3分で簡単「自己消化」自分の細胞を消化してしまう?現役理系大学院生がわかりやすく解説!
食品加工での自己消化の利用
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食品加工の現場では、屠殺(とさつ)後の肉類をほどよく自己消化をさせることで肉を柔らかくしています。
魚や動物は死後のpHの低下に伴い、筋源繊維タンパク質が強く結合してアクトミオシンを生成し、筋肉は硬直して硬い状態になります(死後硬直)。死後硬直をしている肉は硬いうえに風味もなく、とても食べられないほどです。しかし、死後時間が経過すると自己消化が進み、死後硬直が解け(解硬)し、さらに自己消化によりタンパク質が分解されて少しずつ柔らかくなり、アミノ酸やイノシン酸などの「うま味」成分が増え、風味のあるおいしい食肉になります。
しかし、死後には自己消化と同時に微生物による腐敗も進行してしまい、当然腐敗した肉は食べる事ができません。自己消化は酵素作用であるため、温度、pH、食塩など様々な条件によって影響を受けます。そのため細菌による腐敗を避け、自己消化を進行させるには、低温で貯蔵したり、塩蔵をしたりすることが多いです。食肉ではこの過程を「熟成」と呼びます。熟成に必要な期間は表の通りです。
自分自身を分解する「自己消化」
今回は「自己消化」をテーマに解説をしました。あまり聞いたことのない現象かもしれませんが、自己消化は食品の加工の現場で使われるだけでなく、死後硬直の進行状況から死亡推定時刻を割り出す場合など、法医学的に重要でもあります。
自己が起こる意義を問われると答えは難しいですが、生物は死後に自分で自分を消化する「自己消化」をすることで、ゆっくりと溶けて土に還って、有機物として土を潤し他の生命を育んでいく…若干、科学的ではないかもしれませんが、自己消化によって命は巡り廻っているのかもしれませんね。