この記事では「事案」について解説する。「事案」は本来そう新しいとか、急にできた言葉だとかいうわけじゃない。しかしニュースで使用されるようになり、世間の情報化も相まって急速に普及した言葉です。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「事案」の意味や使い方、類義語などを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「事案」の意味とは?

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「事案」の意味は以下の通りです。

事案とは、基本的には「問題となっている(取り扱いや処理が求められている)事柄」あるいは「問題視すべき事柄」という意味の表現。何らかの対処を講じなくてはならない、または対処を取るべきかどうか検討する必要がある、といった要素を含んだ物事を指す抽象的な表現である。

出典:Webli辞書「事案 意味」

まず、意味としては「事柄」を指しています。どのような「事柄」かというと、「問題視すべきである」「何らかの対策が必要とされる」ような「事柄」です。基本的に良い意味やニュートラルなことに使われる言葉ではなく、何かしら問題が発生した際に使用される言葉になります。

ただし、実際には単純に「事柄」を指して使用してしまう人も居るため、注意しましょう。

「事案」の使い方

「事案」は以下のように使います。

1.今進めている企画において、非常にまずい「事案」が発生した。
2.不適切な「事案」が起こりかねない状況は避けたい。
3.そのような「事案」はなかったと先日の会議で結論が出た。

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いずれも、「事/事柄」と置き換えられるのがわかります。「事案」という言葉には「問題がある」というニュアンスがすでに入っているため、1と2は意味の重複が起こっているのでは?と思うかもしれません。しかし実際に「事案」を使用する際、悪い意味を含めず「事柄」という意味だけを含んで「事案」と使う人は多いです。

そのため意味上重複していても、「不適切な」「まずい」などの修飾語を付けた方がより親切となります。

普及し始める「事案」について

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上記のトピックと若干矛盾しますが、「事案」は現在正しい意味が急速に普及している言葉です。多数の人が「事案だ」「事案になる」と、修飾語を使用することなく単に「事案」という言葉のみを使用し、それだけで「まずいことだ」「まずいことになる」という意味を含ませています。現在では、「事案」という言葉に良くないニュアンスが入っていることを知っている人も少なくありません。

新たに生まれる「事案」の意味

上記のトピックで解説したように意味が普及する一方で、「事案」は誤解も広まりつつあります。本来「事案」とは「問題とするべき事柄」という意味であって、どのような問題なのかという問題の種類については限定されていません。しかし、現在では「事案」というと、「特に犯罪にまつわる事柄だ」とみなす人が増えています。

なぜ「事案」は恐れられるように?

「事案」という言葉が普及しだしたきっかけは、主に児童に対する犯罪防止の呼びかけとして使用されたことです。見知らぬ大人が児童に声をかけることについてニュースで取り上げられ、声かけ事案などと一時期は呼ばれていました。

当初こそ「声をかけたくらいでニュース扱いだなんて」という、大袈裟さを皮肉った言葉として使用されることもありましたが、近年はすっかり「問題とすべき事柄」として定着しています。ただしそれと引き換えに、「犯罪絡みである」「特に女性や子供に絡んだ犯罪にまつわる」と思い込んでしまっている人も少なくありません。

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こんなにある!「事案」の類義語と違い

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「事案」は類義語の多い言葉でもありますが、意味はそれぞれ微妙に異なります。置き換えも場合によって可能ではありますが、それぞれの意味を知っておくことで、いざという時の言葉のチョイスに悩まなくなるでしょう。

「事案」と「事例」は時間軸がずれることも?

「事案」の類義語のひとつとして、「事例」が挙げられます。「事例」の意味は、「実際に起こった出来事の中で前例となる事柄」のことであり、事例は未来において「過去に起こったモデルケース」として扱われるのです。それにともなって、「事例」はどちらかというと過去に起こった出来事を指す場合が多くなります。

かといって「事案」とまったく違う意味というわけではなく、状況によっては「事案」と呼んでも「事例」と呼んでも、どちらでも正解になるということも少なくありません。ポイントはその事柄について、「問題がある」というニュアンスが強いのか、「モデルケース」というニュアンスが強いのかです。

問題の種類が異なる「事案」と「案件」

「案件」も「事案」の類義語のひとつです。注意すべき点は、ぱっと見たところほぼ同じ意味であっても、決定的に違う部分があるところでしょう。

「案件」の意味は「問題になっている事柄」「解決すべき事柄」であり、これは「事案」とほぼ同様となります。異なっているのは、問題の種類です。「事案」の問題とは概念的な問題であり、「悪い事」「起こってはならないこと」という意味での問題となります。それに対して「案件」は実務的な問題であり、「処理すべきタスク」という意味を指し示すため、「悪い事」というニュアンスはありません。

解決すべき「事案」と観察すべき「事象」

「事象」も「事案」の類義語としてしばしば使用される言葉です。しかし「事象」は持つニュアンスが異なっており、「事柄」という意味は含んでいるものの、「問題となる」「解決すべき」という意味は持っていません。一方で「事象」が持っている意味として、「観察するべき」というニュアンスがあります。そのため「事象」は、自然現象などなんらかの研究の対象になるようなものに使用されることが多いです。

もちろん双方意味が矛盾しているわけではないため、「事案」でも「事象」でもどちらでも正しい場合があります。

問題となる「事案」と話題を呼ぶ「事件」

「事案」と「事件」は類義語の中でもしばしば同一視される場合があります。実際にどちらであっても意味合いは正しいというケースも多いですが、それは意味が同一であるからという理由ではなく、「事案」の意味と「事件」の意味、両方を含んでいる場合が少なくないからです。

「事件」には「問題とすべき」という意味こそありませんが、代わりに「話題性のある」「法的な」という意味を抱いています。よって世間で騒がれるような犯罪が発生した際、「事案」と呼んでも正しく、「事件」と呼んでも正しいということになるのです。

日本語の豊かさを感じる「事案」

「事案」という言葉はシンプルな作りながら、類義語が多数あったり、漢字から推測できない「問題がある」というニュアンスを含んでいたりと、さまざまな側面を持つ言葉です。使い分けや区別が面倒だと感じることもあるかもしれませんが、そう感じている瞬間は、母国語に触れる醍醐味を味わっている瞬間でもあります。

世情に左右されるという言葉の宿命とも密接に関わる「事案」について、本記事を読んで覚えておきましょう。

" /> 情報化社会で一気に普及?「事案」の意味・使い方・類義語を言葉大好きライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

情報化社会で一気に普及?「事案」の意味・使い方・類義語を言葉大好きライターがわかりやすく解説!

この記事では「事案」について解説する。「事案」は本来そう新しいとか、急にできた言葉だとかいうわけじゃない。しかしニュースで使用されるようになり、世間の情報化も相まって急速に普及した言葉です。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「事案」の意味や使い方、類義語などを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「事案」の意味とは?

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「事案」の意味は以下の通りです。

事案とは、基本的には「問題となっている(取り扱いや処理が求められている)事柄」あるいは「問題視すべき事柄」という意味の表現。何らかの対処を講じなくてはならない、または対処を取るべきかどうか検討する必要がある、といった要素を含んだ物事を指す抽象的な表現である。

出典:Webli辞書「事案 意味」

まず、意味としては「事柄」を指しています。どのような「事柄」かというと、「問題視すべきである」「何らかの対策が必要とされる」ような「事柄」です。基本的に良い意味やニュートラルなことに使われる言葉ではなく、何かしら問題が発生した際に使用される言葉になります。

ただし、実際には単純に「事柄」を指して使用してしまう人も居るため、注意しましょう。

「事案」の使い方

「事案」は以下のように使います。

1.今進めている企画において、非常にまずい「事案」が発生した。
2.不適切な「事案」が起こりかねない状況は避けたい。
3.そのような「事案」はなかったと先日の会議で結論が出た。

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