この記事では「甚だしい」について解説する。

端的に言えば甚だしいの意味は「度を越している」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生の「むかいひろき」を呼んです。一緒に「甚だしい」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を活かし、「言葉」について分かりやすく解説していく。

「甚だしい」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「甚だしい」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「甚だしい」の意味は?

「甚だしい」には、国語の辞書によると次のような意味があります。

普通の度合いをはるかに超えている。「―・い被害」「非常識も―・い」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「はなはだ‐し・い【甚だしい】」

「甚だしい」は「普通の程度をはるかに超えている」「普通よりはるかに」「度を越しているさま」といった意味を表す形容詞です。通常は「普通の程度よりはるかに悪い」という悪いニュアンスで使われます。

※「甚だしい」には悪いニュアンスがありますが、副詞の「甚だ」には悪いニュアンスはありません。
※「甚だし」という、「甚だしい」から派生した名詞も存在します。

「甚だしい」の語源は?

実は「甚だしい」のはっきりとした語源は分かっていません。ただ「はなはだし」という形で、すでに奈良時代の古文の中で現代語と同じ意味で使われていたことが確認されている言葉です。

奈良時代の『日本書紀』には「是に寒くして雷雨已甚(ハナハタシ)」という記述が見られます。これは、「雷が激しく鳴り、雨も激しく降っている」という意味です。

※「已甚」で「はなはたし」と読みますが、現代語では「已」の字は用いられません。

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「甚だしい」の使い方・例文

「甚だしい」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.地震で甚だしい被害を受けた地域に、地元チームに所属するスポーツ選手がボランティアに来た。
2.日本は少子高齢化が甚だしく、高齢者の数がどんどん増え、子どもの割合が低下している。
3.田中さんは上司に敬語を使わないなど、失礼も甚だしい
4.刑事さんは私が犯人だと言いたいようだが、勘違いも甚だしい!私は犯人じゃない!

例文1,2では、「甚だしい」は「普通ではないほどの悪い程度」を表しています。例文1は「普通ではないほどの酷い被害」、例文2は「少子高齢化が異常な速さで進んでおり…」という意味です。どちらも悪いニュアンスで使われていますね。

例文3,4では「○○も甚だしい」という形で「甚だしい」が使われています。「○○も甚だしい」は「大変酷く○○」「大変酷い○○」という意味です。
つまり、例文3は「大変酷く失礼だ」、例文4は「大変酷い勘違いだ」という意味になります。

「甚だしい」の類義語は?違いは?

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「甚だしい」の類義語には、程度が普通より大きい、もしくは非常に悪いといったニュアンスを持った言葉が当てはまります。たとえば、「著しい」「とてつもない」「夥しい」です。

その1「著しい」

「著しい」は「程度がはっきり分かるほど目立つこと」を表す言葉です。「著しい」と「甚だしい」はどちらも「普通の程度を超えている」ことを表す表現ですが、1つ大きな違いがあります。

「著しい」は「山田さんは最近成長が著しい」=「普通ではないほどよく成長している」のように、良いニュアンスでも使用可能です。

「著しい」は良いニュアンスでも悪いニュアンスでも使用可能「甚だしい」は悪いニュアンスでしか使えない…という違いがあります。

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その2「とてつもない」

「とてつもない」は、「程度が並外れている」という意味の言葉です。この言葉も「甚だしい」と同じで、「普通の程度を超えている」ことを表します。

「とてつもない」は「東京スカイツリーはとてつもない高さだ」=「普通ではないほど高い」のように、悪いニュアンスがない場合でも使用可能です。

「とてつもない」は悪いニュアンス以外でも使用可能「甚だしい」は悪いニュアンスでしか使えない…という違いがあります。

その3「夥しい」

「夥しい」の読み方は「おびただしい」です。「程度がひどい、激しい」という意味と「数や量が非常に多い」という意味があります。

程度がひどい、激しい」という意味では、「甚だしい」と同じように悪いニュアンスで使われることが多いです。
たとえば、「県内の交通事故の数が、昨年と比べて夥しく増加している」は「甚だしく増加している」と言い換えができます。どちらも「ひどく増加している」という意味です。

「夥しい」の2つ目の意味「数や量が非常に多い」は、「夥しい数の人々が東京ドームにやってきた」のように使います。この2つ目の意味は「甚だしい」にはありません

「甚だしい」の対義語は?

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「甚だしい」の対義語には、「程よい」「適度な」があります。どちらも同じ意味を表す言葉です。詳しく見ていきましょう。

その1「程よい」

「程よい」は漢字の通り「程度がちょうど良い」ことを表す言葉です。「甚だしい」は「程度が普通ではないほど悪い」という意味なので反対の意味になりますね。

たとえば、「今日は20度なので、運動するのに程よい気温だ」=「ちょうど良い気温だ」のように使用されます。

※漢字は「程好い」「程良い」の2パターンがありますが、意味は同じです。

その2「適度な」

「適度な」も漢字の通り「程度がちょうど良い」ことを表す言葉です。こちらも「程度が普通ではないほど悪い」という意味を持つ「甚だしい」と反対の意味の言葉になりますね。

たとえば、「毎日適度な運動をすることが健康のために大切だ」=「毎日ちょうど良いくらいの運動を…」のように使用されます。

\次のページで「「甚だしい」を使いこなそう」を解説!/

「甚だしい」を使いこなそう

この記事では「甚だしい」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「甚だしい」は「普通の程度をはるかに超えている」「普通よりはるかに」「度を越しているさま」といった意味を表す形容詞です。対義語には、「程度がちょうど良い」ことを表す「程良い」「適度な」が挙げられます。

通常「甚だしい」は「普通の程度よりはるかに悪い」といった悪いニュアンスで使用されるので、「甚だしい」を言う際には、場面や文脈とニュアンスがあっているか気をつけて使うようにしましょう。良いニュアンスで「普通の程度をはるかに超えている」ことを言いたい時は「著しい」を使えば問題ありません。

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国語言葉の意味

「甚だしい」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「甚だしい」について解説する。

端的に言えば甚だしいの意味は「度を越している」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生の「むかいひろき」を呼んです。一緒に「甚だしい」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を活かし、「言葉」について分かりやすく解説していく。

「甚だしい」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「甚だしい」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「甚だしい」の意味は?

「甚だしい」には、国語の辞書によると次のような意味があります。

普通の度合いをはるかに超えている。「―・い被害」「非常識も―・い」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「はなはだ‐し・い【甚だしい】」

「甚だしい」は「普通の程度をはるかに超えている」「普通よりはるかに」「度を越しているさま」といった意味を表す形容詞です。通常は「普通の程度よりはるかに悪い」という悪いニュアンスで使われます。

※「甚だしい」には悪いニュアンスがありますが、副詞の「甚だ」には悪いニュアンスはありません。
※「甚だし」という、「甚だしい」から派生した名詞も存在します。

「甚だしい」の語源は?

実は「甚だしい」のはっきりとした語源は分かっていません。ただ「はなはだし」という形で、すでに奈良時代の古文の中で現代語と同じ意味で使われていたことが確認されている言葉です。

奈良時代の『日本書紀』には「是に寒くして雷雨已甚(ハナハタシ)」という記述が見られます。これは、「雷が激しく鳴り、雨も激しく降っている」という意味です。

※「已甚」で「はなはたし」と読みますが、現代語では「已」の字は用いられません。

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