この記事では「ソウ類(藻類)」をテーマに学んでいこう。

ソウ類は中学校の理科ではやくも登場しますが、その特徴や分類については曖昧になっているやつも少なくないんじゃないでしょうか。具体例を挙げながら、ソウ類にはどんなものがいるのかを確認していきたい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ソウ類とは?

まず初めに話しておきたいのですが、ソウ類(藻類)とよばれる生物のグループはとても大きく、かつ大ざっぱなものです。

光合成色素をもち、酸素を発生するような光合成をする生物のなかから、種子植物、シダ植物(スギナやゼンマイなど)、コケ植物(ゼニゴケやミズゴケなど)を除いたものすべてがソウ類とひとまとめにされます。

image by Study-Z編集部

あとから詳しく述べますが、コンブやワカメのような海藻、ミカヅキモやケイソウなどのいわゆる”植物プランクトン”、さらには原核生物の藍藻類(シアノバクテリア)まで、どれもソウ類というグループにまとめられてしまうのです。

\次のページで「ソウ類の特徴」を解説!/

なので、ソウ類のことをひとまとめにして話すのは難しいのです…といってしまうと、今回の記事が終わってしまいますね。

ここではまず、一般的なソウ類に当てはまる特徴をおさえておきましょう。中学校の理科で学習するレベルの内容です。

ソウ類の特徴

一般的なソウ類の特徴としてよくあげられる、3つのポイントを見てみます。

1.水の中で生活している

ほとんどのソウ類は水中に生息しています。海藻や植物プランクトンは、海の中や水の中にみられますよね。基本的なイメージは、それでOKです。

ただ、海中や淡水中以外の場所に生息するソウ類もいる、ということも知っておいてほしいと思います。

Snow Algae Textures.jpg
Iwona Erskine-Kellie from Vancouver, Canada - Snow Algae Textures, CC 表示 2.0, リンクによる

まるでコケやカビのように地上に生息する気生藻類、土の中に住む土壌性の藻類、氷の中にいる氷雪藻など、水中以外の色々なところにもソウ類は見られます。また、水中は水中でも、温泉のような温かいお湯の中にいる温泉藻などというものまでいるんです。また、他の生物のからだに共生しているものもいます。

これらのソウ類はあまりメジャーではありませんが、ソウ類というグループの多様性を考える上では、忘れてはいけない存在といえるでしょう。

2.根、葉、茎の区別がない

体のつくりは比較的単純で、根や葉、茎の区別はありません。種子植物やシダ植物のような維管束ももっていないのです。ミカヅキモなどの単細胞のソウ類では、明らかにそのような複雑な構造はみられませんね。

海藻とよばれるソウ類のなかでも、コンブやワカメなどはちょっと迷います。カットされたものがよく販売されていますが、海中に生えているときはまるで葉や茎のような構造がみられるのです。

Undaria pinnatifida growth stages.jpg
Steve Lonhart / NOAA MBNMS - http://sanctuarymonitoring.org/photos/photo_info.php?photoID=1403&search=algae&s=180&page=10, パブリック・ドメイン, リンクによる

海底に付着している部分を見ると、根のような構造も見えるのですが…これは「仮根」といい、陸上植物の根とは根本的に機能が異なるものです。また、葉や茎のような構造も、陸上植物のものとは役割が異なるため、それらが「”葉”や”茎”である」とは言えません。

\次のページで「3.からだ全体で水や栄養を吸収する」を解説!/

3.からだ全体で水や栄養を吸収する

陸上の植物であれば、水分や栄養分の多くを根から吸収しますが、藻類ではからだ全体で水や栄養を吸収します

さきほど「仮根」という言葉が出てきましたが、仮根は基本的に体を固定するための構造であり、生存に必要な水や栄養の大部分を吸収する陸上植物の”根”とは、やはり異なるものなのです。

代表的なソウ類のグループ

では、ソウ類の中に含まれる生物のより細かなグループ(分類群)のうち、代表的なものをピックアップしてご紹介しましょう。よく知られるものは、種名も覚えておくのがオススメです。

褐藻

褐色(茶色に近い色)のものが多く、ワカメやコンブのような大型の海藻をふくむのが褐藻(かっそう)のグループです。英語ではBrown algaeといいます。

褐藻の色は、このグループがクロロフィルに加え、フコキンサンチンという光合成色素をもっているためです。このフコキサンチンの色が褐色であるため、藻体も褐色が強くなります。

ほかにも、ヒジキやモズク、アカモクなど、食用にされる海藻がいくつも含まれますね。

紅藻

紅藻(こうそう)は、赤色をしたソウ類が多く含まれるグループです。

こちらもやはり、もっている光合成色素(フィコエリスリン)によって藻体が赤色っぽくなります。英語でもズバリRed algaeですが、個体によっては茶色っぽく、色だけでは褐藻と間違えてしまいそうなものもいるのでご注意を。

藻体のスケールも、比較的大型になるものから単細胞性のものまで様々です。

\次のページで「緑藻」を解説!/

image by iStockphoto

海苔の原材料であるスサビノリやアサクサノリ、寒天の材料となるテングサやオゴノリ、おみそ汁の具や海藻サラダに使われるフノリやトサカノリの仲間など、私たちの食生活でも紅藻は見られます。

緑藻

こちらも名前の通りですが、緑色のからだをもつものが多く含まれるグループ、緑藻(りょくそう)です。英語ではGleen algae。光合成色素であるクロロフィルaおよびクロロフィルbの色が影響し、緑色に見えます。

この”緑藻”というグループもかなり大きなものです。単細胞性のものでは、ミカヅキモやクロレラ、クラミドモナスなど。クラミドモナスが集まったような、群体性のヨツメモやボルボックス。多細胞性のアオミドロやシャジクモ、海藻として食用になるアオサなども緑藻に含まれます。

珪藻類

珪藻(けいそう)のなかまはまとめて珪藻類とよばれます。単細胞ですが、ケイ酸でできた硬い殻(被殻)で細胞が包まれており、その形状は様々です。

image by iStockphoto

褐藻類と同じくフコキサンチンをもつのに加え、βカロテンなど他の光合成色素ももち、結果的には褐色から黄褐色の色身を呈します。

海水中にも淡水中にも見られ、観察もしやすいことから、教科書などでもよく紹介されるソウ類でしょう。

多種多様な”ソウ類”というグループ

生物というと、イヌやネコなどの動物を思い浮かべる人が多いでしょう。また、野菜や花のような植物をイメージする人も少なくないはずです。今回紹介したソウ類は、そんな”わかりやすい生物”とは一味違い、少し地味で目立たないグループだと思います。

ですが、そんなソウ類というグループの実態は、さまざまな生物が投げ込まれた”るつぼ”のようなもの。ソウ類の研究をすることで、植物や原生生物の進化の秘密が解明できると考える研究者もいます。

”色々いるから面白い”。生物学の醍醐味を感じさせてくれるグループといってもいいかもしれません。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 意外とわかりづらい「ソウ類」とは?定義や特徴・具体例を現役講師が全力わかりやすく解説 – Study-Z
理科生態系生物生物の分類・進化

意外とわかりづらい「ソウ類」とは?定義や特徴・具体例を現役講師が全力わかりやすく解説

この記事では「ソウ類(藻類)」をテーマに学んでいこう。

ソウ類は中学校の理科ではやくも登場しますが、その特徴や分類については曖昧になっているやつも少なくないんじゃないでしょうか。具体例を挙げながら、ソウ類にはどんなものがいるのかを確認していきたい。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ソウ類とは?

まず初めに話しておきたいのですが、ソウ類(藻類)とよばれる生物のグループはとても大きく、かつ大ざっぱなものです。

光合成色素をもち、酸素を発生するような光合成をする生物のなかから、種子植物、シダ植物(スギナやゼンマイなど)、コケ植物(ゼニゴケやミズゴケなど)を除いたものすべてがソウ類とひとまとめにされます。

image by Study-Z編集部

あとから詳しく述べますが、コンブやワカメのような海藻、ミカヅキモやケイソウなどのいわゆる”植物プランクトン”、さらには原核生物の藍藻類(シアノバクテリア)まで、どれもソウ類というグループにまとめられてしまうのです。

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