この記事では「ヘイトスピーチ」について解説する。

端的に言えばヘイトスピーチの意味は「差別的表現」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「ヘイトスピーチ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「ヘイトスピーチ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「ヘイトスピーチ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ヘイトスピーチ」の意味は?

「ヘイトスピーチ」には、次のような意味があります。

《ヘイトは憎悪の意》憎悪をむき出しにした発言。特に、公の場で、特定の人種・民族・宗教・性別・職業・身分に属する個人や集団に対してする、極端な悪口や中傷のこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ヘイト-スピーチ」

生まれた国や属する人種・民族を理由に「国へ帰れ」「○○は排除すべき」などと言われたらたまりませんね。そのような一方的な差別的表現を「ヘイトスピーチ」といいます。

対象に向かって直接暴言を吐くほか、街宣活動などにより対象への憎悪感をあおるのもヘイトスピーチです。デモ行進やビラの配布、インターネットへの書き込みや動画をアップする行為などもヘイトスピーチに含まれます。

平成29年に行われた内閣府の世論調査によると、ヘイトスピーチを目的とする街宣活動や集会があることを「知らない」と回答した人は42.6%にのぼりました。ヘイトスピーチは人の心に差別意識を生むきっかけになります。あおりに乗ってしまわないために、まず「ヘイトスピーチというものがある」ことを知っておく必要があるでしょう。

「ヘイトスピーチ」の語源は?

次に「ヘイトスピーチ」の語源を確認しておきましょう。「ヘイトスピーチ」の語源は英語の「hate speech」。「hate」の意味は「憎む」「嫌悪する」、「speech」の意味は「演説」「発言」です。対象を「憎む発言」というわけですね。

1940年代に使われた「fighting words(ケンカ言葉)」「group libel(集団に対する名誉毀損)」という言葉の概念が、現在の「hate speech」へと通じています。アメリカで「hate speech」の言葉が広まったのは1980年代後半。2010年代には日本でも「ヘイトスピーチ」と使われるようになりました。

\次のページで「「ヘイトスピーチ」の使い方・例文」を解説!/

「ヘイトスピーチ」の使い方・例文

「ヘイトスピーチ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.本邦外出身者(日本で暮らす外国人)へのヘイトスピーチをネットで見たが、単なる誹謗中傷に過ぎず、人権侵害もはなはだしいと感じた。
2.日韓関係の悪化によるものか、韓国国籍をもつ友人が不当なヘイトスピーチをあびせられてしまった。
3.サイト上でヘイトスピーチの被害を受けたときは、プロバイダもしくは法務局に相談すれば該当の文言を削除してもらえる。

あらゆる人種差別は犯罪であるとした「人種差別撤廃条約」が国連総会で採択されたのは1965年。締約国は、その実現に必要な立法措置をとるよう義務づけられています。

しかし日本では、憲法が保障する「表現の自由」とのバランスが必要でした。日本は長らくヘイトスピーチをとりしまる法律をもたず、規制が弱い国とされていたのです。全世界的なヘイトスピーチ規制の流れの中、平成28年に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」が施行されました。

日本におけるヘイトスピーチは在日外国人に対するもののほか、反原発運動に対するもの、生活保護に対するものなどがあります。とはいえ、思想に対しても「ヘイトスピーチ」というかどうかは議論が分かれるところです。

「ヘイトスピーチ」の類義語は?違いは?

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「ヘイトスピーチ」の類義語には「ヘイトクライム」があります。

「ヘイトクライム」

「ヘイトクライム」とは、出身国や特定の人種・民族に属することを理由におこなう、嫌がらせや暴行などの犯罪行為をいいます。「ヘイトスピーチ」を「差別的表現」「憎悪表現」と言い換えるのに対し、「ヘイトクライム」は「憎悪犯罪」です。

ヨーロッパではヘイトスピーチを厳しく規制しますが、アメリカはヘイトクライムの規制に積極的といわれます。人種や民族の問題はそれぞれの地域によって違いがあり、一元的に整えてうまくゆくものではないのでしょう。

日本でヘイトクライムは起きていないかというと、そうとも言い切れないようです。2009年の京都朝鮮学校公園占用抗議事件、2016年の相模原障害者施設殺傷事件をヘイトクライムであると主張する専門家やマスコミもいます。出身国や障害者に対する偏見と憎悪が生んだ犯罪です。

\次のページで「「ヘイトスピーチ」の対義語は?」を解説!/

「ヘイトスピーチ」の対義語は?

「ヘイトスピーチ」の対義語には「公平無私」があげられます。

「公平無私」

「公平無私(こうへいむし)」とは、自分の主観や感情にもとづいて判断することなく、公平である態度や生き方のことです。「ヘイトスピーチ」が主観にもとづいた一方的な表現であることから、対義語にあがります。

「ヘイトスピーチ」は「差別的表現」と表しますが、「差別」とは主観による偏ったものの見方をすること。「公平」とは偏りなく平等に扱うことであり、この意味において「差別」と「公平」は対義語同士です。

「無私」とは私心や私欲がないこと。つまり「私のため」という気持ちがないことです。人がヘイトスピーチを行うとき、その差別心や憎悪には「われわれの利益を奪いやがって」という感情がかくれているのではないでしょうか。「無私」の気持ちがあれば、ヘイトスピーチは止むはずです。

「ヘイトスピーチ」の英訳は?

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「ヘイトスピーチ」の英訳は「hate speech」です。

「hate speech」

「hate speech」の言葉は、日本語の「ヘイトスピーチ」とほぼ同じ意味で使われます。人種や民族など自力で変えることが困難なことについて侮辱する発言は、英語圏でも「hate speech」です。

あえて違いをいえば、日本語の「ヘイトスピーチ」は「差別」のニュアンスに重きをおくことでしょうか。英語の「hate speech」は「憎悪表現」と和訳されることが多く「憎しみの感情をかりたてる」ことを表す言葉といえます。対して日本語の「ヘイトスピーチ」は「憎悪表現」よりも「差別的表現」と言い換えるほうがしっくりきますね。

「hate-filled speech」で「憎悪に満ちた演説」となります。ヘイトスピーチを受けた人の心は憎悪でいっぱいになりますが、発言することで発信者の憎悪も盛り上がるのです。

「ヘイトスピーチ」を使いこなそう

この記事では「ヘイトスピーチ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「ヘイトスピーチ」は、一方的な差別的表現のことです。意思をもって相手を攻撃する、言葉の暴力といえます。あおられて自分の中にも差別意識が芽生えてしまわないよう、客観的な判断力をもっていたいですね。

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国語言葉の意味

「ヘイトスピーチ」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「ヘイトスピーチ」について解説する。

端的に言えばヘイトスピーチの意味は「差別的表現」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「ヘイトスピーチ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「ヘイトスピーチ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「ヘイトスピーチ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ヘイトスピーチ」の意味は?

「ヘイトスピーチ」には、次のような意味があります。

《ヘイトは憎悪の意》憎悪をむき出しにした発言。特に、公の場で、特定の人種・民族・宗教・性別・職業・身分に属する個人や集団に対してする、極端な悪口や中傷のこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ヘイト-スピーチ」

生まれた国や属する人種・民族を理由に「国へ帰れ」「○○は排除すべき」などと言われたらたまりませんね。そのような一方的な差別的表現を「ヘイトスピーチ」といいます。

対象に向かって直接暴言を吐くほか、街宣活動などにより対象への憎悪感をあおるのもヘイトスピーチです。デモ行進やビラの配布、インターネットへの書き込みや動画をアップする行為などもヘイトスピーチに含まれます。

平成29年に行われた内閣府の世論調査によると、ヘイトスピーチを目的とする街宣活動や集会があることを「知らない」と回答した人は42.6%にのぼりました。ヘイトスピーチは人の心に差別意識を生むきっかけになります。あおりに乗ってしまわないために、まず「ヘイトスピーチというものがある」ことを知っておく必要があるでしょう。

「ヘイトスピーチ」の語源は?

次に「ヘイトスピーチ」の語源を確認しておきましょう。「ヘイトスピーチ」の語源は英語の「hate speech」。「hate」の意味は「憎む」「嫌悪する」、「speech」の意味は「演説」「発言」です。対象を「憎む発言」というわけですね。

1940年代に使われた「fighting words(ケンカ言葉)」「group libel(集団に対する名誉毀損)」という言葉の概念が、現在の「hate speech」へと通じています。アメリカで「hate speech」の言葉が広まったのは1980年代後半。2010年代には日本でも「ヘイトスピーチ」と使われるようになりました。

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