この記事では「遂行」について解説する。

端的に言えば「遂行」の意味は「任務や仕事をやりとげること」です。「遂行」に使われている「遂」にはどんな意味があるか知っているか?

小学校教諭として言葉の授業を何度もしてきた「こと」と一緒に、「遂行」の意味や使い方・類語・対義語などを見ていこう。

ライター/こと

元小学校教諭のwebライター。先生や子どもたちから「授業が分かりやすい!」との定評があった教育のプロだ。豊富な経験を活かし、どんな言葉も分かりやすく解説していく。

「遂行(すいこう)」の意味と使い方

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では早速「遂行」の意味と使い方を見ていきましょう。読み方は「すいこう」です。「ついこう」ではないので、気を付けましょう。

「遂行」の意味は「任務や仕事をやりとげること」

「遂行」の意味を辞書で確認します。

[名](スル)任務や仕事をやりとげること。「業務を―する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「遂行」

「遂行」の意味は「任務や仕事をやりとげること」です。仕事や務めなどを、初めの計画どおりに成し遂げるということ。

また「遂」は「遂(と)げる」と読み、この漢字だけでも「成し遂げる」という意味があります。「行」は行動を表すので、二つの漢字を合わせて「行動を成し遂げる」ということですね。

「遂行」の使い方を例文で紹介

「遂行」の使い方を例文で紹介します。

1.今回の人事は、任務を遂行する能力が高い人材を集めるのが目的だ。
2.職場の研修には様々な項目があり、業務を遂行するためには多くのことが大切だと分かった。
3.必要な調査はすべて終わり、仕事を遂行できたことに達成感を得られた。

すべて「任務や仕事をやり遂げる」という意味で使われています。また例文にあるように「遂行」という単語だけではなく、「遂行する」「遂行できた」というように使うことが多いです。

「遂行」や「遂」を使った言葉

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では「遂行」を使った言葉にどんなものがあるでしょうか。見てましょう。

職務遂行能力

まずは、「職務遂行」です。「職務遂行能力」という言葉でよく聞くかもしれません。「職務遂行能力」とは、「与えられた業務を最後までやり遂げる時に必要とされる能力」のことです。「職務遂行能力」が高い人材は業務を最後までやり遂げるため、業務を任せて大丈夫であるという信頼を得ることができます。

任務遂行・業務遂行・政策遂行

また「任務遂行」「業務遂行」「政策遂行」など、「○○遂行」という言葉は多くあります。どれも、○○の言葉を成し遂げるという意味ですね。いろいろな言葉の後に使用して「成し遂げる」意味を表すことができるので、使い方を覚えておくといいでしょう。

既遂(きすい)・未遂(みすい)

「遂」を使った言葉を紹介します。「既遂」と「未遂」です。この二つの熟語は対義語の関係にあります。

「既遂」は「既(すで)に遂げる」と書くことから「すでに、なし終わっていること。」「犯罪が完全に実現していること。」という意味があります。また「未遂」は「未(いま)だに遂げていない」と書くので「やりかけて、しとげないこと。」「 犯罪の実行に着手したが、まだ成し遂げていないこと。」という意味です。

「遂行」や「遂」がふさわしいシーン

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「遂行」という言葉は、実際にどのような場面で多く使われているのでしょうか。

\次のページで「常用漢字の「遂」は堅いイメージ?」を解説!/

常用漢字の「遂」は堅いイメージ?

「遂行」は、さまざまな法律や規定などによく見られる言葉です。そのため、比較的堅いイメージの文書で使用されることが多いと言えるでしょう。「遂」は常用漢字ですが、中学校卒業レベルの漢字です。やはり、少し難しい印象を受けますよね。

ちなみに常用漢字とは、「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安」として、内閣告示「常用漢字表」で示された現代日本における日本語の漢字です。

人名漢字の「遂」は避けた方が良い?

「遂」は人名にも使える漢字です。しかし「遂」は「なしとげる」という良い意味がある一方で、「ついに」「とうとう」という終わりを連想させるマイナスイメージも含まれます。また「既遂・未遂」の章でも解説したように、犯罪を連想させるかもしれません。そのため、人名には避けたほうが良いという考えもあるようです。

「遂行」の類語

「遂行」の類語を見てましょう。

「完遂(かんすい)」:完全にやりとげること

まずは「完遂」です。「完全にやりとげること。最後まで遂行すること。」という意味。「遂行」と同じく「遂」の字を使い、「最後までやり遂げる」という意味を持っています。また「完遂」も「かんつい」ではなく「かんすい」と読むので、気を付けましょう。

「貫徹(かんてつ)」:物事をやりとおすこと

次は「貫徹」です。「物事をやりとおすこと。貫きとおすこと。」という意味。「貫」は「貫(つらぬ)く」と読みます。意志・方針・考え方などを貫き通し、最後までくじけずに続けることを表していますね。

また「貫徹」を使った四字熟語に「初志貫徹(しょしかんてつ)」があります。「初志」は「思い立ったときの最初の気持ち・志」という意味。よって「初志貫徹」は「初めに心に決めた志を最後まで貫き通すこと」という意味になります。

「大成(たいせい)」:仕事や研究などを完全にしとげる

「大成」も「遂行」の類語です。意味は「長時間を費やして、仕事や研究などを完全にしとげること」。また「業績を成し遂げてすぐれた人になること」や「 多くの資料などを集めて一つの秩序だったものにすること」という意味も持っています。「医者として大成する」や「集大成」という使い方がありますね。

\次のページで「「遂行」の対義語」を解説!/

「遂行」の対義語

「遂行」の対義語を見てみましょう。

「断念(だんねん)」:あきらめること

まずは「断念」です。「自分の希望などを、きっぱりとあきらめること」という意味があります。最後までやりきることができなかった様子は、まさしく「遂行」と対の意味ですね。

「放棄(ほうき)」:投げ捨ててかえりみない

次は「放棄」です。「投げ捨ててかえりみないこと」という意味があります。「責任を放棄する」などと使いますね。また「自分の権利・資格などを捨てて行使しないこと」という意味もあります。「権利を放棄する」などの使い方です。

「遂行」の英語表現

「遂行」の英語表現を見てみましょう。

「遂行」の英語表現には「accomplishment」「 execution」「 performance」などがあります。状況によって、使い分けられるようにしたいですね。

「遂行」の多様性を考えよう

この記事では「遂行」の意味や使い方・類語・対義語などを説明しました。「遂行」は「任務や仕事をやりとげる」という意思の強さを感じる言葉ですが、一方で「遂」は「終わり」を表したり、犯罪をも連想させたりする漢字でした。使うべきところを間違えないように注意しましょう。

さて、何事も責任を持って「遂行」することは本当に素晴らしいです。しかし、周りの意見を取り入れながら柔軟に方向転換したり、時には適切に途中で切り上げたりすることも、「遂行」と同じくらい素晴らしいと思います。ある意味、このような場合も「遂行」と言えるかもしれませんね。幅広い視野を持って多様な「遂行」を取り入れながら、これからも物事に取り組んでいきたいと思います。

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国語言葉の意味

「遂行」の意味は?意志の強さを感じる使い方や類語・対義語などを元小学校教諭がわかりやすく解説

この記事では「遂行」について解説する。

端的に言えば「遂行」の意味は「任務や仕事をやりとげること」です。「遂行」に使われている「遂」にはどんな意味があるか知っているか?

小学校教諭として言葉の授業を何度もしてきた「こと」と一緒に、「遂行」の意味や使い方・類語・対義語などを見ていこう。

ライター/こと

元小学校教諭のwebライター。先生や子どもたちから「授業が分かりやすい!」との定評があった教育のプロだ。豊富な経験を活かし、どんな言葉も分かりやすく解説していく。

「遂行(すいこう)」の意味と使い方

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では早速「遂行」の意味と使い方を見ていきましょう。読み方は「すいこう」です。「ついこう」ではないので、気を付けましょう。

「遂行」の意味は「任務や仕事をやりとげること」

「遂行」の意味を辞書で確認します。

[名](スル)任務や仕事をやりとげること。「業務を―する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「遂行」

「遂行」の意味は「任務や仕事をやりとげること」です。仕事や務めなどを、初めの計画どおりに成し遂げるということ。

また「遂」は「遂(と)げる」と読み、この漢字だけでも「成し遂げる」という意味があります。「行」は行動を表すので、二つの漢字を合わせて「行動を成し遂げる」ということですね。

「遂行」の使い方を例文で紹介

「遂行」の使い方を例文で紹介します。

1.今回の人事は、任務を遂行する能力が高い人材を集めるのが目的だ。
2.職場の研修には様々な項目があり、業務を遂行するためには多くのことが大切だと分かった。
3.必要な調査はすべて終わり、仕事を遂行できたことに達成感を得られた。

すべて「任務や仕事をやり遂げる」という意味で使われています。また例文にあるように「遂行」という単語だけではなく、「遂行する」「遂行できた」というように使うことが多いです。

「遂行」や「遂」を使った言葉

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では「遂行」を使った言葉にどんなものがあるでしょうか。見てましょう。

職務遂行能力

まずは、「職務遂行」です。「職務遂行能力」という言葉でよく聞くかもしれません。「職務遂行能力」とは、「与えられた業務を最後までやり遂げる時に必要とされる能力」のことです。「職務遂行能力」が高い人材は業務を最後までやり遂げるため、業務を任せて大丈夫であるという信頼を得ることができます。

任務遂行・業務遂行・政策遂行

また「任務遂行」「業務遂行」「政策遂行」など、「○○遂行」という言葉は多くあります。どれも、○○の言葉を成し遂げるという意味ですね。いろいろな言葉の後に使用して「成し遂げる」意味を表すことができるので、使い方を覚えておくといいでしょう。

既遂(きすい)・未遂(みすい)

「遂」を使った言葉を紹介します。「既遂」と「未遂」です。この二つの熟語は対義語の関係にあります。

「既遂」は「既(すで)に遂げる」と書くことから「すでに、なし終わっていること。」「犯罪が完全に実現していること。」という意味があります。また「未遂」は「未(いま)だに遂げていない」と書くので「やりかけて、しとげないこと。」「 犯罪の実行に着手したが、まだ成し遂げていないこと。」という意味です。

「遂行」や「遂」がふさわしいシーン

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「遂行」という言葉は、実際にどのような場面で多く使われているのでしょうか。

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