老化細胞と炎症
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老化細胞はもう複製することはできませんが、代謝活性は維持していることが特徴の一つです。老化細胞は、SASP (Senescence-associated secretory phenotype) と呼ばれる炎症促進性の表現型を獲得し、炎症性サイトカインなどを分泌していることが近年明らかになりました。
SASPは免疫細胞を誘導して老化細胞を排除するため腫瘍に抑制的な機能を持ちますが、老化細胞が誘導する慢性的炎症は組織の損傷や変性を進行させ、がんを促進している可能性も指摘されているのです。加齢や各種ストレスによって蓄積された老化細胞が、臓器や組織の機能低下を引き起こし、さまざまな加齢性の疾患をもたらす誘因となっていることが考えられています。
細胞老化は有益?有害?
今回は「細胞老化」をテーマに解説しました。
細胞老化の生物学的な役割は非常に複雑で、前述したように細胞老化は細胞ががん化するのを防ぐ機構であると考えられている一方で、様々な加齢に関連した炎症性疾患に関与するという報告もあります。つまり、有益な効果と有害な効果の両方が報告されているのです。
今後研究が進み、さらなるメカニズムが解明されれば「がん」の発症を防いだり、「加齢」による疾患を治療したりできる日が来るかもしれません。