この記事では「鷹揚」について解説する。

端的に言えば鷹揚の意味は「ゆったりとして威厳があること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「鷹揚」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「鷹揚」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 2157319

それでは早速「鷹揚」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鷹揚」の意味は?

「鷹揚」には、次のような意味があります。

1.(鷹が大空に飛ぶ姿がいかにも自信にみち、おおらかであるように)ゆったりとして威厳があること。小さなことにこだわらないで、おっとりしているさま。ようよう。

2.動作のゆっくりしているさま。

3.(─する)世に出ること。名をなすこと。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「おう‐よう」

「鷹揚」は「おうよう」と読み、名詞としての意味と形容動詞としての意味を持っています。鳥の一種である「タカ」を示す漢字の「鷹」と「あげる」と読む漢字の「揚」が使われていますね。

「鷹揚」の意味は、形容動詞の意味としては鷹の飛ぶ様子が基になっています。鷹の空を飛ぶさまを見て「威厳がある」「ゆっくりしている」という意味です。名詞としては「鷹揚する」という形で使用します。

「鷹揚」の語源は?

次に「鷹揚」の語源を確認しておきましょう。「鷹揚」という言葉は、中国の最古の詩集である『詩経』に登場します。先ほど紹介した、辞書における「鷹揚」の意味の一つ目が『詩経』に載っている「鷹揚」の意味です。

また、「鷹揚」の意味として「大雑把」を挙げる人も中にはいますが、「鷹揚」のもともとの意味に「大雑把」というものはありません。日本には「鷹揚」とはまた別の「大様」という言葉があり、その言葉は「大雑把」という意味を持ちます。「鷹揚」の「大雑把」という意味は、もともと「大様」にあったはずの意味が、混同してしまったことによるものなのです。また、「大様」が「鷹揚」の当て字になった、という説もあります。

\次のページで「「鷹揚」の使い方・例文」を解説!/

「鷹揚」の使い方・例文

「鷹揚」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.仕事のミスに対処してくれた部長に謝罪に行ったところ、彼は鷹揚にも私を許してくれた。

2.彼は持ち前の鷹揚さで周囲を安心させた。

3.彼女は、この絶望を乗り切れるほどの鷹揚さは持ち合わせていなかった。

4.鷹揚な人柄を持つ課長は、多くの人から頼られている。

「鷹揚」は「鷹揚する」の形で「世に出る」という意味を持ちますが、実際に日常生活で使う際には「ゆったりとして威厳があること」の意味で使うことが多いです。そのため、「鷹揚」の形としては形容動詞的になものになることが多くあります。「鷹揚な人柄」「鷹揚な態度」「鷹揚にも」という形で使いましょう。「鷹揚さ」といった形で名詞として使うことも可能です。

「鷹揚」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 43685802

ここでは、「鷹揚」の類義語について見ていきましょう。それぞれの類義語と「鷹揚」がどのように異なるかについても紹介していきます。

その1「寛大」

「寛大」は「心が広くゆったりしていること。おおようであること。度量の大きく、思いやりのあること。また、そのさま。」という意味です。大まかな意味は「鷹揚」と実によく似ています。

「鷹揚」と「寛大」との違いは、「鷹揚」には「威厳がある」という意味合いがあるものの、「寛大」にはそれがないということです。

\次のページで「その2「寛容」」を解説!/

その2「寛容」

「寛容」は「心がひろくて、他人の言動をよく受け入れること。他人の罪過をきびしくとがめだてしないこと。また、そのさま。」という意味です。心が広い、という意味を持つ点で「鷹揚」と類似しています。

「鷹揚」と「寛容」の異なる点として、「寛容」は「罪をとがめない」という意味がある者の「鷹揚」にはないということです。また、「寛容」は反対の意味を持つ言葉として「不寛容」がありますが、「鷹揚」にはそのような表現がないという点もあります。

その3「大らか」

「大らか」は「ゆったりとして、こせこせしないさま。おおよう。」という意味です。「鷹揚」と近い意味があります。

「鷹揚」と「大らか」の違いとして「大らか」には「大雑把」という意味合いがありますが、「鷹揚」にはそれがないという点を挙げることが可能です。

「鷹揚」の対義語は?

ここでは、「鷹揚」の対義語を紹介していきます。「鷹揚」は「ゆったりとして威厳があるさま。」という意味ですので、その反対の言葉は「おどおどとしている」「威厳がない」というニュアンスを持つ言葉が適しているでしょう。

また、「鷹揚」には「世に出ること。名を成すこと。」という意味もあるので、その反対の意味を探ることも「鷹揚」の対義語として成り立つでしょう。

その1「小胆」

「小胆」は「胆力の小さいこと。度量のせまいこと。また、そのさま。」という意味を持つ言葉です。「胆力」とは、「物事に恐れず、臆せず、驚かない気力。動じない心。たんりき。」と意味を持ちます。

「鷹揚」に比べて、「小胆」にはマイナスのイメージが強いです。

その2「小心」

「小心」は「小心者」という言葉でおなじみです。意味は「気の小さいこと。度量の小さいこと。また、そのさま。小胆。臆病。」で先ほどの「小胆」と似ています。

「小心」は、上記の意味だと「鷹揚」の対義語で、なおかつあまりいい意味ではありません。しかし、「小心」は「つつしみ深いこと。細心なこと。気をつけて行なうこと。また、そのさま。」という意味もあり、こちらはいい意味で使われます。

その3「無名」

「無名」は、「世間に名が知られていないこと。有名でないこと。むみょう。」という意味です。「小胆」「小心」とは異なり、「鷹揚」における「世に出る。名を成す。」の対義語ということができるでしょう。

\次のページで「「鷹揚」の英訳は?」を解説!/

「鷹揚」の英訳は?

image by PIXTA / 62783265

ここでは、「鷹揚」の英訳について見ていきましょう。

その1「easygoing」

easygoing」は「鷹揚」の英語訳として適切と言うことができるでしょう。この言葉は「のんきな」と訳されることはありますが、悪い意味はありません。様々な要素がゆったりとしている様子を表します。

その2「generous」

generous」は「気前がいい。寛大な」という意味があります。「鷹揚」として使うことももちろん可能です。悪い意味はなく、いいイメージを持つ言葉として使うことができます。

「鷹揚」を使いこなそう

この記事では「鷹揚」の意味・使い方・類語などを説明しました。「鷹揚」は人柄を褒める際の表現として良く使う言葉です。しっかりマスターしていきたいですね。

" /> 「鷹揚」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「鷹揚」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説!

この記事では「鷹揚」について解説する。

端的に言えば鷹揚の意味は「ゆったりとして威厳があること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「鷹揚」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「鷹揚」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 2157319

それでは早速「鷹揚」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「鷹揚」の意味は?

「鷹揚」には、次のような意味があります。

1.(鷹が大空に飛ぶ姿がいかにも自信にみち、おおらかであるように)ゆったりとして威厳があること。小さなことにこだわらないで、おっとりしているさま。ようよう。

2.動作のゆっくりしているさま。

3.(─する)世に出ること。名をなすこと。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「おう‐よう」

「鷹揚」は「おうよう」と読み、名詞としての意味と形容動詞としての意味を持っています。鳥の一種である「タカ」を示す漢字の「鷹」と「あげる」と読む漢字の「揚」が使われていますね。

「鷹揚」の意味は、形容動詞の意味としては鷹の飛ぶ様子が基になっています。鷹の空を飛ぶさまを見て「威厳がある」「ゆっくりしている」という意味です。名詞としては「鷹揚する」という形で使用します。

「鷹揚」の語源は?

次に「鷹揚」の語源を確認しておきましょう。「鷹揚」という言葉は、中国の最古の詩集である『詩経』に登場します。先ほど紹介した、辞書における「鷹揚」の意味の一つ目が『詩経』に載っている「鷹揚」の意味です。

また、「鷹揚」の意味として「大雑把」を挙げる人も中にはいますが、「鷹揚」のもともとの意味に「大雑把」というものはありません。日本には「鷹揚」とはまた別の「大様」という言葉があり、その言葉は「大雑把」という意味を持ちます。「鷹揚」の「大雑把」という意味は、もともと「大様」にあったはずの意味が、混同してしまったことによるものなのです。また、「大様」が「鷹揚」の当て字になった、という説もあります。

\次のページで「「鷹揚」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: