この記事では「布石」について解説する。

端的に言えば布石の意味は「前もって準備すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「布石」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「布石」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「布石」の意味や語源・使い方まとめ

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布石」は「ふせき」と読みます。日常会話ではなかなか使われないですが、ビジネスシーンなどではよく使われますので覚えておきましょう。そして、「布(ぬの)」と「石(いし)」で、なぜ将来を見据えて準備すると言う意味の言葉になったのでしょうか。それでは早速「布石」の意味や語源・使い方を説明していきます。

「布石」の意味は?

まず初めに「布石」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「布石」には、次のような意味があります。

1.囲碁で、序盤戦での要所要所への石の配置。
2.将来のために配置しておく備え。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「布石」

上記の通り「布石」には二つの意味があります。

一つ目は囲碁の用語としての「布石」。「布石」とは、本来は囲碁で用いられていた言葉で、囲碁の序盤戦の打ち方のことです。囲碁の序盤戦は、今後の戦局を考えて要所要所に自分の石を置いていくのですが、これを「布石」と言います。

もう一つの意味は、将来に備えて準備する、と言う意味ですね。例えば就職活動に役立つようにあらかじめ資格を取っておく、など、未来でことがうまく運ぶように先んじて用意をしておくことなのです。

「布石」の語源は?

次に「布石」の語源を確認しておきましょう。

前述したように「布石」とは囲碁で使われる言葉です。囲碁における「布石」とは、対局が始まってお互いが盤上に石を置き、勢力圏を確保しようとする段階のことを言います。「布」は、敷く、広げる、と言う意味合いで「石」は碁石のことですから、序盤に碁石を置き広げていくと言う意味ですね。これから先にどんな対局を行っていくかを考えていく、自分の陣地の土台作りと言ったところでしょうか。このことから、「布石」は、将来を考えて準備する、と言う意味で一般的に使われるようになったのです。

\次のページで「「布石」の使い方・例文」を解説!/

「布石」の使い方・例文

それでは「布石」の使い方を実際の例文で見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.最近、老後のために布石を打つつもりで資産運用を始めた。
2.君が得意先をまわっていたのは、新事業展開を有利にするための布石だったんだろう。
3.布石は陣地を取るように、大きく打った方が良いと注意された。

例文1は、「布石を打つ」と言う言い方ですね。もともとが囲碁の用語ですから、「打つ」を接続して使われることが多いです。そして、例文1、2の「布石」は、将来のために準備をしておく、と言う意味ですね。

例文3は、囲碁で使われる「布石」の例文です。囲碁をたしなんでいる人はこちらの意味もよく耳にするでしょう。

また、「布石を投じる」と言う使い方を目にすることがあるのですが、これは誤用と言って良いでしょう。「一石を投じる」と言う別の言葉と混同してしまった誤用例ですね。「布石」は囲碁の用語ですから、「布石を打つ」が正しいとと覚えておいてくださいね。

「布石」の類義語は?違いは?

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「布石」の類義語には「お膳立て」が挙げられます。

「お膳立て」

お膳立て」は「おぜんだて」と読みます。漢字で「御膳立て」と書く事もありますね。もともと江戸時代から「膳立て」と言う言葉があり、膳に食器や料理を並べること、それを準備することを指します。これに接頭語の「お」がついて「お膳立て」となり、意味も転じて、ある事柄に備えて準備を整えること、と言う意味を持つようになったのです。

「布石」の類義語と言えますが、「布石」が自ら考えて将来のために行動することに対して、「お膳立て」は、物事を成功させるために裏方で準備をする、と言う意味合いを持ちます。「お膳立て」をするのは周囲の人で、その事柄の中心人物は「御膳立て」される側なのですね。使い方には注意しましょう。

それでは「お膳立て」の使い方を例文で確かめてみましょう。

\次のページで「「布石」の対義語は?」を解説!/

・あなたが前職で被った汚名を晴らす本を出版するためのお膳立ては、全て整ったよ。

「布石」の対義語は?

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「布石」が前もって準備すると言う意味ですから、「行きあたりばったり」や「場当たり」などが対義語としてふさわしいでしょう。

「行きあたりばったり」

「行きあたりばったり」は「いきあたりばったり」と「ゆきあたりばったり」、どちらも正しい読み方です。日常会話でも使われる身近な慣用句ですね。意味は、物事を深く考えず行動し、その時の成り行きで対処していく、と言う意味です。

「行きあたり」とは、行き止まりのこと。「ばったり」とは突然目の前に現れると言う意味合いですから、準備なしで唐突に壁にぶち当たる、と言うことを表しています。「布石」は前もって準備しておくことですから、対義語としてふさわしいでしょう。

「いきあたりばったり」の使い方を例文で確かめてみましょう。

・作戦もなく行きあたりばったりで挑戦しても、どうせ失敗するだろう。

「場当たり」

場当たり(ばあたり)」も「布石」と反対の意味を持っています。もともとは、演劇などでその場に合わせ機転をきかせて芸をする、と言う意味だったのですが、それが転じて、物事に計画性がなく、目先の事だけを考えてその場しのぎで行動する、と言う意味になりました。現在では、一般的に後者の意味で用いられることがほとんどでしょう。無計画でその場しのぎな様子ですから「布石」の対義語にふさわしいですね。

「場当たり」の使い方も例文で確かめてみましょう。

・場当たり的に対策をとったところで、感染症を収束することはできないだろう。

\次のページで「「布石」を使いこなそう」を解説!/

「布石」を使いこなそう

この記事では「布石」の意味・使い方・類語などを説明しました。「布石」はビジネス雑誌などの見出しコピーや、歴史小説などで見かける事が多いかも知れません。使うとしたら例えば「次世代を生き抜くための布石」や、「天下統一までの布石は打たれた」などでしょうか。なかなかスマートな印象の言葉ですから、目を引きますね。もちろん日常会話で使っても、有名な表現ですからだいたいの方には通じるでしょう。

そして、前述しましたが、誤用が多いですから気をつけて下さいね。「碁石」は「打つ」物ですから、「布石を敷く」「布石を投じる」「布石を置く」は適切ではありません。「布石を打つ」と、正しく使いましょう。

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「布石」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「布石」について解説する。

端的に言えば布石の意味は「前もって準備すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「布石」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「布石」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「布石」の意味や語源・使い方まとめ

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布石」は「ふせき」と読みます。日常会話ではなかなか使われないですが、ビジネスシーンなどではよく使われますので覚えておきましょう。そして、「布(ぬの)」と「石(いし)」で、なぜ将来を見据えて準備すると言う意味の言葉になったのでしょうか。それでは早速「布石」の意味や語源・使い方を説明していきます。

「布石」の意味は?

まず初めに「布石」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「布石」には、次のような意味があります。

1.囲碁で、序盤戦での要所要所への石の配置。
2.将来のために配置しておく備え。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「布石」

上記の通り「布石」には二つの意味があります。

一つ目は囲碁の用語としての「布石」。「布石」とは、本来は囲碁で用いられていた言葉で、囲碁の序盤戦の打ち方のことです。囲碁の序盤戦は、今後の戦局を考えて要所要所に自分の石を置いていくのですが、これを「布石」と言います。

もう一つの意味は、将来に備えて準備する、と言う意味ですね。例えば就職活動に役立つようにあらかじめ資格を取っておく、など、未来でことがうまく運ぶように先んじて用意をしておくことなのです。

「布石」の語源は?

次に「布石」の語源を確認しておきましょう。

前述したように「布石」とは囲碁で使われる言葉です。囲碁における「布石」とは、対局が始まってお互いが盤上に石を置き、勢力圏を確保しようとする段階のことを言います。「布」は、敷く、広げる、と言う意味合いで「石」は碁石のことですから、序盤に碁石を置き広げていくと言う意味ですね。これから先にどんな対局を行っていくかを考えていく、自分の陣地の土台作りと言ったところでしょうか。このことから、「布石」は、将来を考えて準備する、と言う意味で一般的に使われるようになったのです。

\次のページで「「布石」の使い方・例文」を解説!/

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