
5分で分かる「ロンドン分散力」多くの分子に働く引力の正体とは?京大卒の研究者がわかりやすく解説!
今日勉強するロンドン分散力という力は多くの分子の間に働く引力の一つです。そしてロンドン分散力のおかげで液体や固体として分子が集まることができる化合物も数多くある。化学に詳しいライター珈琲マニアと一緒に学んでいこう。
ライター/珈琲マニア
京都大学で化学を学び、現在はメーカーで研究職として勤務。学生時代の専門は物理化学であり、量子化学、分子や原子に関する知識が豊富。
1.分子間に働く引力と分子の性質

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世の中のすべての物質は水素や炭素、酸素などの原子から構成されており、原子の組み合わせが変わることで物質の性質は大きく変わります。例えば都市ガスとして用いられるメタン、肥料の原料となるアンモニア、我々の生命活動に欠かせない水、これらの化合物の構造は中心の原子が違うだけです。しかしこれらの化合物の沸点、融点などの基本的な性質は全く異なります。
では化合物の性質の違いはなぜ生まれるのでしょうか。もちろん一つの理由で完璧な説明をすることはできませんが、一つのヒントになる考え方として「分子内に働く引力」を紹介します。分子に働く引力は様々であり、今回学ぶロンドン分散力もそのうちの一つです。
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1-1.電子の偏りによる静電気的な引力

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水とアンモニア、メタンの沸点を比較してみましょう。すると、水の沸点が他の分子よりも100℃以上高いことがわかりますね。この沸点の差を考察する際に重要なのが「電気陰性度」という用語です。電気陰性度とは電子を引きつける力であり、周期表の右上になるほど強くなります(ただし希ガス元素は除きます)。
電気陰性度を踏まえて改めて分子構造を見てみましょう。水の酸素、アンモニアの窒素は水素よりも大きな電気陰性度を持っており、水素から電子を引っ張ります。電子はマイナスの電荷を持っているため、電子が偏ることで分子の中にプラスとマイナスの電荷が発生。ある分子のプラス電荷と別の分子のマイナス電荷の間で静電気的な引力が働きます。液体から気体になるためにはこの引力に打ち勝つ必要があるため、水やアンモニアはメタンよりも沸点が高くなるのです。
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