この記事では「俯瞰的」について解説する。

端的に言えば俯瞰的の意味は「高いところから見下ろすこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

哲学、思想、政治に強い文系大学院生を呼んです。一緒に「俯瞰的」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/南原眞一

法学研究科にて哲学、思想、政治を学んでいる現役文系大学院生。本来の専門は20世紀辺りのドイツ政治思想。大衆に訴えかける能力があると指導教授に言われた筆致で言葉を丁寧に解説していく。

「俯瞰的」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「俯瞰的」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「俯瞰的」の意味は?

「俯瞰的」には、次のような意味があります。

高い所から見下ろし眺めること。鳥瞰。「ビルの屋上から市内を俯瞰する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「俯瞰」

俯瞰の読み方は「ふかん」です。それに性質や状態を意味する「的」を付け加えた「俯瞰的」という使われ方を見たことがある人は多いでしょう。しかし、最近「物事を俯瞰的にみなければならない」と言われる場面が多くなっていると思いますが、細かい意味になると答えられる人は意外にも少なくなるかもしれません。これを機に「俯瞰的」の正しい意味と用法を学んでいきましょう。

「俯瞰的」の語源は?

次に「俯瞰的」の語源を確認しておきましょう。ルネ・デカルトの「困難は分割せよ」とのアドバイスに則って、まずは「俯瞰的」を分けて考えてみましょう。

」は音読みすれば「ふ(す)」あるいは「うつむ(く)」となります。また、俯は日常生活だと「俯く」という形で見ることが多いかもしれませんね。「かがむこと、上体を前に曲げること」を意味します。

」は訓読みで「かん」と読み、意味は「見下ろすこと、上から見ること」、そして「眺める、遠くをみること」です。ここから、「瞰下」は「見下ろすこと」を、「瞰視」は「見下ろして視察すること」を意味しています。

「俯」も「瞰」も、上から下を見下ろすことを意味する漢字であり、同じ意味を続けることで上から下を見下ろす意味合いを強めた熟語だと言えるでしょう。

\次のページで「「俯瞰的」の使い方・例文」を解説!/

「俯瞰的」の使い方・例文

「俯瞰的」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.展望台から俯瞰して町並みを撮影する。
2.部長からプロジェクトを俯瞰的に見ろと指導される。
3.係長は視野が広く、全体像を俯瞰的に見るのがうまい。

俯瞰の意味が「高いところから見下ろすこと」でしたから、例文1は俯瞰のもっとも忠実な意味用法だと言えます。

とはいえ、我々が日常生活で見るのは例文2と例文3の用法かもしれません。「高いところから見下ろすこと」から転じて、関連のある物事を全体的に考慮することを意味しています。近くの物事をばかり見る近眼的思考方ではなく、遠いところから全体をみる俯瞰的思考方が我々には必要とされているのかもしれませんね。

「俯瞰的」の類義語は?違いは?

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俯瞰的の類義語には「鳥瞰」が考えられます。

「鳥瞰」

鳥瞰」と書いて「ちょうかん」と読みます。俯も瞰も「見下ろすこと」を意味していたので、鳥が見下ろしていることを鳥瞰は表していて、ほぼ俯瞰と置換可能であると考えて大丈夫です。例えば、以下のように用いられます。

\次のページで「「俯瞰的」の対義語は?」を解説!/

ドローンで全市を鳥瞰する。

ものごとを鳥瞰して計画を立てなさいと部長から言われた。

「俯瞰的」の対義語は?

俯瞰的の対義語としては、「仰視」と「偏狭的」が挙げられます。

「仰視」

俯瞰の意味が「上から下を見下ろすこと」でしたので、その対義語は「下から上を見上げること」を意味する仰視となります。まさしく「仰ぎ視る」ことですから、例えば、大仏を仰視する、というように使われることが多いです。

「偏狭的」

「上から下を見下ろすこと」というそもそもの意味から転じて、俯瞰的が全体を見渡すことを意味していたことは先述しましたが、この意味に対応する対義語は「偏狭的」が挙げられます。全体を見ずに、特定の状況や立場からしか、ものごとを見ないとき、その人は「偏狭的」と表現することが出来るでしょう。偏は「偏る」、狭は「狭い」という意味ですから、まさしくバランス感覚を欠いた発想を指すのに適しています。

「俯瞰的」の英訳は?

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俯瞰的の英訳としては幾つか考えられます。それぞれ確認していきましょう。

「a bird's-eye [overhead] view of」

上から下を見下ろすことを意味する俯瞰の意味を表す英訳としては、a bird's-eye view of が挙げられるでしょう。発想としては俯瞰の類義語として挙げた鳥瞰と近く、鳥が地上を見下ろす視点をそもそもは意味しています。bird's-eye の代わりに頭上を意味する overhead を用いることができることも覚えておきましょう。

\次のページで「「overlook」」を解説!/

「overlook」

俯瞰的が「全体を見渡すこと」を意味することは先述しましたが、その意味に対応する英語として overlook が挙げられます。overlook も「上から下を見下ろすこと」を意味しますが、俯瞰と同様に「全体を見ること」という意味もあり、その意味ではほぼ俯瞰と重なり合っているといって良いでしょう。しかし、俯瞰とは異なって、「大目に見る、見逃す」という意味もあることには注意しましょう。上から下を見下ろすと、どうしても注意がいかない部分が出てきます。部分に固執すると全体が見えなくなりますが、全体に固執すると部分が見えなくなることに我々は注意しなければならないでしょう。

「俯瞰的」を使いこなそう

この記事では「俯瞰的」の意味・使い方・類語などを説明しました。

俯瞰の意味は「上から下を見下ろすこと」ですが、その意味から転じて「全体を見ること、考慮すること」を意味するようになりました。日常生活だと、俯瞰は後者の意味合いで用いられることが普通でしょう。

人は俯瞰的になれ、と私たちに求めますが、全体を見ることは実は不可能であることは覚えておきましょう。というのも、全体を見ようとしても、実はそれは私から見た全体に過ぎないからです。常に自分の視点が相対的であることを自覚し、不断に視点を変更して全体を見ようと努力する。そうした無限の努力こそが、我々には必要なのでしょう。

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国語言葉の意味

「俯瞰的」の意味や使い方は?例文や類語を文系大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「俯瞰的」について解説する。

端的に言えば俯瞰的の意味は「高いところから見下ろすこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

哲学、思想、政治に強い文系大学院生を呼んです。一緒に「俯瞰的」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/南原眞一

法学研究科にて哲学、思想、政治を学んでいる現役文系大学院生。本来の専門は20世紀辺りのドイツ政治思想。大衆に訴えかける能力があると指導教授に言われた筆致で言葉を丁寧に解説していく。

「俯瞰的」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「俯瞰的」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「俯瞰的」の意味は?

「俯瞰的」には、次のような意味があります。

高い所から見下ろし眺めること。鳥瞰。「ビルの屋上から市内を俯瞰する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「俯瞰」

俯瞰の読み方は「ふかん」です。それに性質や状態を意味する「的」を付け加えた「俯瞰的」という使われ方を見たことがある人は多いでしょう。しかし、最近「物事を俯瞰的にみなければならない」と言われる場面が多くなっていると思いますが、細かい意味になると答えられる人は意外にも少なくなるかもしれません。これを機に「俯瞰的」の正しい意味と用法を学んでいきましょう。

「俯瞰的」の語源は?

次に「俯瞰的」の語源を確認しておきましょう。ルネ・デカルトの「困難は分割せよ」とのアドバイスに則って、まずは「俯瞰的」を分けて考えてみましょう。

」は音読みすれば「ふ(す)」あるいは「うつむ(く)」となります。また、俯は日常生活だと「俯く」という形で見ることが多いかもしれませんね。「かがむこと、上体を前に曲げること」を意味します。

」は訓読みで「かん」と読み、意味は「見下ろすこと、上から見ること」、そして「眺める、遠くをみること」です。ここから、「瞰下」は「見下ろすこと」を、「瞰視」は「見下ろして視察すること」を意味しています。

「俯」も「瞰」も、上から下を見下ろすことを意味する漢字であり、同じ意味を続けることで上から下を見下ろす意味合いを強めた熟語だと言えるでしょう。

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