンティティ」は似て異なる意味をもちます。

アイデンティティとは「自分はこういうものであって、ほかのものではない」ということです。「自分はなにものなのか」「自分はどう生きていくのか」といった問いに確信をもって答えられる状態を「アイデンティティを確立した」と表現しますね。これを「生きる目的が分かった」と表現してもおかしくありません。

一方「自分のレゾンデートルはなにか」という場合、「これをしたくて生きている」という理由(生きがい)はなにかという意味です。これも「生きる目的」と表現できます。

アイデンティティは「自分のあり方」、レゾンデートルは「生きる理由」といったところでしょうか。アイデンティティには「身分証明」という意味があるのも理解のヒントになるかもしれません。哲学や心理に興味があれば、ぜひ深く学んでみてください。

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「レゾンデートル」の対義語は?

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「レゾンデートル」の対義語はありません。

すでに述べたとおり、「レゾンデートル」は「生きがい」と考えると、意味を正しくとらえることができます。「生きがい」の対義語である「死にがい」という言葉を紹介しましょう。

「死にがい」

「死にがい」は「死に甲斐」と書きます。「甲斐(かい)」とは、なにかして効果を得ること。「勉強を頑張った甲斐もなく、テストは赤点だった」となれば、効果は得られず頑張った意味はなかったということになります。(実際には、勉強を頑張ったのに意味がないということはないのですが。)

死にがいはつまり、死ぬことで効果を得ること。「死んだことで良い結果があった」のなら、死んだ意味があったということになります。例えば、自分が死ぬことで愛する人を守れるという状況でもあれば「死にがいがある」と感じるのではないでしょうか。

レゾンデートルとは「生きがい」であり、「これがあるから生きる」という「存在理由」。「このために死ぬのだ」という「死にがい」は、逆の概念を持つ言葉と言えないこともないでしょう。

「レゾンデートル」を使いこなそう

この記事では「レゾンデートル」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「レゾンデートル」は「存在理由」「生きがい」という意味です。

「存在意義」「存在価値」とも訳されるため、微妙に違ったとらえかたをしがち。客観的な「意義」や「価値」がなくても、自分の中にある生きがいが「レゾンデートル」なのです。ぜひ覚えてくださいね。

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国語言葉の意味

「レゾンデートル」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「レゾンデートル」について解説する。

端的に言えばレゾンデートルの意味は「存在理由」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「レゾンデートル」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「レゾンデートル」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「レゾンデートル」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「レゾンデートル」の意味は?

「レゾンデートル」には、次のような意味があります。

《「レゾンデートル」とも》存在理由。存在価値。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「レーゾン – デートル」

「レゾンデートル」とは、生きる理由や生きる目的のことです。「生きがい」と考えると分かりやすいでしょう。

辞書にある「存在理由」という言葉には「存在する意義」という意味合いを感じますが、レゾンデートルは「意義」とは微妙に違います。2つの文章を比べてみましょう。

「歌を歌うことが私の存在理由だ」は、歌を歌うことが人生で一番大切で、生きがいであるという文章です。「歌を歌うことが私の生きがいだ」と言い換えられますね。これが「レゾンデートル」です。「歌を歌うことが私のレゾンデートルだ」と使います。

「家族を守ることが私の存在理由だ」は、私は家族を守るために生きているという文章です。「家族を守ることで私が存在する意義がある」と受け取ると「私が存在する価値」について言っているように感じませんか。「家族を守ることが生きがいだ」と全く違うわけでもないですが、微妙な違いがあるのを理解しましょう。

「レゾンデートル」の語源は?

次に「レゾンデートル」の語源を確認しておきましょう。「レゾンデートル」の語源はフランス語の「raison d’être」。英語に直すと「raison」は「reason(理由)」、「de」は「of(~の)」、「être」は「be(存在)」です。まとめると「reason of being(存在の理由)」となります。

「raison d’être」は、そのまま英語としても使えるのです。「e」の上のアクセント記号無しの「raison d’etre」でも使えますよ。

日本でレゾンデートルの言葉が広まったのは1960年代、学生運動が盛んだったころ。レゾンデートルはフランスのジャン=ポール・サルトルが広めた「実存主義」と深くつながる概念です。戦後の「サルトルブーム」はレゾンデートルの言葉とともに日本に伝わり、青年たちに大きな影響を与えました。

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