ニュースや新聞でよく目にする言葉に「ブレイン」「ブレーン」がある。「首相のブレインとして…」「A氏をブレインとして起用した」のように使用される言葉です。見聞きしたことはあるか?

この「ブレイン」は、端的に言えば「助言を与える側近」です。政治家などの偉い人のそばには必ずいるぞ。

今回はその「ブレイン」について、意味や使い方、類義語などを、大学院卒の日本語教師・むかいひろきに解説してもらうぞ。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「ブレイン」の意味や使い方は?

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ニュースや新聞でよく目にする言葉「ブレイン」。何となくの意味は分かるけど、ちゃんとした意味は分からない…そのような方が多いのではないでしょうか。まずは、「ブレイン」の意味や使い方を確認していきましょう。

「ブレイン」の意味は「助言を与える側近」

「ブレイン」の意味を国語辞典を用いて確認していきましょう。「ブレイン」は「ブレーン」と表記される場合も多く、辞典によっては「ブレーン」の方でしか掲載の無い場合があります。今回私が参照した国語辞典も「ブレーン」での掲載でした。

❶頭脳
❷政府・企業・個人などの相談役として専門的な助言を与える学者・専門家のグループ。
▶「ブレーントラスト(brain trust)」の略。

出典:明鏡国語辞典 第二版(大修館書店)「ブレーン[brain]」

国語辞典には2つの意味が掲載されていました。1番目の意味は英語の「brain」をそのまま日本語のカタカナ表記に置き換えただけですので、今回の記事では割愛させていただきます。

今回解説するのは2番目の意味です。「ブレイン」は、「政府・企業・個人などの相談役として専門的な助言を与える人」という意味ですね。この辞典の記述ではグループとなっていますが、「ブレイン」はグループではなく1人の場合もあります。また、ブレインとなるのは学者や専門家の場合が原則ですが、必ずしも学者や専門家であるとは限りません。

「ブレイン」の使い方を例文とともに解説!

続いて、「ブレイン」の使い方を見ていきましょう。「ブレイン」が使用されるのは、政治家などの偉い人について語る文脈の場合が多いです。また、「ブレーン」という表記を用いる場合も多いのですが、この記事では「ブレイン」に統一します。

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1.A氏は2000年~2004年にかけて首相の対B国関係のブレインとして活躍し、B国との関係改善に貢献した。
2.田中氏は優秀なブレインとして、長きにわたって社長を支えている。
3.日本の対C国政策はめちゃくちゃだ。首相のブレインにC国についての最新の知識がある人間がいないんだろうなぁ。

例文1では、「対B国関係で首相にアドバイスする専門家」という意味で「ブレイン」が使用されています。日本と外国との関係では、その国の事情に精通した「ブレイン」の存在がとても重要になりますね。

例文2では、「常日頃社長に助言を行う側近」という意味で「ブレイン」が使用されています。特にこれといった専門分野がない場合でも、適切な助言を常に傍で行う人材は「ブレイン」です。

例文3は、「首相に政策のアドバイスをする側近」という意味で「ブレイン」が使用されています。しかし、残念ながらこの「ブレイン」に専門知識が不足していたり、誤った知識を持ったりしている場合は、政策の遂行が困難になりますね。

「ブレイン」の類義語は?

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英語が由来の「ブレイン」ですが、日本語にも「ブレイン」と同じような意味を表す表現が存在します。「右腕」「片腕」「参謀」です。どれも一度は聞いたことがある言葉でしょう。

「右腕」最も信頼のおける部下

「右腕(みぎうで)」は、「最も信頼し、頼りにしている部下」という意味の表現です。上に立つ者の優秀な側近として、作戦や企画に携わり、その作戦・企画の実行や助言を行う存在ですね。「ブレイン」との違いは、「右腕」の方が上下関係があるというニュアンスがはっきり出ることです。「ブレイン」の場合、助言をされる側とする側が上下関係にあるとは限りませんが、「右腕」の場合は必ず上下関係にあります。

また、「右腕(うわん)」と読むと、野球やソフトボールなどで右投げの投手を意味することになるので、注意が必要です。

「片腕」最も頼れる補佐役

「片腕」は、「補佐役として最も信頼できる人」という意味の表現です。「右腕」と同様に、上に立つ者の優秀な側近として、作戦や企画に携わり、その作戦・企画の実行や助言を行う存在ですね。「ブレイン」との違いも「右腕」と同様です。「片腕」の方が上下関係があるというニュアンスがはっきり出ます。「ブレイン」の場合、助言をされる側とする側が上下関係にあるとは限りませんが、「片腕」の場合は原則助言をする側とされる側は、上下関係にありますね。

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「参謀」重要な計画や作戦を立てる人

「参謀」は、本来は軍隊の言葉で「高級指揮官を補佐して作戦や用兵、その他すべての計画・指導に当たる将校」という意味です。現代ではその意味から転じて、「計画や作戦を立てる人」という意味でも使用されています。「ブレイン」の仕事も、政策などの計画や作戦に助言を行いつつ参与することであるため、「ブレイン」の類義語であると言えるでしょう。

「ブレイン」の英語表現は何?

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続いて、「ブレイン」の英語表現を確認してみましょう。「ブレイン」は英語由来の表現ですが、本来の英語表現の意味を理解することも大切です。例文とともに確認していきましょう。

一般的にはこちらを使用!「the brains」

「the brains」は日本語の「ブレイン」と同じ意味・ニュアンスを表す英語表現です。「ブレイン」の音の元となっている「brain」単体では日本語での「ブレイン」の意味にはならないので注意が必要ですね。例文を見ていきましょう。

1.Kevin is the brains behind Company A, which continues to gain market share in the smartphone business. ケビンはスマートフォン事業でシェアを伸ばし続けているA社のブレインだ。
2.Smith has been the brains behind the President's economic policy for many years. スミス氏は長年にわたり大統領の経済政策のブレインとして活躍してきた。

「ブレイン」の語源となった英語「brain trust」

「brain trust」は、日本語の「ブレイン」の元となった言葉であるため、ここで意味を紹介しましょう。

「brain trust」は「政府や政治家、組織の長などに委嘱された側近顧問」という意味です。政治家や組織のリーダーから依頼を受け、彼らに専門的なアドバイスを側で行う人たちのことを指します。アメリカでは、大統領の側近で政策の立案に関する任務に関わる一団の顧問、補佐役を指す言葉です。よって一般的な意味で「ブレイン」を使用する場合は、先述の「the brains」を使用した方が良いでしょう。

この「brain trust」は、1932年のアメリカ大統領選挙で勝利したF.ルーズベルト大統領大統領が、選挙期間中に専門家を政策の相談相手としていたものを、当選後も引き続きアドバイザーとしてホワイトハウスのスタッフとして起用し、このことを当時の新聞が「brain trust」と呼んだことに由来しています。

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偉い人たちの“頭脳”となる人々。それが「ブレイン」

今回は「ブレイン」について解説しました。「ブレイン」は「政府・企業・個人などの相談役として専門的な助言を与える人」という意味の言葉で、英語の「brain trust」が語源となっています。政治家や社長といった偉い人たちの"頭脳"となってアドバイスを行い生セクや企画の実行を助ける人たちがブレインです。

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国語言葉の意味

首相の“ブレイン”って何?「ブレイン」の意味や使い方・類義語を院卒日本語教師がわかりやすく解説

1.A氏は2000年~2004年にかけて首相の対B国関係のブレインとして活躍し、B国との関係改善に貢献した。
2.田中氏は優秀なブレインとして、長きにわたって社長を支えている。
3.日本の対C国政策はめちゃくちゃだ。首相のブレインにC国についての最新の知識がある人間がいないんだろうなぁ。

例文1では、「対B国関係で首相にアドバイスする専門家」という意味で「ブレイン」が使用されています。日本と外国との関係では、その国の事情に精通した「ブレイン」の存在がとても重要になりますね。

例文2では、「常日頃社長に助言を行う側近」という意味で「ブレイン」が使用されています。特にこれといった専門分野がない場合でも、適切な助言を常に傍で行う人材は「ブレイン」です。

例文3は、「首相に政策のアドバイスをする側近」という意味で「ブレイン」が使用されています。しかし、残念ながらこの「ブレイン」に専門知識が不足していたり、誤った知識を持ったりしている場合は、政策の遂行が困難になりますね。

「ブレイン」の類義語は?

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英語が由来の「ブレイン」ですが、日本語にも「ブレイン」と同じような意味を表す表現が存在します。「右腕」「片腕」「参謀」です。どれも一度は聞いたことがある言葉でしょう。

「右腕」最も信頼のおける部下

「右腕(みぎうで)」は、「最も信頼し、頼りにしている部下」という意味の表現です。上に立つ者の優秀な側近として、作戦や企画に携わり、その作戦・企画の実行や助言を行う存在ですね。「ブレイン」との違いは、「右腕」の方が上下関係があるというニュアンスがはっきり出ることです。「ブレイン」の場合、助言をされる側とする側が上下関係にあるとは限りませんが、「右腕」の場合は必ず上下関係にあります。

また、「右腕(うわん)」と読むと、野球やソフトボールなどで右投げの投手を意味することになるので、注意が必要です。

「片腕」最も頼れる補佐役

「片腕」は、「補佐役として最も信頼できる人」という意味の表現です。「右腕」と同様に、上に立つ者の優秀な側近として、作戦や企画に携わり、その作戦・企画の実行や助言を行う存在ですね。「ブレイン」との違いも「右腕」と同様です。「片腕」の方が上下関係があるというニュアンスがはっきり出ます。「ブレイン」の場合、助言をされる側とする側が上下関係にあるとは限りませんが、「片腕」の場合は原則助言をする側とされる側は、上下関係にありますね。

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