この記事では「反芻」について解説する。

端的に言えば「反芻」の意味は「かみなおして再び飲み込むこと」と「くりかえし考え味わうこと」がある。また、心理学でも使われる言葉なんです。

小学校教諭として言葉の授業を何度もしてきた「こと」と一緒に、「反芻」の意味や使い方・語源・類語などを見ていこう。

ライター/こと

元小学校教諭のwebライター。先生や子どもたちから「授業が分かりやすい!」との定評があった教育のプロだ。豊富な経験を活かし、どんな言葉も分かりやすく解説していく。

「反芻」の意味と使い方

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では早速「反芻」の意味と使い方を見ていきましょう。

「反芻」の意味は「くりかえし考え味わうこと」

まずは、「反芻」の意味を辞書で確認します。

1. 一度飲み下した食物を口の中に戻し、かみなおして再び飲み込むこと。

2.繰り返し考え、よく味わうこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「反芻」

1は、牛などの動物が食べ物を咀嚼する過程で一度胃の中に入ったものを再び口の中に戻し、かみなおして再び飲み込むことです。2は、1の意味から転じて言葉や経験についてくり返し考えよく味わうことを意味しています。

日常会話で「反芻」という言葉が出てきた場合は、動物の話をしていない限り2の意味で使われていることが多いのではないでしょうか。

「反芻」の使い方を例文を紹介

では「反芻」の使い方を例文で紹介しましょう。

\次のページで「「反芻」の語源は?」を解説!/

1.牛などの動物は一日の大半を、食物である草を反芻して暮らしている。
2.先生に言われた言葉の意味を、昨日から反芻して過ごしている。
3.この経験ができたことは大変喜ばしく、反芻せずにはいられない。

1は元々の意味で、動物が 一度飲み下した食物を口の中に戻し、かみなおして再び飲み込むことの意味で使った例文です。2と3は、元の意味から転じた意味で使われていますね。言葉や経験についてくり返し考え、よく味わうことを表しています。

「反芻」の語源は?

次に「反芻」の語源を探っていきましょう。

「反芻類」の草食動物の消化の様式

「反芻」の語源は、辞書の記述にもあるように、もともとはウシなどに代表される「反芻類」に属する草食動物の消化の様式を表す言葉でした。彼らは噛み直すことでより細かく砕き、唾液によりさらに消化させることができます。

それが転じて、動物が食べたものを反芻するように「物事をくり返し考える」という意味でも使われるようになったのです。

「反」と「芻」の漢字の意味

「反芻」の熟語に使われる「反」と「芻」の漢字。それぞれの意味を、ここで確認しておきましょう。

まず「反」は「かえす、そむく、そる」という意味の漢字。「反対」のこと全般を意味しています。「芻」は「秣(まぐさ:牛や馬の飼料とする草)」という意味の漢字。家畜の餌として刈り取った草のことです。2つを合わせると「秣を反す」となり、「牛が秣を反す=吐く」という意味になるのですね。

\次のページで「「反芻」に関する豆知識」を解説!/

「反芻」に関する豆知識

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「反芻」の意味や語源がよく分かったところで、ここでは「反芻」に関する豆知識を紹介しましょう。

反芻動物の仕組み

反芻を行う動物を反芻動物と言います。代表的なものは、ウシ・ヤギ・ヒツジ・キリンなどでしょうか。なんと反芻動物の胃は4つ。第1~3の胃は、人間の食道に近い役割を果たしています。1~3の反芻の間、胃や腸内にいる微生物を増やして飼料の繊維成分を容易に消化できるようにしているのです。そして、第4の胃で消化・吸収を行ってます。 

ちなみに、4つの胃にはそれぞれ別の名前が。 1番目の胃はミノ、2番目の胃はハチノス、3番目の胃はセンマイ、4番目の胃はギアラです。

心理学での「反芻」とは?

心理学でも「反芻」を使った「反芻思考」という言葉があります。「反芻思考」とは何度もネガティブな出来事を思い出し、悩み続けて抑うつ気分を増長させる考え方のことです。ネガティブなことを何度も思い出して落ち込む行動は、動物の反芻に似た反復行動ですよね。そこから、反芻思考と呼ばれるようになりました。

反芻思考は医学的には「抑うつ的反芻」と呼ばれており、うつ病や不安障害、強迫性障害などとも関係があるようです。ただ、次は同じ失敗をしないようにしたいという前向きな気持ちに起因する「反芻思考」もあります。

「反芻」の類語

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「反芻」の類語には、どんな言葉があるのでしょうか。「反芻」と同じように、消化の方法の意味とそこから転じた意味の2つを持つ言葉を見てみましょう。

「噛み砕く」:噛んで砕く・難しいことを分かりやすくする

まずは「噛み砕く(かみくだく)」です。1つ目の意味は、そのまま「噛んで砕くこと」になります。噛んだ結果として砕くことになるので、噛む動作が強く、徹底することになりますね。

またそこから転じて、「難しいことを分かりやすくする」という意味もあります。

\次のページで「「咀嚼」:噛むこと・言葉の意味をよく考えて味わう」を解説!/

「咀嚼」:噛むこと・言葉の意味をよく考えて味わう

次は「咀嚼(そしゃく)」です。「咀嚼」と「反芻」は、どちらも「食物をよく噛むこと」が原義。ただ「反芻」は「1度飲み込んだものを、再び噛みなおして飲み込む」という一連の流れを指しているのに対して、「咀嚼」は噛むことのみを指していますね。

また、転じた意味にも違いがあります。「反芻」は言葉だけでなく過去の経験なども味わう対象になりますが、「咀嚼」は言葉の意味をよく考えて味わうことのみを意味しているのです。

「反芻」の英語表現

「反芻」の英語表現を見ていきましょう。

「rumination」:反芻

まずは「rumination」です。そのまま「反芻」という意味があります。また「ruminate」で「反芻する」です。動物の消化様式を表している方の意味になります。「a ruminant」は「反芻動物」です。

「chew the cud」:熟考する

次は「chew the cud」です。「決断する前に熟考すること」という意味があります。「chew」は「噛む」、「cud」は「食い戻し」です。ウシなどの動物が反芻する意味もありますが、こちらは「繰り返し考える・思案する」という意味が含まれています。

「反芻」は己の生きる糧!前向きに「反芻」していこう。

この記事では「反芻」の意味・使い方・類語などを説明しました。「反芻」はウシなど反芻動物の消化様式を表す「かみなおして再び飲み込むこと」という意味があるとともに、「くりかえし考え味わうこと」という私たち人間とっても大変深みのある言葉でした。動物が何度も噛んで自らの体の栄養にするように、人も自分の知識や経験を己の生きる糧とするところに発想を飛ばすとは、言葉の可能性はすごいなと改めて感じさせられます。

また、心理学でも「反芻思考」という言葉があることが分かりました。「反芻思考」は精神疾患の要因となる悪いものと一般的に考えられますが、実はそればかりではありません。過去の自分を否定し、どれだけ周囲から納得できない仕打ちを受けたかと不満をつのらせる場合はそうですが、自分の行為を分析することで次は同じ失敗をしないようにしたいという前向きな気持ちに起因することもありました。後者の場合、やはり「反芻」は自分の成長を促す重要な要因だと考えられますね

これからも、価値ある言葉や経験を「反芻」することを大切にしていきたいものです。

英語の勉強には洋楽の和訳サイトもおすすめです。
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国語言葉の意味

「反芻」の意味は?動物の消化から心理学まで!使い方・類語・英語表現などを元小学校教諭がわかりやすく解説

この記事では「反芻」について解説する。

端的に言えば「反芻」の意味は「かみなおして再び飲み込むこと」と「くりかえし考え味わうこと」がある。また、心理学でも使われる言葉なんです。

小学校教諭として言葉の授業を何度もしてきた「こと」と一緒に、「反芻」の意味や使い方・語源・類語などを見ていこう。

ライター/こと

元小学校教諭のwebライター。先生や子どもたちから「授業が分かりやすい!」との定評があった教育のプロだ。豊富な経験を活かし、どんな言葉も分かりやすく解説していく。

「反芻」の意味と使い方

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では早速「反芻」の意味と使い方を見ていきましょう。

「反芻」の意味は「くりかえし考え味わうこと」

まずは、「反芻」の意味を辞書で確認します。

1. 一度飲み下した食物を口の中に戻し、かみなおして再び飲み込むこと。

2.繰り返し考え、よく味わうこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「反芻」

1は、牛などの動物が食べ物を咀嚼する過程で一度胃の中に入ったものを再び口の中に戻し、かみなおして再び飲み込むことです。2は、1の意味から転じて言葉や経験についてくり返し考えよく味わうことを意味しています。

日常会話で「反芻」という言葉が出てきた場合は、動物の話をしていない限り2の意味で使われていることが多いのではないでしょうか。

「反芻」の使い方を例文を紹介

では「反芻」の使い方を例文で紹介しましょう。

\次のページで「「反芻」の語源は?」を解説!/

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