

端的に言えば閾値の意味は「最小値」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んだ。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「閾値」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/タケル
某国立大で国語学を専攻していた。私が最近自分の閾値が下がったと感じるのは徹夜。若い頃は1日くらい寝ずとも平気だったが、今は夜になったらしっかりと睡眠を取りたいらしい。
「閾値」の意味は?
「閾値」には、次のような意味があります。
1. ある反応を起こさせる、最低の刺激量。しきいち。
2.生体の感覚に興奮を生じさせるために必要な刺激の最小値。しきいち。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「閾値」
「閾値」は「いきち」と読みます。「しきいち」という読み方もありますが、辞書を見ると「いきち」の項目に誘導されることが多いようです。しかし、読み方に関しては一筋縄では行きませんので、あとでまとめて説明することにしましょう。
「閾値」とは、数値上の境目や境界線上となる数値のことです。元をたどれば主に生物学で使われており、特に「全か否かの法則」(恣無律、all-or-none lawとも)でよく使われます。たとえば、放射線を少々浴びても体に影響はほとんどありません。しかし、ある一定の放射線量を超えると体内の器官に悪影響が現れ、時には死に至ります。この、ある一定の量(致死量など)が「閾値」というわけです。
この「閾値」が、近年ITの世界でも使われるようになりました。プログラミングの条件分岐や電子回路の高電圧と低電圧の区別などで「閾値」が使われています。こういったITや工学関係では、「閾値」を「しきいち」と読むことが多いようです。生物学などではもともとの読み方である「いきち」が多く、その影響で今日では「いきち」と「しきいち」が混在する事態となっています。
「閾値」の語源は?
次に「閾値」の語源を確認しておきましょう。「閾」は「いき、しき、きしみ」という読み方がありますが、「しきい」という読みもあります。この「しきい」とは「敷居」のことであり、漢字が違うだけで意味は同じです。
「敷居」とは、もともとは門の内側と外側とを仕切るために敷く板を指します。これが室内になると、障子やふすまなどをはめ込む溝がついた横木のことです。それが部屋と部屋、内と外の境目の意味で使われるようになり、いつしかいろいろな境界線にも「閾、敷居」と呼ぶようになりました。そして、「いき、しき、きしみ」も「しきい」と同じ意味であり、境目となる値のことは「閾値」と呼びます。
IT業界などでは「閾値」を「しきいち」と読むことが多いと前述しましたが、「閾」(いき)よりも「敷居」(しきい)という言葉の方がなじみやすいことが理由にあるようです。確かに「いきち」では「生き血」や「行き値」などと間違えそうですよね。
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