タンパク質と生物体の機能有機化合物物質の状態・構成・変化理科生物高分子化合物

5分でわかるタンパク質の「失活」身近にもある失活現象とともに現役理系大学院生が解説!

よぉ、桜木建二だ。今回のテーマは「失活」だ。一言に「失活」といっても分野によって意味合いは変わってくるが、
生物分野では主に酵素(タンパク質)が機能を失うことを失活と呼んでいる。タンパク質の失活は生体内の代謝の調節や食品加工などにも使われる身近な現象だ。
生物に詳しい現役理系大学院生ライターCaoriと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

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ライター/Caori

国立大学院の博士課程に在籍している現役の理系大学院生。とっても身近な現象である生命現象をわかりやすく解説する「楽しくわかりやすい生物の授業」が目標。

生物分野での失活とは

image by iStockphoto

「失活」とは広義では化学物質などの活性が失われ、反応を起こさなくなることです。「失活」の定義は分野によって異なりますが、生物の分野では主に酵素(タンパク質)がその機能を失うことを「失活」と呼びます

酵素が失活する主な要因は大きく分けて3つ。1つめはタンパク質の高次構造の変化。2つめは酵素の活性に必要な補因子の欠失。3つめは酵素学的な制御による失活です。タンパク質の立体構造が変化することを「変性」といい、一般的には変性によってタンパク質が活性を失うことを「失活」といいます。正確には変性と失活は異なりますが、タンパク質は変性すると失活を伴うため、同じ意味として用いられることも多いです。

タンパク質の構造

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NHGRICourtesy: National Human Genome Research Institute, パブリック・ドメイン, リンクによる

「失活」を解説するために、まずはタンパク質の構造について説明しておきますね。タンパク質の構造は4つの層に分けられます。まず、一次構造はアミノ酸がペプチド結合で鎖状に結合した配列です(ポリペプチド鎖)。二次構造は近くにあるペプチド結合同士が水素結合を形成して、らせん状のα-ヘリックス構造とシート状のβ-シート構造の2種類の局所的な副構造からなります。

三次構造は、疎水性残基が水と反発して内側に潜ろうとする力によって進み、比較的離れたアミノ酸同士が、水素結合、疎水結合、イオン結合、ジスルフィド結合などにより全体が折りたたまれた立体構造です。四次構造 は、いくつかのポリペプチド鎖の三次構造が相互作用により複数会合したもので、四次構造を形成するそれぞれのポリペプチド鎖をサブユニットと言います。

変性による失活

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タンパク質の活性はその立体構造と深い関わりを持っていて、三次構造・四次構造によって決定されています。加熱や冷却などの温度変化、pHの変化などは立体構造を作り出している水素結合、疎水結合、イオン結合、ジスルフィド結合を破壊してしまうのです。このため、二次構造~四次構造(立体構造)を維持できなくなり、タンパク質は「変性」します。身近な例では、生卵を茹でると固まってゆで卵になりますよね。これは卵のタンパク質が加熱により変性しているためです。変性により構造が変わることで、タンパク質はその機能を失い「失活」します。

ゆで卵のように一度変性してしまうと、二度と元の状態へ戻られないタンパク質も多数存在しますが、変性では一次構造は変化しません。このため、一定の条件下でのタンパク質の変性は可逆的で再活性化する場合があることが最近の研究で報告されています。

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「タンパク質 失活」のキーワードで検索をすると上記の「タンパク質の変性による失活」だけを解説しているメディアやサイトがかなりの割合を占める思う。もちろん情報として正しいが、実は酵素の失活には他にも重要な要因があるんだ。次の項目で解説するぞ。

酵素の失活

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酵素とは、生体内で起こる化学反応を触媒する働きをもつタンパク質です。酵素はタンパク質だけで構成される場合もあれば、金属イオンや有機化合物などの酵素の活性にタンパク質以外の補因子を含むものがあります

補因子は2種類あり、1つめは金属イオン(鉄や亜鉛など)などタンパク質と共有結合などで直接結合している分子(補欠分子族)。2つめは有機化合物(ビタミンなど)などタンパク質と可逆的に遊離する因子(補酵素)です。酵素と補酵素の結合はゆるく、簡単に外れてしまう上に、酵素反応の進行にともない消費されていきます。補因子を含む酵素は補因子がなければ活性を発現することができません。つまり、補酵素を失った酵素は失活しています。この場合、補因子が追加で提供されると活性を取り戻すので不可逆的な現象です。

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