
端的に言えば跋扈の意味は「のさぼり、はびこること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
哲学、思想、政治に強い文系大学院生を呼んです。一緒に「市井」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/南原眞一
法学研究科にて哲学、思想、政治を学んでいる現役文系大学院生。本来の専門は20世紀辺りのドイツ政治思想。大衆に訴えかける能力があると指導教授に言われた筆致で言葉を丁寧に解説していく。
「跋扈」の意味は?
「跋扈」には、次のような意味があります。
《「後漢書」崔駰伝から。「跋」は越える意、「扈」は竹やな》魚がかごを越えて跳ねること。転じて、ほしいままに振る舞うこと。また、のさばり、はびこること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「跋扈」
普段全然使わない漢字が並んでいる「跋扈」を読めない人も居るのではないでしょうか。「ばっこ」と読みます。あるいは読みを知っていたとしても、それぞれの漢字の意味を知っている人はそう多くないでしょう。日常生活ではなかなかお目にかかれない跋扈を正しく使うために、ここで読みと用法をしっかりと確認します。
「跋扈」の語源は?
次に「跋扈」の語源を確認しておきましょう。ルネ・デカルトの「困難は分割せよ」とのアドバイスに則って、まずは「跋扈」を分けて考えてみましょう。
「跋」は「ばつ」と読みますが、この漢字はそもそも「乗り越えること」を意味します。そして、その意味合いから転じて三つの意味に派生しました。一つは、草を践んで野山を歩き回ること、二つは、荒々しく踏みにじること、三つは、文章のあとがきです。歩き回ることも、踏みにじることも荒々しさがありますね。本文を書いたあとに書くあとがきも高揚感からついつい文章が破綻して荒々しくなりがちです。
では次に「扈」を考えてみましょう。「扈」は「こ(ご)」と読みますが、主な意味は三つあります。一つは、竹で作った魚を捕る仕掛けの梁(やな)で、二つは、下僕や家来。「跋扈」では、一つ目の意味の梁(やな)という仕掛けを指しますが、二つ目の意味だと、例えば扈従(こしょう)は高い身分の人のお供を指しています。
つまり、荒々しさを意味する跋と、仕掛けを意味する扈が組み合わさっている「跋扈」は、その仕掛けから飛び跳ねて逃げる魚の姿をそもそもは意味しているのです。
\次のページで「「跋扈」の使い方・例文」を解説!/