
簡単にいうと、刺激が右からきても左からきても、上からでも下からでも、同じ動きで反応するということ。後述しますが、今回のテーマのもう一つである「屈性」のほうは、刺激の与えられた方向によって植物体の動く向きが決まるのです。
傾性は、その刺激源に応じていくつかの種類に分けられます。以下に、代表的なものをピックアップしてご紹介していきましょう。
傾光性
傾光性(けいこうせい)は、光の強さの変化を刺激として運動が引き起こされる性質です。強い光が当たったり、反対にそれまで当たっていた光が弱くなっていくことで、植物の動きが促されます。
この傾光性で最もわかりやすい例が、花の開閉でしょう。タンポポの花を一日中観察していると、明るくなって花が開き、暗くなると花が閉じていく様子が確認できます。どの方向から光が当たっても、「花が開く、閉じる」の向きは変わりませんので、傾光性であるといえるのです。

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また、傾光性が葉の開閉でも見られるものがあります。ネムノキやハギ、カタバミの葉などは、朝になると葉を開き、夕方には葉を閉じてしまうことが知られていますね。これも、光の変化で一定の運動が引き起こされる、有名な傾光性の例です。
傾触性
接触の刺激に反応して運動が引き起こされる性質を傾触性(けいしょくせい)といいます。
例えば、オジギソウを触ると起きる葉の開閉。接触の刺激によって水分の移動が引き起こされ、葉が閉じるとともに葉柄が下に下がります。触る方向を変えても、この運動の方向(葉が閉じ、葉柄が下垂する)は変わりません。

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また、食虫植物として知られるモウセンゴケの運動も、傾触性の良い例です。葉(捕虫葉)の腺毛に昆虫などが触れると、葉が屈曲し、獲物を包み込んでしまいます。これも、腺毛に触れる方向によって葉の屈曲の向きが変わるわけではありませんよね。
傾熱性
気温の上昇や加工など、温度変化によって運動が引き起こされるのが傾熱性(けいねつせい)です。
教科書などでは、よくチューリップの例が挙げられます。チューリップの開花は、気温の上昇によって引き起こされるのです。これは、気温の温かい時間が続くと、花弁(花びら)の外側の細胞より、内側の細胞の方が速く伸長することで起きるといわれています。
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