この記事では「バイラル」について解説する。

端的に言えばバイラルは「ウイルス」「ウイルス性の」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系の記者を10年経験したライター・にべこを呼んです。一緒に「バイラル」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/にべこ

某大手情報誌の記者を務め、その後フリーライターに。ビジネス用語ならおまかせ。さまざまなシーンで使えるカタカナ言葉を噛み砕いてご紹介。

「バイラル」の意味や語源・使い方まとめ

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今回は「バイラル」という言葉についてご説明していきます。「ウイルス性のある」「感染力がある」という意味で使われる言葉ですが、実は「バイラル」という単語のみで使われることはあまりなく、もっぱら「バイラルマーケティング」などのマーケティング用語として用いられることがほとんどです。「バイラルマーケティング」は、最近注目されているマーケティング手法。多くのマーケターがこのバイラルマーケティングを研究し、仕掛けています。

この記事ではこの「バイラルマーケティング」を中心に、「バイラル」という言葉の意味や使い方をご紹介していくことといたしましょう。

「バイラル」の意味は?

「バイラル」には、次のような意味があります。

1.ウイルス性であること。「バイラルインフェクション(=ウイルス感染)」
2.口コミによるもの。「バイラルメディア」「バイラルマーケティング」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「バイラル」

InstagramやTwitterなどのSNSやキュレーションサイトなど、Web上において拡散力を持つサービスやメディアを利用して行う市場活動や販売戦略を「バイラルマーケティング」と呼びます。これは、ある商品やサービスを利用した消費者が友人や知り合い、SNSのフォロワーなどに紹介し、それが口コミとなって広まるのを狙ったプロモーション手法のことです。ウイルスが人から人へ感染し拡がっていく様子に例えて名付けられたのだとか。

SNSでの拡散や口コミでの情報の伝播は、企業からのコマーシャル広告に比べよりリアリティと説得力のあるメッセージとして受け入れられやすいとされています。

「バイラル」の語源は?

「バイラル」の語源は英語の「viral」。元々はウイルスを意味する「virus」から派生した言葉です。ちなみに日本ではウイルスと読みますが、正しい発音はvάɪ(ə)rəsで、[v]の音から始まる「ヴァイラス」のような音になります。

ちなみに「バイラルマーケティング」という表現を初めて用いたのは、アメリカの有名ベンチャーキャピタル企業DFJ社のキャピタリストであるスティーブ・ジャーベットソン。このマーケティング方法のメカニズムを説明する際、「ウイルス感染のような広がりを見せる」という様子をあらわすため用いたのだとか。

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「バイラル」の使い方・例文

それでは次に、「バイラル」の使い方や類語・関連語を、例文を使って見ていきましょう。

1.SNSで口コミマーケティングを実施する際、誰かに伝えたいと思わせるバイラルコンテンツでなければ拡散されることなく他の情報に埋もれる可能性がある。
2.オンライン動画配信でマーケティング実績を上げるためには、バイラル現象を起こしやすい内容の動画制作をする必要がある。
3.急成長するサービスのキーワードとして挙げられるのが、ユーザーがすぐにシェアをできるようなバイラル機能を備えていること、いわゆるバイラリティの充実だ。
4.あるプロダクトの既存ユーザーからどれだけ新規ユーザーが生み出されたかを測る数字をバイラル係数と呼ぶ。

上記例文を見てもわかるように、「バイラル」という言葉の使い方は多様ではありますが「バイラル」単体で使われることはほぼありません。

「バイラル」の類義語は?

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それでは「バイラル」の類義語にはどのようなものがあるか、代表的なものをご紹介していきましょう。

「バイラルコンテンツ」

「え、何それ?!」と気になり、「他の人にも教えたい!」と思わせる魅力的な情報(コンテンツ)は、それだけで「バイラルコンテンツ」となります。バイラルコンテンツはインターネット上で見かける情報だけには限らず、テレビや雑誌などの各メディア、店頭やイベントなど様々ですが、ただしそれを他者に教える方法として用いられるのがSNSや口コミサイトなどのインターネット。こういった感染源となるコンテンツを意図的に作り込み、バイラルな広がりを仕掛けていくことが「バイラルマーケティング」なのです。

「バイラルメディア」

ユーザーの興味をひくような情報を掲載し、InstagramやTwitterなどのSNSで拡散させることを目的としたキュレーションサイトやブログなどのメディアを「バイラルメディア」と呼びます。インパクトのある画像やタイトルなどをつけたり、話題性のある旬な記事を取り上げたりすることなどで多くのユーザーをひきつけ、さらにいいねボタンやシェアボタンなどの機能を備え、ユーザーが簡単に高評価や拡散がしやすいように作られているのが特徴です。

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「バズマーケティング」

関連語として「バズマーケティング」という言葉があります。「バズる」という言葉はすでに馴染みがあるのではないでしょうか。「バイラル」はウイルスのように感染して広がるというイメージですが、対して「バズ」とは皆が集まってガヤガヤと話している感じを、ミツバチが集まってブーンと羽音を鳴らしている様子に例えて生まれた言葉です。

SNSを中心としたコンテンツマーケティングという意味では「バイラルマーケティング」同様ですが、「バスマーケティング」はインターネット上だけでなく人伝えの噂や話題なども含まれます。例えば店頭や路上などでのデモンストレーションやパフォーマンスなどもバズマーケティングの一環です。

また、「バズマーケティング」には「インフルエンサー」の存在が重要。「インフルエンサー」とは人気と共に発信力や訴求力の高い旬の有名人のことで、その人が使っている商品というだけで口コミは爆発的に広まっていきます。そのため、インフルエンサーありきで口コミ拡散を狙っていくマーケティング手法を「インフルエンサーマーケティング」と呼ばれることも。

「バイラルマーケティング」の対義語は?

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「バイラルマーケティング」の明確な対義語はありませんが、対の手法として語られることが多いのは「ステルスマーケティング」ではないでしょうか。

「ステルスマーケティング」

「ステルスマーケティング」は、消費者に対して宣伝であると悟られないように行う宣伝のことです。発信する側は、まるでその商品やサービスとは直接の利害関係はないといった風を装い、実際に使用したレビューといった体裁で高評価の紹介を行います。そのため、実際のレビューであり発信側に評価を一任しているバイラルマーケティングとは違い、マーケティングの印象操作をしやすいのが特徴です。ですがそれが発覚した時には「消費者を欺いている」という印象を持たれ、批判・炎上に繋がりやすいとされています。

「バイラルマーケティング」事例

「バイラルマーケティング」の主なメリットは、低コストな上に伝達力が高いという点が挙げられます。そして消費者にとっては「あの人が紹介しているのだから良いものだ」という価値を感じられること、さらに流行の最先端や最新の情報に触れているという高揚感があることです。

ですがメリットばかりではありません。デメリットは、なんといっても狙いが外れるかもしれないリスクを抱えていること。ある程度仕掛けをしているものの、消費者の口コミはやはり自然発生的なもであり、どのような形で広がるか、それとも広がらないのか、効果の予測や、コントロールが困難です。もしかしたら悪い噂を書き込まれるなんてこともあるかも知れません。やり方を間違うと炎上してしまうこともあり得るので、慎重な事前調査が必要なのです。さらに、せっかく話題になったとしてもそれが継続しないのでは意味がありません。長く人の興味と関心をひきつける手法もまた必要不可欠です。

それでは実際の「バイラルマーケティング」の事例を成功例・失敗例ともにそれぞれ見ていきましょう。

成功例1.Hotmail

Hotmail社が1996年7月から始めた、ウェブ上での無料電子メールサービス「Hotmail」。サービス開始後わずか18カ月でユーザー数は1200万人以上にものぼり、一躍世界最大のWebメールプロバイダとなりました。

Homail社は、ユーザーがメールの文章を書くテキストエリアにあらかじめ「P.S. Hotmailで無料電子メールを入手しよう」というメッセージとURLをプリセット。メールを送信するたびに送信相手に向かって無意識のうちに宣伝広告を行うという仕組みを作りました。これはアメリカの有名ベンチャーキャピタル企業DFJ社のキャピタリストであるティム・ドレイパーの案によるものです。これによりHomail社は、宣伝のコストをほとんどかけず、短期間のうちにウェブ上のフリーメールのカテゴリーにおいて世界シェアNo.1となりました。

\次のページで「成功例2.コカ・コーラ」を解説!/

成功例2.コカ・コーラ

コカ・コーラ社が行った「Share a Coke」というネームボトルキャンペーンは、バイラルマーケティングの成功例として有名なものです。これはオーストラリアの広告代理店オグルヴィ社発案によるもので、通常サイズのボトルには「Emma」や「Justin」などのマーケティングの主なターゲットゾーンである若年層に多い人名を、大型ボトルには「Family」「Frends」、缶には「Buddy(相棒)」「Bestie(親友)」などの人間関係を表す文字を印字しました。消費者が自分の名前や誰かとの関係性を表したボトルを手に写真を撮りSNSにアップするという動きと、その拡散効果を狙ったのです。

これは2011年からオーストラリアで始まり、その大成功を受けアメリカや日本など世界70ヵ国以上に波及しました。その後、企業やイベントなどに合わせた印字も増え、さまざまなシーンにコカ・コーラが登場するようになりました。

成功例3.江崎グリコ

日本企業もバイラルマーケティングを活用し成功を収めています。それが「ポッキー」や「プリッツ」などでお馴染みの江崎グリコ。毎年11月11日を「ポッキー&プリッツの日」と定め、2013年11月11日には「カウトダウン1111イベント」を展開しました。24時間以内にTwitter上でつぶやかれた「ポッキー」を含む投稿数の、ギネス新記録に挑戦するというものです。目標は200万ツイートとしていましたが、結果は目標をはるかに上回る371万44ツイートを記録し、晴れてギネス認定。江崎グリコはこのイベントにより、この年のポッキーとプリッツの売上高を前年同期比で3割以上も増やしたのです。そして「11月11日はポッキー&プリッツの日」という認識も瞬く間に浸透し、その後の持続的な消費者の購買意欲の促進にもつながっています。

失敗例1. 某携帯音楽プレーヤー

次は失敗例をご紹介しましょう。某有名オーディオメーカーが製作している携帯音楽プレーヤーは、それまで当カテゴリー内では不動のトップセールスを誇る製品だったのでした。しかし、林檎のマークでお馴染みの海外大手企業が発売した画期的な音楽プレーヤーの登場により、勢力図が大きく書き換えられたのです。

某オーディオメーカーは起死回生のための新製品を発売するにあたり、2005年11月に広告戦略としてブログを開設。ブログ上に一般消費者の使用レビューを掲載することで、口コミ効果の拡散を狙いました。しかしそのレビュー文章や掲載画像には「本当に一般モニターなのか?」と思われるような不自然さ違和感が目立ったこと、さらになぜか一様に例の海外企業製品を批判するような文章が織り込まれていたため、読者も次第に不審に思うように。ブログにはやらせを指摘するコメントや批判コメントが多数集まるようになり、たちまち炎上化しました。そしてオープンから数日ではありましたが企業はついにこのブログを閉鎖してしまったのです。

その後企業はやらせを否定するコメントを発表はしたものの、一度広まってしまった悪い噂は完全に消すことはできず、結果的にバイラルマーケティング失敗の代表のような事例となってしまいました。

失敗例2. 米国某ファーストフード

アメリカの某有名ファーストフードチェーンも、このバイラルマーケティングの動向をコントロールしきれず失敗に終わらせています。この企業は2012年、Twitterで特定のハッシュタグと共に「幼い頃の当店での思い出」をつぶやいてもらうというキャンペーンを打ち出しました。企業としては、「楽しかった思い出のそばにはいつもこのファーストフードがあった」などといった、素敵なエピソードを拡散してもらうことで購買意欲の促進を狙ったのです。

しかし残念なことに、集まったつぶやきは「フライドポテトを6ヶ月放置しても腐らなかった」「店にネズミがいた」などといった、商品の安全性や衛生面に疑問を持たれるようなショッキングかつネガティブなものばかり。店側はもちろん否定したものの、信憑性の有る無しに関わらずそういった刺激的な書き込みは拡散されるのも早く、結果的にこのキャンペーンは大炎上し企業の思惑とは正反対の方向へ。バイラルマーケティングのリスキーさを表すお手本のような事例となってしまいました。

「バイラル」を使いこなそう

この記事では「バイラル」の意味・使い方・類語などを説明しました。急成長するサービスや売れる商品の背景には巧みなマーケティングが伴っていて、その手法の一つの概念として「バイラル」「バイラリティ」という言葉があるということですね。

しかしそれも、そのサービスや商品自身の魅力があってこそ。人が今何を欲しているのか、しっかりとリサーチしたうえでのプロダクトやコンテンツ作りが求められています。

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国語言葉の意味

「バイラル」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「バイラル」について解説する。

端的に言えばバイラルは「ウイルス」「ウイルス性の」という意味ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系の記者を10年経験したライター・にべこを呼んです。一緒に「バイラル」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/にべこ

某大手情報誌の記者を務め、その後フリーライターに。ビジネス用語ならおまかせ。さまざまなシーンで使えるカタカナ言葉を噛み砕いてご紹介。

「バイラル」の意味や語源・使い方まとめ

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今回は「バイラル」という言葉についてご説明していきます。「ウイルス性のある」「感染力がある」という意味で使われる言葉ですが、実は「バイラル」という単語のみで使われることはあまりなく、もっぱら「バイラルマーケティング」などのマーケティング用語として用いられることがほとんどです。「バイラルマーケティング」は、最近注目されているマーケティング手法。多くのマーケターがこのバイラルマーケティングを研究し、仕掛けています。

この記事ではこの「バイラルマーケティング」を中心に、「バイラル」という言葉の意味や使い方をご紹介していくことといたしましょう。

「バイラル」の意味は?

「バイラル」には、次のような意味があります。

1.ウイルス性であること。「バイラルインフェクション(=ウイルス感染)」
2.口コミによるもの。「バイラルメディア」「バイラルマーケティング」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「バイラル」

InstagramやTwitterなどのSNSやキュレーションサイトなど、Web上において拡散力を持つサービスやメディアを利用して行う市場活動や販売戦略を「バイラルマーケティング」と呼びます。これは、ある商品やサービスを利用した消費者が友人や知り合い、SNSのフォロワーなどに紹介し、それが口コミとなって広まるのを狙ったプロモーション手法のことです。ウイルスが人から人へ感染し拡がっていく様子に例えて名付けられたのだとか。

SNSでの拡散や口コミでの情報の伝播は、企業からのコマーシャル広告に比べよりリアリティと説得力のあるメッセージとして受け入れられやすいとされています。

「バイラル」の語源は?

「バイラル」の語源は英語の「viral」。元々はウイルスを意味する「virus」から派生した言葉です。ちなみに日本ではウイルスと読みますが、正しい発音はvάɪ(ə)rəsで、[v]の音から始まる「ヴァイラス」のような音になります。

ちなみに「バイラルマーケティング」という表現を初めて用いたのは、アメリカの有名ベンチャーキャピタル企業DFJ社のキャピタリストであるスティーブ・ジャーベットソン。このマーケティング方法のメカニズムを説明する際、「ウイルス感染のような広がりを見せる」という様子をあらわすため用いたのだとか。

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