この記事では「及第点」について解説する。

端的に言えば及第点の意味は「合格基準を満たしている点」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「及第点」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「及第点」の意味や語源・使い方まとめ

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「及第点」の読み方は「きゅうだいてん」です。ビジネスシーンでは、上司が部下に「君の今回のレポートは及第点だ」と伝えるといった使い方を見かけます。さてこの場合、上司の言葉にどのように反応するのが正しいのでしょうか。

今回は間違った解釈をしている人も多い「及第点」について、詳しく解説します。それでは早速「及第点」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「及第点」の意味は?

「及第点」には、次のような意味があります。

1.試験や審査などで、合格できる最低点
2.  一定の基準に達していること

出典:デジタル大辞泉(小学館)「及第点」

「及第点」は合格基準点がはっきりある場合と、基準があいまいな場合いずれにも使える言葉です。基準が明示されるのは試験や検定など、後者はビジネスシーンや仕事ぶりなどについて使われることが多いですね。どちらの場合も十分に基準を満たしているわけではなく、かろうじて超えているという状態を表します。相手はもう少し高い成果を望んでいることが多いので、「及第点」をとれたからといって満足することなく、次は「及第点」以上を達成する意気込みが期待されていることを知っておきましょう。

「及第点」の語源は?

次に「及第点」の語源を確認しておきましょう。

「及第点」の元になっている「及第」中国語由来の言葉です。中国語の「及」にはは「届く」と言う意味が、「第」には「大きな屋敷」という意味があります。この2文字が重なることで、「及第」は「科挙に象徴される中国の官僚試験等に合格すれれば、大きな屋敷に手が届く」という意味を持つようになりました。

「及第」に「点」をつけた「及第点」は、「及第するために必要な点数」という意味で使われ始めたのが始まりです。

\次のページで「「及第点」の使い方・例文」を解説!/

「及第点」の使い方・例文

使い方に配慮が必要な「及第点」は、例文を使って理解を深めていきましょう。たとえば以下のように用いられます。

1.今回の社会学の試験は、及第点だった。進級してからも頑張りたまえ。
2.英検の自己採点をしたら、及第点だった。二次試験に進めるだろうか。
3.先日の会議でのプレゼンは及第点をとれたな。次回も頼むぞ。
4.私の料理の腕前は、ホームパーティを開くには及第点だろう。

「及第点」を合格基準が明確か曖昧か、人に言われるか・自分で言うかという点で分類し、4つの例文を示しました。

例文1は「合格点が明確で・他人に言われた場合」です。大学の教授が学生に試験結果が「ギリギリ合格点だった」と伝えています。合格とはいえギリギリだったため、教授は次に向けて発破をかけているのですね。

例文2は「合格点が明確で・自分が言う場合」を示します。英検を受け、自己採点した結果は「及第点」、つまりギリギリ合格できそうだということが分かりますね。

例文3は「合格基準は曖昧・他人に言われた場合」です。ビジネスシーンではこの使い方が最も頻度高く登場します。上司は部下の仕事ぶりを日頃から見ていて、合格評価を出したということですね。

例文4は「合格基準は曖昧・自分で言う場合」です。ホームパーティを開くということは手料理をふるまうということですが、自分なりの基準で合格という判断だという意味を表します。

「及第点」の類義語は?違いは?

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「及第点」と同じ意味を持つ言葉には、どのようなものがあるでしょうか。見ていきましょう。

その1「合格点」

「及第点」と同じように熟語になっている類義語には「合格点」があります。「及第点」と同じように合格基準に達する点数と言う意味ですが、「及第点」にあるようなギリギリ・かろうじてといったニュアンスは「合格点」にはありません。むしろ合格を祝うポジティブな気持ちも込められる言葉なので、他人に対しても遠慮なく使えます。

\次のページで「その2「まずまずの出来」」を解説!/

その2「まずまずの出来」

「及第点」のギリギリ合格というニュアンスを表現すると、「まずまず」といった表現が使えます。熟語としての類語は「合格点」だけですので、他の表現をしたい場合はこのように説明的に伝えましょう。「まずまずの出来」のほかにも、「そこそこ」「まずまず」「相応」といった表現も使えますね。

「及第点」の対義語は?

「合格基準に達する」という意味の対義語は「合格基準に達していない」ということになります。「及第点」の対義にになる言葉を見てみましょう。

その1「落第点」

「合格点に達しない」という意味は「落第点」で表せます。落第とは「第に落ちる」、つまり不合格という意味ですね。同じように「不合格点」「赤点」という表現も使えます。

その2「及第点に及ばない」

「合格基準に及ばなかった」「思うような結果を残せなかった」と言いたいときは「及第点に及ばない」という表現も使えます。合格に向けて努力をしたが、わずかに力不足だったというニュアンスが感じられる表現です。

「及第点」の英訳は?

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試験に合格する、一定の基準に達するという概念は世界共通のはず。英語で「及第点」はどのように表現するのでしょうか。

\次のページで「「passing mark」」を解説!/

「passing mark」

英語で「及第点」を表現したいときは「passing mark」と言います。「passing grade」でも良いでしょう。

「passing」は動詞「pass」が転じたもので、「合格する、(課題を)クリアする」という意味があります。「mark」は評価の基準になるもの、「grade」はグレード、つまり段階です。

「passing mark」で「合格基準をクリアする」「passing grade」で「合格段階に達する」という意味になります。

What are the pass-marks?
「及第点は何点ですか?」

「及第点」を使いこなそう

この記事では「及第点」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「及第点」は少々古めかしい言い方なので、あまり聞いたことがないという方も多いかもしれません。しかし聞かないから意味を知らずに、上司から「及第点だぞ」と言われたときに喜んでいたりしては恥をかくことになります。

「及第点」は「合格はしたがギリギリで、次の飛躍を期待されている」という意味だとしっかり把握し、次に同じことを言われることが無いよう努める姿勢が大切です。

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国語言葉の意味

「及第点」の意味や使い方は?例文や類語、間違えやすい解釈などを元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「及第点」について解説する。

端的に言えば及第点の意味は「合格基準を満たしている点」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「及第点」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「及第点」の意味や語源・使い方まとめ

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「及第点」の読み方は「きゅうだいてん」です。ビジネスシーンでは、上司が部下に「君の今回のレポートは及第点だ」と伝えるといった使い方を見かけます。さてこの場合、上司の言葉にどのように反応するのが正しいのでしょうか。

今回は間違った解釈をしている人も多い「及第点」について、詳しく解説します。それでは早速「及第点」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「及第点」の意味は?

「及第点」には、次のような意味があります。

1.試験や審査などで、合格できる最低点
2.  一定の基準に達していること

出典:デジタル大辞泉(小学館)「及第点」

「及第点」は合格基準点がはっきりある場合と、基準があいまいな場合いずれにも使える言葉です。基準が明示されるのは試験や検定など、後者はビジネスシーンや仕事ぶりなどについて使われることが多いですね。どちらの場合も十分に基準を満たしているわけではなく、かろうじて超えているという状態を表します。相手はもう少し高い成果を望んでいることが多いので、「及第点」をとれたからといって満足することなく、次は「及第点」以上を達成する意気込みが期待されていることを知っておきましょう。

「及第点」の語源は?

次に「及第点」の語源を確認しておきましょう。

「及第点」の元になっている「及第」中国語由来の言葉です。中国語の「及」にはは「届く」と言う意味が、「第」には「大きな屋敷」という意味があります。この2文字が重なることで、「及第」は「科挙に象徴される中国の官僚試験等に合格すれれば、大きな屋敷に手が届く」という意味を持つようになりました。

「及第」に「点」をつけた「及第点」は、「及第するために必要な点数」という意味で使われ始めたのが始まりです。

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