
端的に言えば遅ればせながらの意味は「時機に遅れましたが」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
今回、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「遅ればせながら」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/翠
中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。
「遅ればせながら」の意味は?
「遅ればせながら」とは、「遅れる」と「馳せる」、そして逆接の意味を持つ「ながら」がつながった、連語としての言葉です。そのため、まず辞書では「遅ればせ」について確認します。
1.他の人よりおくれてその場所にかけつけること。また、そのさま。おくれがけ。おくれあし。
2.好機を逸した後で、何かをすること。時機を失うこと。また、そのさま。手おくれ。
出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「おくれ-ばせ」
「遅ればせる」という言葉は「遅れて」「馳せる」という言葉が合体したものです。「はせる」には「かけつける」の意味があります。そのため、「遅ればせ」は「遅れてかけつける」という意味が第一義です。また、そこから派生して「手遅れ」という意味もあります。
「遅ればせ」が「遅れてかけつける」という意味ですから、逆接の「ながら」がつくことで「遅ればせながら」は「遅れてかけつけましたが」「時機が遅れましたが」という意味と捉えることが可能です。適切なタイミングを逃したとき、軽く謝罪の気持ちをこめて前置きとして使います。
「遅ればせながら」の語源は?
次に「遅ればせながら」の語源を確認しておきましょう。
先ほども紹介しましたが、「馳せる」という言葉の意味は「かけつける」です。「馳」という漢字は、「馬」にうねる時の音である「也」がつくことで「馬をうねらせる」つまり「馬を走らせる」という意味になります。日本文学の中でも『日本書紀』から「馳す」は使われていますが、いずれも戦いの際に馬で以って走る場面で使われているのです。
「遅れ馳せ」は『平家物語』や『義経記』の中で使用が確認されます。しかし「遅れ馳せながら」という言葉が使われ始めたのは比較的最近です。現代は馬を交通手段とすることはほぼないのですが、言葉はビジネスシーンなどで使われることにより残っています。
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