この記事では「マグニチュード」と「震度」について解説します。

日本に住んでいる者なら、地震を経験したことがないという者はほとんどいないでしょう。日本は世界的に見ても地震大国で、世界で起こる約1/10の地震が日本とその周辺で起きているのです。
地震のニュースなどでよく耳にする「マグニチュード」や「震度」という言葉は、どちらも「地震の大きさ」を意味するため取り違えられることが多い。しかしこれらの用語一つ一つについてしっかりと理解できれば、混同することもなくなるでしょう。

大学で地球科学を専攻した、地学に詳しいライターの本木と一緒に解説していきます。

ライター/本木

国立大学理学部で地球科学を専攻し、地震や火山についての研究を行った。理科になじみのない人にもわかりやすいよう、やさしく噛み砕いて解説する。

マグニチュードとは

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それではまず「マグニチュード」の説明ですが、マグニチュード(magnitude)はもともと英語で大きさや規模を意味する言葉ですが、地震におけるマグニチュードとは地震の大きさを表す数値のことを言います。地震そのものの大きさを示すものなので、1つの地震につきマグニチュードは1つのみ、複数は存在しません。

マグニチュードは断層のずれの大きさや地震計の波形の振幅などによって計算され、地震が放つエネルギーの大きさを表すことができるのです。マグニチュードが1増えるとエネルギーは約32倍、2増えると1000倍となります。

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日本の大地震のマグニチュード

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過去に日本で起こった地震のマグニチュードが実際にどれくらいの値だったのか確認してみましょう。下記は、近年起こった代表的な大地震です。

1995年 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) マグニチュード7.3

2004年 新潟県中越地震(新潟県中越大震災) マグニチュード6.8

2011年 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)  マグニチュード9.0

2016年 熊本地震 マグニチュード7.3

(マグニチュードには計算方法が数種類あり、計算方法によって値が異なります)

上記が近年で特に大きかった地震ですが、なかでも東北地方太平洋沖地震のマグニチュードは9.0と、抜きんでて高い数値となっています。これは1900年以降に世界で観測された地震の中で4番目に大きいマグニチュードで、世界的にも類を見ないほどの巨大地震なのです。

またマグニチュードが2増えると地震のエネルギーが1000倍になることから、東北地方太平洋沖地震は新潟県中越地震の1000個分以上に相当するということが言えます。

世界の大地震のマグニチュード

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世界で起きた地震も見てみましょう。下記の地震は、1900年以降に世界で観測された中で最も大きい3つの地震です。

1960年 チリ地震 マグニチュード9.5

1964年 アラスカ地震 マグニチュード9.2

2004年 スマトラ島沖地震 マグニチュード9.1

これまで最もマグニチュードの大きかった地震は1960年のチリ地震でその値は9.5となっており、これは東北地方太平洋沖地震のエネルギーの約5.6倍ということになります。この地震により発生した津波が日本やオーストラリアなど遠い国まで到達し死傷者を出したことからも、いかに大きな地震であったかをうかがい知ることができますね。

また2004年のスマトラ島沖地震は2000年以降では最大のマグニチュードですが、特に津波による被害が大きく世界で22万人以上の死者を出し、歴史的な大災害となりました。

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震度とは

マグニチュードが地震そのものの大きさを表しているのに対し、震度は地震を観測したそれぞれの地点における揺れの大きさを表す尺度のことを言います。ですから、同じ地震であっても震度は計測地点ごとに違う値となるのです。現在日本で使われている区分は震度0、震度1、震度2、震度3、震度4、震度5弱、震度5強、震度6弱、震度6強、震度7、の10段階があります。またこの区分は日本以外ではほとんど使用されていません。

また、震度はかつて観測員の体感や主観によって決定されていましたが、観測者によってばらつきが出たり精度が低くなりやすいといった問題があったことから、現在は計測震度計によって測定されています。

震度の大きさを左右する要因とは

震度の大きさを左右する要因とは

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同じ地震でも観測地点によって震度が異なるのはなぜでしょうか。その要因について説明します。

要因の1つは震源からの距離です。地震は一般的に震源地を中心に同心円状に広がっていくため、地震が発生した場所から遠ければ遠いほど、地震は減衰して揺れは弱くなります。逆に言うと、直下型の地震ではマグニチュードが小さくても震度が大きくなりやすく、特に震源の浅いものは大きな被害をもたらすことがあるのです(上の図はその現象を模式的に表したものです)。

また、地下の構造が揺れの大きさに影響を及ぼすことがあります。地盤のやわらかい場所では地震波が増幅して大きな地震が発生しやすくなるほか、地下で地震波が屈折や反射された結果、地震波が重なって増幅され、揺れが大きくなることがあるのです。こうした要因により、同じ市区町村内でも(=震源からの距離がほぼ同じでも)地域により震度が違うといった現象が起こります。

震度7が観測された地震

2011 Tohoku earthquake intensity.png
As6022014 - 気象庁, Lincun(2010)ファイル:地図 令制国 和泉国.svg, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

震度の区分の中で最も大きい「震度7」を観測した地震は今までにどれほどあったのでしょうか。下記がその地震と震度7の観測点の一覧です(震度の区分と測定方法が現在のものとなった1996年以降のもの)。

2004年 新潟県中越地震 新潟県川口町

2011年 東北地方太平洋沖地震 宮城県栗原市

2016年 熊本地震(前震) 熊本県益城町

2016年 熊本地震(本震) 熊本県益城町、西原村

2018年 北海道胆振東部地震 北海道厚真町

「気象庁震度階級関連解説表」によると、震度7における人の体感・行動は「立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある。」とされています。東北地方太平洋沖地震では強い揺れが2分間続いたことから、現地ではこうした身動きの取れないほどの揺れがしばらくの間続いていたという、恐ろしい事態に見舞われていたということですね。

上の図は東北地方太平洋沖地震の本震における震度の分布で、宮城県に震度7を示すピンク色の点があり、その周辺にも6強や6弱を示す赤色の点が多数あることがわかります。

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マグニチュードと震度の違いのまとめ

ここまでマグニチュードと震度についてそれぞれ説明しましたが、これらの違いは次のようにまとめられます。

マグニチュードは地震そのものの大きさを表し、その値は1つのみ。

震度は観測地点での揺れの大きさを表し、観測地点ごとにさまざまな値を示す。

地震について正しい理解を

わたしたち日本人にとって身近な災害である地震。その恐怖を実際に味わったという人も多いことと思います。

地震は現在科学的な予知方法が確立しておらず、その対策としては前もって備えるほかないのが現状です。今回取り上げたように、地震の用語や知識を正しく理解すること、そして過去の大地震の規模や被害を知ることなど、一人ひとりの意識を高めることが一つの有効な備えになると思います。興味を持たれた方はぜひ、地震についてさらに知識を深めていってください。

イラスト使用元:いらすとや

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地学地球理科

「マグニチュード」「震度」とは?その違いは?地球科学卒のwebライターが丁寧にわかりやすく解説

この記事では「マグニチュード」と「震度」について解説します。

日本に住んでいる者なら、地震を経験したことがないという者はほとんどいないでしょう。日本は世界的に見ても地震大国で、世界で起こる約1/10の地震が日本とその周辺で起きているのです。
地震のニュースなどでよく耳にする「マグニチュード」や「震度」という言葉は、どちらも「地震の大きさ」を意味するため取り違えられることが多い。しかしこれらの用語一つ一つについてしっかりと理解できれば、混同することもなくなるでしょう。

大学で地球科学を専攻した、地学に詳しいライターの本木と一緒に解説していきます。

ライター/本木

国立大学理学部で地球科学を専攻し、地震や火山についての研究を行った。理科になじみのない人にもわかりやすいよう、やさしく噛み砕いて解説する。

マグニチュードとは

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それではまず「マグニチュード」の説明ですが、マグニチュード(magnitude)はもともと英語で大きさや規模を意味する言葉ですが、地震におけるマグニチュードとは地震の大きさを表す数値のことを言います。地震そのものの大きさを示すものなので、1つの地震につきマグニチュードは1つのみ、複数は存在しません。

マグニチュードは断層のずれの大きさや地震計の波形の振幅などによって計算され、地震が放つエネルギーの大きさを表すことができるのです。マグニチュードが1増えるとエネルギーは約32倍、2増えると1000倍となります。

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