この記事では「贔屓」について解説する。

端的に言えば贔屓の意味は「自分の気に入ったものに力を入れること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「贔屓」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「贔屓」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「贔屓」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「贔屓」の意味は?

「贔屓」には、次のような意味があります。

1.大いに力を入れること。大いに力を用いること。

2.自分の気に入った者を引き立て、特に力添えすること。後援すること。ある商店などを好意をもって特に利用すること。また、その人。「毎度ごひいきに」

3.ある人の代わりをすること。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「ひい-き」

「贔屓」は現在では二つ目の意味である「自分の気に入った者を引き立て、力添えすること」として使われることが多いです。

「エコヒイキ」という言葉も、この「贔屓」と関係があります。「エコ」は「依͡怙」と書く言葉で、意味は「一方に偏る。私欲。」です。そのため「エコヒイキ」は、「自分の気に入りの者や関係のある者だけの肩をもつこと」という意味になります。

現代では二つ目の意味で主に使われる「贔屓」ですが、一つ目や三つ目の意味も頭に入れておきたいですね。

「贔屓」の語源は?

次に「贔屓」の語源を確認しておきましょう。

「贔屓」はもともと中国の伝説上の生き物でした。龍から生まれたという出自を持ち、姿は亀に似ています。読み方は「ひいき」ではなく「ひき(Bixi)」でした。贔屓は、重いものを持つのが好きで、中国古来の石碑の土台の装飾に使われることが多いです。「ひき」は中国語において重いものを持つ際に力む様子を示した擬音語としての意味もあります。

「贔屓」は、かつては主に「贔屭」と書きました。「贔」は財産である貝が多いさまを、「屭」は多くの財産を抱えるさまを表しています。これが、「多くの荷物を抱える」という意味になり、転じて「盛んに力をふるう」という意味になりました。

\次のページで「「贔屓」の使い方・例文」を解説!/

「贔屓」の使い方・例文

「贔屓」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.あけましておめでとうございます。今年も当店をご贔屓のほどよろしくお願いいたします。

2.毎度ご贔屓ありがとうございます。

3.ご贔屓様よりお花を賜りました。

先ほども紹介した通り、「贔屓」は「自分の気に入った者を立てる」という意味で使われることが多いです。ビジネスや娯楽のシーンで使われます。

「贔屓」を使う際は贔屓されている側や贔屓されたい側が使うことが主です。目上の人や顧客に使う時は「ご贔屓」と丁寧な言い回しにして使いましょう。使用に適した場面は贔屓してもらうようお願いする・贔屓されて感謝する・新年の挨拶といった具合です。

また、歌舞伎や宝塚など芸能関係でも「贔屓」は使われます。特に目をかけて肩入れしてくれる人を、芸人の側から呼ぶ際に「ご贔屓様」「ご贔屓筋」と言う言葉で表現するのです。「パトロン」と言い換えることもできますね。また、宝塚では自分の好きな役者のことを「ご贔屓様」「ご贔屓組」と呼ぶことがあるそうです。現代では上品な言葉を使う小説でも見ることができます。

「贔屓」の類義語は?違いは?

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ここからは、「贔屓」の類義語を紹介します。類義語と「贔屓」との違いについても説明していきますね。

その1「愛顧」

「愛顧」は「商人や芸人、あるいは目下の者をひいきにし、目をかけて、ひき立てること。かわいがってよくめんどうをみること。」という意味です。「贔屓」と同様、贔屓されている側が使うことが主で、使う際には「ご愛顧」という形で丁寧に表現します。

「贔屓」と異なることは、「愛顧」は商売人が客に対して使うことが多いということです。また、スーパーやコンビニなどの日常に寄り添った店舗も使うことが多く、「贔屓」よりもカジュアルな印象があります。

\次のページで「その2「恩顧」」を解説!/

その2「恩顧」

「恩顧」は「目上の者が目下の者に情けをかけること。また、目下の者が目上の者から目をかけられていること。」という意味があります。

「恩顧にこうむる」「恩顧の者」という形でそのまま「恩顧」を使うことも可能です。「贔屓」や「愛顧」のように丁寧な形にして「ご恩顧」とするとビジネスなどのかしこまった時にも使えます。

「贔屓」と異なる点としては、「恩顧」は情けをかけるという意味が強いということです。

その3「引き立て」

「引き立て」は「人を重んじて特に挙げ用いること。特に目をかけること。」という意味です。「贔屓」と同じように重んじるという意味があります。かしこまった場面では主に「お引き立て」という形で使うことが可能です。

「引き立て」は「贔屓」と比較して、丁寧な印象があります。

「贔屓」の対義語は?

ここでは、「贔屓」の対義語を紹介していきます。「贔屓」は「自分の気に入った者を引き立てる」という意味なので、その反対は「引き立てない」「なべて同じように扱う」というものが適切でしょう。

その1「冷遇」

「冷遇」は「冷淡な対応。不当に低い待遇。」という意味です。「贔屓」が「自分の気に入った者を引き立てる」という意味なのに対して「引き立てない」「ひどい対応を取る」という反対の意味になります。

その2「公平」

「贔屓」は自分の気に入った者を重視するという意味のため、贔屓されない側からしたら不公平な状態にあります。その状態の反対が「公平」です。「公平」には「特定の人を贔屓しないこと。判断や行動が公正であること。」という意味があります。

「贔屓」の英訳は?

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ここでは、「贔屓」の英訳について紹介していきます。

\次のページで「その1「favor」」を解説!/

その1「favor」

形容詞「favorite」は聞いたことがある方も多いと思いますが、それに関係のある「favor」は、「寵愛、贔屓」「引き立てる。特に好く。」という意味があります。名詞としての意味も動詞としての意味も持っていますよ。

その2「patronage」

日本語では「パトロン」という言葉でなじみのある「patron」はフランス語です。英語では「patronage」と言います。動詞「取引先になる」として使う言葉でもありますが、「贔屓」という意味で用いたいのなら名詞として使う方が良いでしょう。

「贔屓」を使いこなそう

この記事では「贔屓」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「贔屓」は、慣用表現でも使われることが多く、日本人にもなじみの深い言葉です。ぜひ慣用表現の方も調べてみて、実際に使いこなしてみましょう。

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国語言葉の意味

「贔屓」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説!

その1「favor」

形容詞「favorite」は聞いたことがある方も多いと思いますが、それに関係のある「favor」は、「寵愛、贔屓」「引き立てる。特に好く。」という意味があります。名詞としての意味も動詞としての意味も持っていますよ。

その2「patronage」

日本語では「パトロン」という言葉でなじみのある「patron」はフランス語です。英語では「patronage」と言います。動詞「取引先になる」として使う言葉でもありますが、「贔屓」という意味で用いたいのなら名詞として使う方が良いでしょう。

「贔屓」を使いこなそう

この記事では「贔屓」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「贔屓」は、慣用表現でも使われることが多く、日本人にもなじみの深い言葉です。ぜひ慣用表現の方も調べてみて、実際に使いこなしてみましょう。

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