今回は「不飽和結合」について解説していきます。

不飽和結合は、化学結合の種類の一つで、有機化学を学習すると頻繁に目にする用語です。不飽和結合の概念は、物質の構造や性質を推定するときに、非常に役に立つぞ。また、食品開発の分野でも、不飽和結合の考え方が非常に重要になってくる。今回は、具体例を用いて、不飽和結合の理論をわかりやすく解説します。ぜひ、この機会に、不飽和結合についての理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

不飽和結合について学ぼう!

不飽和結合という言葉は、有機化学について学ぶと必ず目にするものです。有機化学は、有機化合物について考察を行う学問ですよ。有機化合物とは、炭素原子を骨格とした化合物(二酸化炭素や炭酸塩などを除く)の総称です

種々の有機化合物の分子構造を解析する際に、重要な要素の一つが不飽和結合となります。また、有機化合物の性質を考察する際にも、不飽和結合がキーワードとなりますよ。この記事では、最初に不飽和結合の定義や性質について解説します。その後、不飽和結合に関連する話題を紹介しますね

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不飽和結合とは?

不飽和結合とは?

image by Study-Z編集部

まずは、不飽和結合という用語の定義について考えていきましょう非金属原子同士の結合は、原子間で電子を共有する共有結合となることが多いですよね。例えば、水分子(H2O)の水素と炭素の間の結合は、共有結合です。この共有結合には、電子を2つ共有する単結合電子を4つ共有する二重結合電子を6つ共有する三重結合がありますよね。そして、二重結合および三重結合のことを不飽和結合と表現するのです。不飽和結合は、多重結合と呼ぶこともありますよ。

不飽和結合が含まれている化合物の例として、エチレン(H2C=CH2)などの不飽和炭化水素などが挙げられます。また、多くの有機化合物に組み込まれている官能基にも、不飽和結合が含まれていますよ。アセトン(CH3COCH3)に含まれるケトン基(-CO-)酢酸(CH3COOH)に含まれるカルボキシ基(-COOH)には、炭素原子と酸素原子の間に不飽和結合が存在します。

不飽和結合の性質

不飽和結合の性質

image by Study-Z編集部

次に、不飽和結合の性質について考えていきましょう。不飽和結合には様々な種類がありますが、今回は炭素間にある不飽和結合に注目することにしますね

例として、エチレン(H2C=CH2)と臭素(Br2)の反応について考えていきますエチレンに臭素を加えると、1,2-ジブロモエタン(H2BrC-CBrH2)が生じますよ。この反応では、エチレンの炭素間の共有結合が解消され、そこに臭素原子が結合していますよね

このような、反応のことを付加反応と呼びます。一般に、炭素間の不飽和結合では、容易に付加反応が生じることが多いとされていますよ。付加する物質としては、ハロゲンハロゲン化水素水素などが挙げられますよ。

不飽和結合を発見する方法

不飽和結合を発見する方法

image by Study-Z編集部

炭素間に不飽和結合がある物質は簡単に付加反応が生じることを学びました。この性質は、逆に利用することもできます付加反応が生じるかどうかで、化合物中における不飽和結合の有無が判断できるのです

これによって、有機化合物の構造決定を行うためのヒントを得られますし、有機化合物の分類や区別を行うこともできます。ただし、芳香族化合物(ベンゼンなど)の環状構造に含まれる不飽和結合の場合、付加反応が非常に生じにくいので注意が必要です

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油と不飽和結合の関係性

ここからは、不飽和結合に関連する身近な話題をご紹介します。不飽和結合に関連のある話題は、数多くありますが、今回はそれらの中で最も身近であると考えられる油についての話をしますね

油が用いられる場面は、料理だけではありません油は化粧品の製造にも使用されますし、自転車のギアやチェーンに塗る潤滑油も油の一種ですよね。油は、今日における私たちの生活に必要不可欠なものなのです。

それでは、先ほど説明した不飽和結合の説明を意識しながら、以下の説明を読み進めてみてください

植物油と動物油

image by iStockphoto

油は、植物由来の植物油動物由来の動物油に大別できます。植物油の例としては、オリーブオイルごま油が挙げられますよね。また、動物油の例としては、牛脂ラード(豚脂)が挙げられます。これらの違いを化学構造に注目して考察してみましょう

油の正体は、油脂と呼ばれる有機化合物で、油脂はグリセリンと3つの脂肪酸の結合によって構成されています。そして、植物油を構成する脂肪酸に含まれている不飽和結合の数は、動物油を構成する脂肪酸に含まれる不飽和結合の数よりも多いことが知られていますよ

一般的に、不飽和結合が多い有機化合物は、融点が低くなりますよ。ですから、動物油よりも植物油のほうが融点は低くなります。このことは、常温でオリーブオイルが液体である一方で、牛脂が固体であることから実感できますよね

硬化油

image by iStockphoto

バターを構成する物質は乳脂肪です。乳脂肪は、原料のミルクに多く含まれています。そして、乳脂肪は動物油の一種ですから、バターは常温で固体です。バターに似た調味料にマーガリンがあります。マーガリンも常温で固体なので、マーガリンの原料も動物油のように思われますよね。ですが、マーガリンの原料はコーン油、大豆油などの植物油です。では、なぜマーガリンは常温で固体なのでしょうか

実は、マーガリンに含まれる油は硬化油と呼ばれる特殊なものになっています硬化油は、植物油に含まれる不飽和結合の一部を、付加反応によって無くすことで人工的に動物油のような構造を作ったものですよ。以上のような理由で、マーガリンは植物油を原料としているにも関わらず、常温で固体なのです。しかしながら、バターの風味をマーガリンで完全に再現することは困難ですよ。

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不飽和結合について学ぶ意義

この記事では、不飽和結合について、具体例を交えて解説してきました。不飽和結合の概念は、有機化合物の構造や性質を考察する上で、必要不可欠なものになっています。また、今回紹介した油の例のように、化学以外の分野でも、不飽和結合の理論は用いられていますよ。

不飽和結合について学ぶことで、化学の知識が身につくだけでなく、食品開発などに関わる雑学も知ることができるのです。ぜひ、この機会に不飽和結合についての理解を深めてみてくださいね。知っておいて損をすることは決してないことでしょう。

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化学有機化合物物質の状態・構成・変化理科生活と物質高分子化合物

3分で簡単不飽和結合!二重結合との関係や特徴を理系学生ライターがわかりやすく解説!

油と不飽和結合の関係性

ここからは、不飽和結合に関連する身近な話題をご紹介します。不飽和結合に関連のある話題は、数多くありますが、今回はそれらの中で最も身近であると考えられる油についての話をしますね

油が用いられる場面は、料理だけではありません油は化粧品の製造にも使用されますし、自転車のギアやチェーンに塗る潤滑油も油の一種ですよね。油は、今日における私たちの生活に必要不可欠なものなのです。

それでは、先ほど説明した不飽和結合の説明を意識しながら、以下の説明を読み進めてみてください

植物油と動物油

image by iStockphoto

油は、植物由来の植物油動物由来の動物油に大別できます。植物油の例としては、オリーブオイルごま油が挙げられますよね。また、動物油の例としては、牛脂ラード(豚脂)が挙げられます。これらの違いを化学構造に注目して考察してみましょう

油の正体は、油脂と呼ばれる有機化合物で、油脂はグリセリンと3つの脂肪酸の結合によって構成されています。そして、植物油を構成する脂肪酸に含まれている不飽和結合の数は、動物油を構成する脂肪酸に含まれる不飽和結合の数よりも多いことが知られていますよ

一般的に、不飽和結合が多い有機化合物は、融点が低くなりますよ。ですから、動物油よりも植物油のほうが融点は低くなります。このことは、常温でオリーブオイルが液体である一方で、牛脂が固体であることから実感できますよね

硬化油

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バターを構成する物質は乳脂肪です。乳脂肪は、原料のミルクに多く含まれています。そして、乳脂肪は動物油の一種ですから、バターは常温で固体です。バターに似た調味料にマーガリンがあります。マーガリンも常温で固体なので、マーガリンの原料も動物油のように思われますよね。ですが、マーガリンの原料はコーン油、大豆油などの植物油です。では、なぜマーガリンは常温で固体なのでしょうか

実は、マーガリンに含まれる油は硬化油と呼ばれる特殊なものになっています硬化油は、植物油に含まれる不飽和結合の一部を、付加反応によって無くすことで人工的に動物油のような構造を作ったものですよ。以上のような理由で、マーガリンは植物油を原料としているにも関わらず、常温で固体なのです。しかしながら、バターの風味をマーガリンで完全に再現することは困難ですよ。

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