この記事では「不束者」について解説する。

端的に言えば不束者の意味は「気がきかないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国文学専攻の大学を卒業し、日本語教師の資格を持つasukaを呼んです。一緒に「不束者」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/asuka

国文学専攻の大学を卒業。日本文学や日本語学を学ぶうちに、言葉が持つ意味の奥深さに魅了され、在学中に日本語教師の養成講座を修了する。これまで学んだこと、経験を活かし丁寧に解説していく。

「不束者」の意味や語源・使い方まとめ

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皆さんは「不束者」という言葉を知っていますか?「不束者」と書いて「ふつつかもの」と読みます。現代社会で日常生活を送っているとあまり馴染みのない言葉に感じますね。漢字を見ただけでは読めない人も多いのではないでしょうか。この記事では「不束者」について例文を用いながら意味を解説していきますので、一緒に理解を深めて一つ言葉の知識を増やしましょう!

「不束者」の意味は?

「不束者」と辞書で調べると次のような表記がありました。

気のきかない人。行きとどかない者。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「不束者」

「不束者」とは上記の通り「気の利かない人」や「行きとどかない人」のことを指す言葉です。もう少し分かりやすく言い換えると「細かい配慮に欠ける人」「細かい気配りができない人」という意味となります。私は「不束者」という言葉を聞くと「昔の結婚」を思いつきますが、皆さんは何か頭に浮かぶものはありますか。「昔の結婚」とは具体的な表現ではなく雰囲気ですが、夫となる男性に妻となる女性が正座をして頭を深々と下げて挨拶をするシーンです。こうしたシーンは、時代劇や昭和のドラマで目にすることが多いような気がします。

「不束者」の語源は?

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「不束者」の意味について確認できました。それでは次に「不束者」の語源を確認しておきましょう。

「不束者」とは「不束」な「者」と言葉を分けることができます。「不束」とは「太束(ふとつか)」が転じてできた言葉です。「太束」は「太くて丈夫なさま」を意味し「細かい配慮に欠ける」というようなネガティブな意味はありませんでした。しかし、時代がだんだんと移り変わり平安時代になると、細いもの、美しいものこそが「美」とされ「太さ」を意味する「太束」は「不格好」「野暮ったい」という意味を持つようになったと考えられています。そして更に時代が進むと「見栄えが悪い」という意味が中核となり、現代では「細かい配慮が欠ける」といった意味を持ち「細かい配慮に欠ける者」を「不束者」というようになりました。

\次のページで「「不束者」の使い方・例文」を解説!/

「不束者」の使い方・例文

続いて「不束者」の使い方について例文を用いながら説明します。

1.娘が恋人を連れてきて「娘さんと結婚させてください」と挨拶をされたので「不束者の娘ですが、どうぞよろしくお願いします」と答えた。
2.今日から着任した彼は「不束者ですが、誠心誠意業務に励みますので何卒よろしくお願いいたします」と皆の前で挨拶した。
3.研修を担当した部下から「不束者ですが、引き続きご指導のほどよろしくお願い申し上げます」と言われた。

例文1は結婚の挨拶のシーンが伺えますね。「不束者」という言葉を使って女性側の親が「未熟な娘ですがどうぞよろしく」と伝えています。例文2と例文3はビジネスシーンで「不束者」という言葉が使用されていることが分かりますね。例文2は新しく任務に就くためにきた彼が「不束者」を使用して「私は未熟者ですが精一杯頑張るのでよろしくお願いします」と挨拶している様子が伺えます。例文1と同じく例文2は「未熟者」という意味が含まれているといえるでしょう。例文3は研修を担当した部下から上司に向けて発言している会話だと考えられます。

「不束者」の類義語は?違いは?

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ここまで「不束者」の意味や語源、使い方について説明しました。次に「不束者」の類義語について一緒に確認していきましょう。

その1「若輩者(じゃくはいもの)」

「若輩者」とは「経験が浅く未熟な者」「年が若い者」を意味する言葉です。「経験が浅く未熟」という意味で「年が若い」という表現が使用されているため、何歳から何歳までが「若輩者」に当たるという決まりはありません。「若輩者」は謙遜の意味で使用され、ある程度経験を積んだ人が自分を下げて言う時に使用されることがほとんどです。

例として「私のような若輩者がこのような大きなプロジェクトのリーダーを仰せつかりまして大変恐縮でございます」というようにビジネスシーンでの挨拶で使用することができます。この文から考えても、経験が全くない人にリーダーを任せることはほとんどないので「ある程度経験のある人」が謙遜で使用している言葉だということが分かりますね。

\次のページで「その2「不調法者(ぶちょうほうしゃ)」」を解説!/

その2「不調法者(ぶちょうほうしゃ)」

「不調法者」とは「行き届かず、手際の悪い者」や「酒や芸事のたしなみがない者」を意味する言葉です。なかなか馴染みのない言葉なのではないでしょうか。少なくとも私は自分の行き届かなさを「不調法」と表現する方にお会いしたことはありません。あまり日常的に使用する言葉ではなく狂言や浄瑠璃の中で使用されている言葉です。ここでは「不束者」の類義語として簡単に意味を押さえておきましょう。

その3「無骨(ぶこつ)」

「無骨」とは「洗礼されていないこと」「無作法なこと」「役に立たないこと」を意味する言葉です。「無作法」とは礼儀作法に外れていることを意味します。「無骨」は「武骨」と書くこともできますが「武骨」と書くと「骨ばってゴツゴツしている」という意味になってしまうので漢字で書く機会がある場合「無骨」と書くようにしましょう。「無骨」も「不調法者」と同じく平家物語や曽我物語など昔の物語で使われている言葉であり、現代社会では「あの人はなんて無骨な振舞いをする人なんだろう」といったように使用する人はほとんど見受けられません。

「不束者」の対義語は?

最後に「不束者」の対義語について見ていきましょう。

「不束者」に明確な対義語はありません。しかし「未熟」「行き届かない」という意味を持つことから「達人」や「達者」など物事の通りに通じた人や熟達した人を意味する言葉が対義語として考えられるのではないでしょうか。

「不束者」を使いこなそう

この記事では「不束者」の意味・使い方・類語などを説明しました。おさらいすると「不束者」とは「未熟な人」という意味で謙遜を込めて自分を下げて言う言葉でしたね。特に結婚やビジネスの場面で使用されることが多い言葉でした。これから就職、転職や結婚式など人生で起ることに備えて「不束者」の意味をしっかり押さえて使用できるようにしましょう。この記事を通して皆さんのお役に立つことができれば幸いに思います。

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国語言葉の意味

「不束者」の意味や使い方は?例文や類語を国文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「不束者」について解説する。

端的に言えば不束者の意味は「気がきかないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国文学専攻の大学を卒業し、日本語教師の資格を持つasukaを呼んです。一緒に「不束者」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/asuka

国文学専攻の大学を卒業。日本文学や日本語学を学ぶうちに、言葉が持つ意味の奥深さに魅了され、在学中に日本語教師の養成講座を修了する。これまで学んだこと、経験を活かし丁寧に解説していく。

「不束者」の意味や語源・使い方まとめ

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皆さんは「不束者」という言葉を知っていますか?「不束者」と書いて「ふつつかもの」と読みます。現代社会で日常生活を送っているとあまり馴染みのない言葉に感じますね。漢字を見ただけでは読めない人も多いのではないでしょうか。この記事では「不束者」について例文を用いながら意味を解説していきますので、一緒に理解を深めて一つ言葉の知識を増やしましょう!

「不束者」の意味は?

「不束者」と辞書で調べると次のような表記がありました。

気のきかない人。行きとどかない者。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「不束者」

「不束者」とは上記の通り「気の利かない人」や「行きとどかない人」のことを指す言葉です。もう少し分かりやすく言い換えると「細かい配慮に欠ける人」「細かい気配りができない人」という意味となります。私は「不束者」という言葉を聞くと「昔の結婚」を思いつきますが、皆さんは何か頭に浮かぶものはありますか。「昔の結婚」とは具体的な表現ではなく雰囲気ですが、夫となる男性に妻となる女性が正座をして頭を深々と下げて挨拶をするシーンです。こうしたシーンは、時代劇や昭和のドラマで目にすることが多いような気がします。

「不束者」の語源は?

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「不束者」の意味について確認できました。それでは次に「不束者」の語源を確認しておきましょう。

「不束者」とは「不束」な「者」と言葉を分けることができます。「不束」とは「太束(ふとつか)」が転じてできた言葉です。「太束」は「太くて丈夫なさま」を意味し「細かい配慮に欠ける」というようなネガティブな意味はありませんでした。しかし、時代がだんだんと移り変わり平安時代になると、細いもの、美しいものこそが「美」とされ「太さ」を意味する「太束」は「不格好」「野暮ったい」という意味を持つようになったと考えられています。そして更に時代が進むと「見栄えが悪い」という意味が中核となり、現代では「細かい配慮が欠ける」といった意味を持ち「細かい配慮に欠ける者」を「不束者」というようになりました。

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