油と不飽和結合の関係性
ここからは、不飽和結合に関連する身近な話題をご紹介します。不飽和結合に関連のある話題は、数多くありますが、今回はそれらの中で最も身近であると考えられる油についての話をしますね。
油が用いられる場面は、料理だけではありません。油は化粧品の製造にも使用されますし、自転車のギアやチェーンに塗る潤滑油も油の一種ですよね。油は、今日における私たちの生活に必要不可欠なものなのです。
それでは、先ほど説明した不飽和結合の説明を意識しながら、以下の説明を読み進めてみてください。
植物油と動物油
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油は、植物由来の植物油と動物由来の動物油に大別できます。植物油の例としては、オリーブオイルやごま油が挙げられますよね。また、動物油の例としては、牛脂やラード(豚脂)が挙げられます。これらの違いを化学構造に注目して考察してみましょう。
油の正体は、油脂と呼ばれる有機化合物で、油脂はグリセリンと3つの脂肪酸の結合によって構成されています。そして、植物油を構成する脂肪酸に含まれている不飽和結合の数は、動物油を構成する脂肪酸に含まれる不飽和結合の数よりも多いことが知られていますよ。
一般的に、不飽和結合が多い有機化合物は、融点が低くなりますよ。ですから、動物油よりも植物油のほうが融点は低くなります。このことは、常温でオリーブオイルが液体である一方で、牛脂が固体であることから実感できますよね。
硬化油
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バターを構成する物質は乳脂肪です。乳脂肪は、原料のミルクに多く含まれています。そして、乳脂肪は動物油の一種ですから、バターは常温で固体です。バターに似た調味料にマーガリンがあります。マーガリンも常温で固体なので、マーガリンの原料も動物油のように思われますよね。ですが、マーガリンの原料はコーン油、大豆油などの植物油です。では、なぜマーガリンは常温で固体なのでしょうか?
実は、マーガリンに含まれる油は硬化油と呼ばれる特殊なものになっています。硬化油は、植物油に含まれる不飽和結合の一部を、付加反応によって無くすことで人工的に動物油のような構造を作ったものですよ。以上のような理由で、マーガリンは植物油を原料としているにも関わらず、常温で固体なのです。しかしながら、バターの風味をマーガリンで完全に再現することは困難ですよ。
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