この記事では「抽象的」について解説する。

端的に言えば「抽象的」の意味は「物事を広い視点で大まかに見る事」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「抽象的」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。学生生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な女性を読破してきた生粋の文化系。読書量に比例する文章力で、日本語をわかりやすく説明していく。

「抽象的」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「抽象的」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「抽象的」の意味は?

「抽象的」には、次のような意味があります。

1.いくつかの事物に共通な物を抜き出して、それを一般化して考えるさま。

2.頭の中だけで考えていて、具体性に欠けるさま。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「抽象的」

「抽象的」とは日常的によく用いられる聞きなれた言葉ですが、その意味の通り定義が曖昧ですよね。この機会に「抽象的」の意味を深く掘り下げていきましょう。

まず「抽象的」には、二つの意味があります。一つ目は「物事の共通点を抜き出して、一般化する」です。物事を一つ一つ、個性を捉えて分解して考えるのではなく、その中から共通点を見つけて大きくまとめて考えるという事ですね。お米とお味噌汁、漬物などを「和食」、パスタやパン、スープなどを「洋食」とまとめて表す時、この「和食」や「洋食」が抽象的な表現です。さらにこの「和食」と「洋食」にも「食べ物」という共通点があり、このように物事を俯瞰して広く見ていく事を「抽象度を上げる」と言います。

二つ目は、「具体性に欠けること」です。これは日常会話でもビジネスシーンでもよく問題視される事ですが、何かを聞いたときに答えがはっきりせず曖昧な回答してしまう事を指します。「今日は何が食べたい?」と聞いたときに「お寿司」などと具体的に答えるのではなく、「何かさっぱりしたもの」や「美味しいもの」と答えることなどですね。

これらの二つの意味から、「抽象的」というのは物事をいい意味でも悪い意味でも広く俯瞰的に見ることだと分かるのではないでしょうか。

「抽象的」の語源は?

次に「抽象的」の語源を確認しておきましょう。「抽象的」の語源は、一つ一つの漢字を紐解くと理解する事ができます。

まず「抽」は「抽出」という言葉でも用いられるように、「引き出す」「抜き出す」という意味をもつ漢字です。5本の指の手を表現する象形文字である「扌(てへん)」と、底の深い酒壺を表現する「由」という象形文字で成り立っていることからも、深い底の中から手で引き抜くというニュアンスが伝わりますね。

次に「象」は、「対象」や「印象」という言葉でも用いられるように、姿形を表す漢字です。したがってこの二つを組み合わせた「抽象」は、「物事から共通点を引き出して、一般的な形にする」ということになりますね。残りの「的」は接尾辞の一つで物事の性質を表す漢字です。

\次のページで「「抽象的」の使い方・例文」を解説!/

「抽象的」の使い方・例文

「抽象的」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.経験の少ない担当者の授業に当たってしまったからか、学習内容が抽象的すぎて勉強方法が分からない。


2.僕のポチは大きくて知能の高い犬だが、抽象的に見ていくと種類はシェパード、大型犬、犬、哺乳類、動物となる。


3.人間の能力を最大限に引き出した思考力を身に付ける秘訣は、一つの事だけを掘り下げるのではなく、様々なものを広く抽象的に見ることによって本質を得る事である。

例文の2番目が、一つ目の意味である「共通点を引き出して一般化する」という方の使い方です。飼い主の少年が自分の唯一無二のペットをどんどん抽象化すると、最終的に動物という結果に辿り着いていますね。このように一つの物事を少しずつ広く大まかに考えていくと、自分の手中には収まりきらない壮大なものとなっていきます。よって物事を抽象的に考えるということは、所有物を自分だけのものと考えるのではなく、世界を構成しているうちの一つで今はたまたま自分が借りているだけというイメージが湧きませんか?一つに固執するのではなくこのように抽象化していくことによって、気持ちが楽になる事もあるかもしれませんね。

一方で1番目と3番目の例文は、「具体性に欠けている」という方の意味を用いた文章です。「具体性に欠ける」というのは「抽象的な答え」や「抽象的な意見」など、ビジネスシーンにおいてはっきりとした回答を求められている時に考えが浅く曖昧な事を答えて批判される事もあれば、「抽象絵画」などのように本質を知りながらわざと曖昧な表現をする事で高く評価される事もあります。つまりただ考えが足りずに抽象的になってしまっているのか、本質をつきながらわざと抽象的にしているのかという事ですね。

「抽象的」の類義語は?違いは?

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「抽象的」の意味や使い方を紹介してきました。次は類義語とその使い方を見ていきましょう。

「概念的」

「抽象的」の類義語は「概念的」です。

「概念的」とは、一つ一つの物事の個性や特殊性に注目するのではなく大まかに把握する事を意味します。つまり、物事の細かい点を無視して分かりやすい部分だけを取り上げるという事です。このように物事の具体性を欠いて曖昧に捉えるという点で「抽象的」と同じ意味であるという事が分かりますね。しかし「抽象的」と「概念的」を使い分ける上で注意しなければいけない点があります。「抽象的」は本質を突きながらもわざと広い視点をもつという意味もありますが、「概念的」にはわざと概念的にするという意味合いはありません。

したがって、「抽象的」よりも「概念的」の方がより「大雑把」や「ぞんざい」といった非難の意味で用いられる事が多いということになります。

\次のページで「「抽象的」の対義語は?」を解説!/

「抽象的」の対義語は?

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「抽象的」は物事を広く見て一般化することや、具体性を欠いて曖昧に捉えることを表現する言葉でした。

では、この「抽象的」の対義語とはどのようなものなのでしょうか。早速見ていきましょう。

「具体的」

「抽象的」の対義語は、「具体的」です。「具体的」とは日常的によく用いられる言葉なので聞きなれているとは思いますが、改めて定義するとなると難しいものですね。「具体的」とは、はっきりとした明確な形や内容を備えている物事を指す言葉です。

犬→哺乳類→動物とする事が「抽象化」だとすれば、逆に動物→哺乳類→犬として明確に分かる答えを導き出す事が「具体化」。「私の飼っているペットは哺乳類です」と言われても実際にはどんな動物なのか想像する事ができませんが、「私は犬を飼っています」となるとある程度イメージが湧きますよね。

このように「具体的」とは、物事の特徴や個性を正しく捉えて明確にすることです。物事を広く見て曖昧に捉える「抽象的」とは真逆の考え方である事が分かりますね。

「抽象的」を使いこなそう

この記事では「抽象的」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「抽象的」というと、「抽象的な意見」などのように不明瞭で分かりにくいという意味ばかり想像してしまいますが、「抽象絵画」というと何だか自分の理解を超えた素晴らしいものというイメージです。このように日本語は、改めて意味を考えていくと使うシーンによって全く違う意味を持つ事が分かるという点も面白いですよね。

「抽象的」、「概念的」、「具体的」を正しく使い分けてみましょう。

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国語言葉の意味

「抽象的」の意味や使い方は?例文や類語を現役学生ライターがわかりやすく解説!

この記事では「抽象的」について解説する。

端的に言えば「抽象的」の意味は「物事を広い視点で大まかに見る事」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「抽象的」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。学生生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な女性を読破してきた生粋の文化系。読書量に比例する文章力で、日本語をわかりやすく説明していく。

「抽象的」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「抽象的」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「抽象的」の意味は?

「抽象的」には、次のような意味があります。

1.いくつかの事物に共通な物を抜き出して、それを一般化して考えるさま。

2.頭の中だけで考えていて、具体性に欠けるさま。


出典:デジタル大辞泉(小学館)「抽象的」

「抽象的」とは日常的によく用いられる聞きなれた言葉ですが、その意味の通り定義が曖昧ですよね。この機会に「抽象的」の意味を深く掘り下げていきましょう。

まず「抽象的」には、二つの意味があります。一つ目は「物事の共通点を抜き出して、一般化する」です。物事を一つ一つ、個性を捉えて分解して考えるのではなく、その中から共通点を見つけて大きくまとめて考えるという事ですね。お米とお味噌汁、漬物などを「和食」、パスタやパン、スープなどを「洋食」とまとめて表す時、この「和食」や「洋食」が抽象的な表現です。さらにこの「和食」と「洋食」にも「食べ物」という共通点があり、このように物事を俯瞰して広く見ていく事を「抽象度を上げる」と言います。

二つ目は、「具体性に欠けること」です。これは日常会話でもビジネスシーンでもよく問題視される事ですが、何かを聞いたときに答えがはっきりせず曖昧な回答してしまう事を指します。「今日は何が食べたい?」と聞いたときに「お寿司」などと具体的に答えるのではなく、「何かさっぱりしたもの」や「美味しいもの」と答えることなどですね。

これらの二つの意味から、「抽象的」というのは物事をいい意味でも悪い意味でも広く俯瞰的に見ることだと分かるのではないでしょうか。

「抽象的」の語源は?

次に「抽象的」の語源を確認しておきましょう。「抽象的」の語源は、一つ一つの漢字を紐解くと理解する事ができます。

まず「抽」は「抽出」という言葉でも用いられるように、「引き出す」「抜き出す」という意味をもつ漢字です。5本の指の手を表現する象形文字である「扌(てへん)」と、底の深い酒壺を表現する「由」という象形文字で成り立っていることからも、深い底の中から手で引き抜くというニュアンスが伝わりますね。

次に「象」は、「対象」や「印象」という言葉でも用いられるように、姿形を表す漢字です。したがってこの二つを組み合わせた「抽象」は、「物事から共通点を引き出して、一般的な形にする」ということになりますね。残りの「的」は接尾辞の一つで物事の性質を表す漢字です。

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