3分で簡単「能動輸送」物質が細胞膜を通過するメカニズムを現役理系大学院生がわかりやすく解説!
能動輸送とは
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能動輸送とは、濃度が低い領域からより濃度の高い領域への濃度勾配に逆らう細胞膜を越えた分子の移動です。「能動」という言葉からわかるように、「細胞が自ら進んで積極的に」輸送を行うため、能動輸送はエネルギーを必要とします。エネルギーの使い方で分類されており、細胞のエネルギー通貨であるアデノシン三リン酸(ATP)を直接使用する一次性能動輸送と、一次性能動輸送で生じた電気化学的勾配を使用する二次性能動輸送の2種類です。
能動輸送では各種イオン、グルコース、タンパク質(アミノ酸)など、細胞が必要とする分子が細胞膜に埋め込まれたトランスポーター(輸送担体)の中を通って移動しています。
能動輸送の特徴
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能動輸送はエネルギーが必要であること以外にもいくつか特徴があります。能動輸送に用いられるトランスポーターは酵素を利用しているため、能動輸送の特徴は酵素の特徴です。
酵素は特定の物質だけを基質とする特徴を持っています。つまりトランスポーターは決まった分子しか輸送できません(基質特異性)。しかし、その分子と化学構造が似ている物質がある場合、その似た物質が代わりに輸送されてしまう場合があり、本来の分子の輸送が阻害されることがあります(競合阻害)。
さらに、能動輸送のトランスポーターが輸送できる量や速度には限界があります。これは輸送する物質(基質)が増えてくると、輸送しきれなくなり飽和してしまうためです。これを酵素の速度反応論ではミカエリス・メンテン式に依存すると言います。
ナトリウム-カリウムポンプ
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一次性能動輸送でもっとも代表的なものはナトリウム-カリウムポンプです。このポンプの実体はNa+/K+-ATPアーゼという酵素で、ヒトのすべての細胞に存在して、ATP(エネルギー)を使って細胞内から細胞外へナトリウムイオンを汲み出し、代わりにカリウムイオンを取り込みます(対向輸送)。
ナトリウム-カリウムポンプの主な働きは、細胞の浸透圧と水量を調節すること。また、ナトリウム-カリウムポンプによって作られるイオンの濃度勾配を使ってグルコースやアミノ酸を能動輸送しています(二次性能動輸送)。さらに神経細胞や筋細胞ではナトリウムカリウムポンプによって生じる膜電位の差を利用して神経伝達や筋の収縮を行っています。
ナトリウム-カリウムポンプのしくみ
Source: LadyofHats Mariana Ruiz Villarreal. This work: Calvero – File:Scheme_sodium-potassium_pump-en.svg, パブリック・ドメイン, リンクによる
ナトリウム-カリウムポンプの構造と仕組みについて解説します。ナトリウム-カリウムポンプは2種のサブユニットからなる細胞膜輸送系の膜貫通タンパクです。
細胞膜を貫通する部分にはナトリウムイオンとカリウムイオンの結合部位があり、まず、ポンプが細胞内にあるATPと3つのナトリウムイオンと結合。次にATPのエネルギーを使ってポンプの形を変化させ、細胞の外側に向けて開いた形にします。これによってナトリウムイオンは外へ放出され、かわりに2つのカリウムイオンが結合部位へ結合。最後に、エネルギーを使い終わるとポンプの形は元に戻り、カリウムイオンは細胞の内側へ放出されるしくみです。1回の輸送で3つのナトリウムイオンを細胞外に出して、2つのカリウムイオン細胞内に取り込みます。
ナトリウム-カリウムポンプを利用して細胞内はカリウム濃度が高く、細胞外はナトリウムイオン濃度が高くなるように維持しているのです。
ナトリウム-グルコース共輸送体
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二次性能動輸送で代表的なものはナトリウム-グルコース共輸送体です。細胞内外へのグルコースの移動は、細胞膜上に存在するグルコース輸送体を介して行われ、輸送体はglucose transporter(GLUT)とsodium/glucose cotransporter(SGLT)の2タイプに分かれます。このうち能動輸送を用いているのは哺乳類の小腸や腎臓に存在するSGLTです。
ナトリウム-カリウムポンプでは細胞から3Na+を汲み出して2K+を汲み入れるため、正電荷を1個細胞外に放出します。このため細胞内は細胞外に対し電位が低下し、細胞内外で電気化学的勾配が生じるのです。これにより供給されるエネルギーを利用して、小腸や尿細管の管腔側にある細胞膜に存在する SGLTを介して、グルコースとNa+を細胞内へ同時輸送しています(共輸送)。
細胞内に取り込まれたNa+は、またナトリウムカリウムポンプで細胞外へ汲み出され、グルコースはGLUTを介した受動輸送で血管側へと拡散され血液にのって運搬されます。
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