バブル時代って何が起きていた?モノの値段が上がるとか景気が良いと言った説明をよく見かけるが、平成以降に生まれた世代にはどうにも想像しづらい。そもそもバブルが始まるきっかけはなんでしょうか?バブル崩壊後に生まれたライターR175と「今どき」の例を使って解説していこう。

ライター/R175

関西の某国立大理系学部出身、高校教員免許持ちで生まれたのはバブル崩壊後。理系出身ということを活かして理屈や数字に重きを置いて、バブルを知らない世代に分かりやすい解説をする。

1.バブル経済とは

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まず、バブル経済とは株価や不動産価格等の時価(時間の経過で大きく変わる価格)が投機(安い時に買って高い時に売却して利益を出すこと)を目的とした売買によって経済成長より早いペースで高騰し、実態経済からかけ離れていっている状態です。

 

バブル経済では、ある特定のモノの価格が投機目的での需要が増えることで上昇します。価格は上昇しますが、そのモノ自体の価値が上がっているわけではなく実態の経済とは関係なく価格が上がり続けているわけです。投機によって出た利益が他のことにも使われるので、景気が良くなります。

 

さて、「バブル」と聞いてまず思い浮かべるのは、1980年代後半〜90年代にかけての好景気のことではないでしょうか?この時何が起こっていたのか記事の前半で解説し、後半では現代でも起こりそうな「バブル」の身近な例に触れていきましょう。

2.バブル経済(80年代)のきっかけ

まずは、1980年代後半に日本で実際に起きた「バブル経済」の背景を簡単にみていきましょう。

ドル安にリード〜プラザ合意〜

意外にも、バブル経済のきっかけは後述する「円高不況から始まりました。その不況の原因はプラザ合意による円高で輸出が不利なったことす。1985年、アメリカのプラザホテルにて主要5ヵ国(G5、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、日本)で為替レート安定化に関する合意が行われます。プラザ合意です。

簡単に言うと、ドル高だとアメリカからの輸出が不利になるので、ドル安に導くよう各国に合意させたというもの。具体的には為替相場に介入して、ドル安に導くようにしました。例えば、大量のドルを売って大量の円を買うという介入をします。ドルは供給量が増えるからレートが下がり、需要が増える円はレートが上がりますね。このようにして「ドル安」状態に導いたわけです。

ドル高で困ること

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なぜアメリカは「ドル高」を嫌ったのでしょうか。それは、ドル高だとアメリカからの輸出が不利ため。

外国で品物を売った時は、その国の通貨で支払われますが、ドル高だと外国通貨をドルに変換した時の金額が少なくなってしまうです。為替レートは1ドルが何円とか、1ユーロが何ドルと言った異なる通貨間での比率のこと。

例えば、1ドルが100円の場合と120円の場合を比較しましょう。1ドル100円ということは100円で1ドルが買えますが、1ドル120円になると120円出さないと1ドルが買えないということで、100円の場合よりドル高です。さて、アメリカから日本に12,000円で品物を売ったとしましょう。1ドルが100円(ドル安)なら、売り上げは120ドルですが、1ドル120円(ドル高)なら売り上げは100ドルしかありません。このようにドル高だと、輸出の時に不利になってしまいます。

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1980年代中頃の日本は不況だった?

80年代と言えば、「景気が良い」というイメージを持ちますがそれは最後の2年間の「バブル経済」の印象が強いからであり、実際の80年代はもちろん不況の期間もありました。

プラザ合意により、急速に円高が進むと今度は日本からの輸出が不利になりますね。先程同様に1ドル120円だったのが、ドル安円高の1ドル100円になったとして、アメリカで100ドル売り上げた時前者は12,000円の売り上げになりますが、後者は10,000円しか売り上げられません。当時の日本企業の利益も輸出によるところが大きく、不況が起きます。プラザ合意後の円高不況です。85年以降のドル円為替レートは以下のように推移し急速に円高が進みました。

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円高不況への対策

こうして起きた不況に対する景気対策として、公共投資の拡大と金利の引き下げを行います。

前者の公共投資ですが、プラザ合意のあった85年の行政投資額は30兆円未満からバブル崩壊直後の91年には40兆円越えに約1.5倍に拡大しました。金利ですが、公定歩合で見ると85年時点では年率5.00%だったものが87年にかけて半分の2.50%まで下げられました

公定歩合とは中央銀行(日銀)が民間の銀行に資金を貸し出す時の利率ですから、民間の銀行が企業や個人に貸し出す時の利率もおおよそこれと足並みを揃えることとなります。また、金利の引き下げだけではなく、この時期融資の判定を緩和しました。銀行からお金を借りるには結構大変ですよね。個人であればどんな企業に勤めてて年収いくらで等々、将来的に返済能力があるかどうか、企業であれば投資しようとしている事業にどれほどの収益が見込めるか等々厳しく審査されますね。しかしこの時期は不況対策として、融資を拡大すべくこういった基準を緩和し、企業や個人が資金を調達しやすい(お金を借りやすい)状態にしました。

3.不況対策からバブル経済へ

以上のような対策により、景気は爆発的に拡大しました。公共投資が増えれば単純に「仕事」が増え、お金が回りますね。そして、金利が下がることと融資の基準が緩和されたことで今までより「お金を借りやすく」なりこれも景気刺激策になりました。

不動産市場でのバブル

80年代〜のバブル経済を主に牽引したのは不動産バブルです。金利が下げられると同時に融資の判定が緩和されたと述べましたね。お金を借りる時にしばしば担保というものがつき、多くは土地を担保に取られます。担保とはお金を返せなかった時に代わりに引き渡す資産です。

 

お金を貸す基準を緩和する方法の1つとして、担保となる土地価格を高く見積もることが考えられます。例えば、融資と同じ額の担保を取るとして、今まで1000万円と見積もっていた土地を2000万円と見積もれば、その持ち主が借りられる金額は1000万円→2000万円に増え、よりお金を借りやすくなりますね。このように不動産査定価格を上げることで緩和していると「前より土地の査定が高くなった、土地の値段は上がっているのでは?」とも解釈できますね。

もし土地の値段が上がり続けるなら今買って高くなったから売れば儲けが出ます(投機)。また、今までなら不動産を買うほどの資金を準備出来なかった人でもお金が借りやすくなり不動産を購入することが出来ます。すると需要が増えることから更に価格が上がりますね。あとは繰り返しです。「不動産の値段が上がりそう」→「投機で儲けたい人が土地を買い求める」→「需要増加」→「価格が上昇」。このようにして不動産バブル、つまり実態経済とは関係のない価格上昇が起きました。不動産と同様、投機で儲けたい人の需要から株価も上昇し、バブル絶頂期1989年12月29日につけた日経平均株価38,957.44円は30年以上破られていない歴代記録です。

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\次のページで「4.バブルの終焉」を解説!/

4.バブルの終焉

こうした価格の上昇もどこかで限界が来ます。需要供給のバランスからも価格が上がると、需要が減りますね。また上述の公定歩合ですが、景気の過熱を防ぐため再び引き上げられましたいくら景気が良いと言っても、物価が高騰し過ぎるのも問題です。不動産価格が上昇し過ぎると儲け目的(投機)ではなく本当に不動産を求めている(実需)のひとが買いづらくなりますね。金利を引き上げて景気拡大にブレーキをかけようとしたわけです。バブル経済での、価格上昇は「需要」ありきなところもあります。

不動産価格が上がり過ぎたことに加えて、金利が上がって資金調達しにくくなると、需要が減って最終的には価格が伸び悩みました。既に投機目的で不動産を持っていたら「価格が下がる前に売ってしまおうと言うことで売りの取引が加速し、供給が増えることもあって価格が下がります価格が下がるトレンドが見えたらますます「売り」が増える。以下繰り返しでどんどん価格が下がるわけです。

それまで投機目的で買っていたのに買った時より価格が下がったら損をしますね。ましてや、借金をして買っていた場合は利子も払わなければなりませんが金利も上がっていてますます損失です。儲からなくなったら「節約」志向が進み、消費は落ち込み企業も儲からない。すると業績不振で株価も下がる。こうしてバブル経済が崩壊します。

5.身近に起きそうなバブルの例

ここからは、身近なシチュエーションからバブル経済が始まる様子を想定してみましょう。

仮想通貨

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近年仮想通貨も注目されていますね。仮想通貨そのものによって何かを購入することは出来ませんが、仮想通貨と実在する通貨(円、ドル、ユーロ他)を交換することはでき、その交換比率は刻々とします。このような仮想通貨の例としてBTC(ビットコイン)が有名ですね。

仮想通貨購入のハードルが下がったら?

例えば、スマホアプリから簡単に売買出来る仮想通貨Aコイン(ACと表記)があったとしましょう。1ACが約10万円で、最低ロット10AC以上持っていないと取引出来ないものとしましょう。Aコインを取引するためにはまず100万円以上用意して購入するところからスタートです。ここで仮に、Aコインの価格が上昇し続けていてて投機によって儲かりそうでもこれでは少しハードルが高いですね。

実際のバブル時代との比較

さて、バブル期直前の円高不況への対策として何が行われたか?そう、資金を調達しやすくすることでしたね。それを今回のAコインに当てはめましょう。最初に100万円以上準備するハードルが高いからこれを無くすために新しく取引のルールを追加です。Aコインを買う時その金額を支払うのではなく、後に売却した時の差額を支払うor貰うというルールにしたらどうでしょうか?FXのようなイメージですね。10AC買うとしても100万円払う必要はありません。もし1ヶ月後に1ACが11万円に値上がりしていて、その時売却すれば差額の10万円が貰える。仮に1AC9万円に暴落していて、それ以上損するのは怖いから売るとなっても、差額の10万円を支払えばいいわけです。100万円で買って110万円で売ると言った大きなお金を動かさなくていいわけですね。

バブル期直前の金利下げや融資の基準緩和とは一見違うように見えますが、取引のハードルが下がると言う意味でこれは同じ結果につながっています。バブル期は手持ち現金が少なくても容易に貸してもらえるから大きな金額の取引をするチャンスがある。Aコインの例でも同じく、手持ちの現金が少なくても売買後の差額で

取引するから、金額の大きな取引をするチャンスがある同じことですね

\次のページで「取引ハードルが下がってAコインの人気上昇」を解説!/

取引ハードルが下がってAコインの人気上昇

さて、スマホで出来るは、取引に参加するハードルが下がったはとなると、Aコインの取引に人気が出てきそう。そうなるとAコインの需要が増加します。Aコインを欲しい人が沢山いるわけで、そうなるとAコインの価格が上がりますね。

価格が上昇し続けるAコイン

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気が付けばいつチャート見てもAコインのレートは上がっています。今日買って来週売れば数%儲かりそうだ。そんなペースで価格上昇が続いてるとしましょう。価格上昇していると言っても実際に動かすお金は差額だけのため、ハードルは低い。よし買おう!そう考える人が増えるはずです。買い手が多いと言うことでAコインの価格はどんどん上がるでしょう。また、そんな様を見たら、今買って来週売って儲けよう。そう考える人もますます増えて、以下繰り返し。どんどんレートが伸び続けます

Aコインバブル

Aコインの価格が上がり続ければ、売買した人たちは利益を得ることが出来ます。面白ろ半分で始めたアプリで思わぬ副収入。美味しいものでも食べようか。ブランドものの洋服を買おうか。もう少し広いマンションに引っ越すか。軽自動車をやめて大きなエンジンを搭載した高級セダンに乗り換えようといった具合に、少なからずお金を使うことでしょう。

Aコインで儲けた人たちがお金を使ってくれると、お店が儲かる、お店に商品を卸している業者が儲かる、商品を作っている会社も儲かる。企業の業績が良くなると、企業の成長を期待して株を求める人が増えることでしょう。様々な企業の株価が上昇すると今度は株で儲けようとする人も出てきますね

先ほどのAコインと同じで今買って高くなってから売れば儲かる。株価がどんどん上がり続けていれば株の需要も膨らみ、需要が増えるから更に株価が上がる。このようになれば、まさしくバブル経済です。

Aコインバブルの終焉

しかしこのようなAコインバブルが起きてもどこかで崩壊する可能性が高いでしょう。Aコインの取引は差額を払ったりもらったりするだけだがらハードルは低いと言っても例えば1コインが1000万円になったらどうでしょうか?最低取引ロットが10ACなので1億円です。仮に価格が1%下がって1ACが990万円になっただけでも10AC分で損失は100万円。ちょっとリスクが高いですね。「流行ってるけど高すぎてリスクあるから私はもうやめよう」と言う人が出てきて需要が減り、Aコイン価格は下がることでしょう。

価格が下がり始めたら、下がる前に売っちゃえ」と考えて売る人が増え、供給が増えますね。価格が下がっている時に買おうとする人(いわゆる押し目買い、下がった時に買っておくこと)は少数。供給が多く需要が少ないと更に価格は下がり、皆んな損をする前に売ろうとするからまた価格が下がる。損をする人も出てきて彼らは節約し始めるでしょう。そして景気が悪くなります。

バブルのきっかけは「不況」だった

バブルのきっかけは「円高不況」でした。円高で輸出が不利になることで起きた「不況」への対策として急激に政策金利を下げて銀行からの融資を拡大した結果、経済の循環が良くなり景気が過熱、バブル時代となったわけです。

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現代社会

バブル時代のきっかけは?どうしてバブルは崩壊したの?現代の​身近な例を使って教員免許取得ライターがわかりやすく解説!

1980年代中頃の日本は不況だった?

80年代と言えば、「景気が良い」というイメージを持ちますがそれは最後の2年間の「バブル経済」の印象が強いからであり、実際の80年代はもちろん不況の期間もありました。

プラザ合意により、急速に円高が進むと今度は日本からの輸出が不利になりますね。先程同様に1ドル120円だったのが、ドル安円高の1ドル100円になったとして、アメリカで100ドル売り上げた時前者は12,000円の売り上げになりますが、後者は10,000円しか売り上げられません。当時の日本企業の利益も輸出によるところが大きく、不況が起きます。プラザ合意後の円高不況です。85年以降のドル円為替レートは以下のように推移し急速に円高が進みました。

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円高不況への対策

こうして起きた不況に対する景気対策として、公共投資の拡大と金利の引き下げを行います。

前者の公共投資ですが、プラザ合意のあった85年の行政投資額は30兆円未満からバブル崩壊直後の91年には40兆円越えに約1.5倍に拡大しました。金利ですが、公定歩合で見ると85年時点では年率5.00%だったものが87年にかけて半分の2.50%まで下げられました

公定歩合とは中央銀行(日銀)が民間の銀行に資金を貸し出す時の利率ですから、民間の銀行が企業や個人に貸し出す時の利率もおおよそこれと足並みを揃えることとなります。また、金利の引き下げだけではなく、この時期融資の判定を緩和しました。銀行からお金を借りるには結構大変ですよね。個人であればどんな企業に勤めてて年収いくらで等々、将来的に返済能力があるかどうか、企業であれば投資しようとしている事業にどれほどの収益が見込めるか等々厳しく審査されますね。しかしこの時期は不況対策として、融資を拡大すべくこういった基準を緩和し、企業や個人が資金を調達しやすい(お金を借りやすい)状態にしました。

3.不況対策からバブル経済へ

以上のような対策により、景気は爆発的に拡大しました。公共投資が増えれば単純に「仕事」が増え、お金が回りますね。そして、金利が下がることと融資の基準が緩和されたことで今までより「お金を借りやすく」なりこれも景気刺激策になりました。

不動産市場でのバブル

80年代〜のバブル経済を主に牽引したのは不動産バブルです。金利が下げられると同時に融資の判定が緩和されたと述べましたね。お金を借りる時にしばしば担保というものがつき、多くは土地を担保に取られます。担保とはお金を返せなかった時に代わりに引き渡す資産です。

 

お金を貸す基準を緩和する方法の1つとして、担保となる土地価格を高く見積もることが考えられます。例えば、融資と同じ額の担保を取るとして、今まで1000万円と見積もっていた土地を2000万円と見積もれば、その持ち主が借りられる金額は1000万円→2000万円に増え、よりお金を借りやすくなりますね。このように不動産査定価格を上げることで緩和していると「前より土地の査定が高くなった、土地の値段は上がっているのでは?」とも解釈できますね。

もし土地の値段が上がり続けるなら今買って高くなったから売れば儲けが出ます(投機)。また、今までなら不動産を買うほどの資金を準備出来なかった人でもお金が借りやすくなり不動産を購入することが出来ます。すると需要が増えることから更に価格が上がりますね。あとは繰り返しです。「不動産の値段が上がりそう」→「投機で儲けたい人が土地を買い求める」→「需要増加」→「価格が上昇」。このようにして不動産バブル、つまり実態経済とは関係のない価格上昇が起きました。不動産と同様、投機で儲けたい人の需要から株価も上昇し、バブル絶頂期1989年12月29日につけた日経平均株価38,957.44円は30年以上破られていない歴代記録です。

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