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「パラトルモン」って何?血中のカルシウムを調整するホルモン?現役理系大学院生がわかりやすく解説!

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現在、日本における骨粗鬆症の患者数は1300万人と推定されている。パラトルモンが過剰になると、骨の破壊が促進されて骨粗鬆症になり、骨折のリスクが急増する。持続的なパラトルモンの過剰は骨密度を低下させるが、間欠的投与では逆に骨芽細胞に作用して骨形成を促進するという特徴的な作用も持っているんだ。

これまでの骨粗鬆症の薬は破骨細胞の働きを抑制するもので「骨粗鬆症の進行を防ぐ」ものだった。パラトルモンの骨を形成する効果は「骨粗鬆症を治す」可能性も期待されており、実際に臨床の現場で骨粗鬆症の治療に用いられているぞ。

小腸でのカルシウム吸収の促進

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2つめは食べ物から摂取したカルシウムの吸収を促進して血中カルシウム濃度を上昇させる方法です

食べ物に含まれるカルシウムはまず胃酸などによって溶かされカルシウムイオンになり、小腸で吸収されます。吸収のメカニズムは2つあり、1つめは活性型ビタミンDの作用により能動的にカルシウムを吸収する方法(能動輸送)。2つめは濃度差を利用した受動輸送により血管内に吸収する方法です。パラトルモンは活性型ビタミンDの産生を促進させることで小腸でのカルシウムの吸収量を増加させて血中カルシウム濃度を上昇させます。

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食事から十分なカルシウムを摂取しないと、骨のカルシウム量が減少していくことになる。

日本人の食事摂取基準では1日の推奨量を18~29歳男性で800 mg、30~49歳男性で650 mg、50歳以上の男性で700 mg、18歳以上の女性で650 mgとしているが、2019年の「国民健康・栄養調査」によると、全年代のカルシウムの摂取量は推奨量に足りていないと報告されているぞ。

腎臓での再吸収の促進

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最後、3つめは腎臓の遠位尿細管でのカルシウムの再吸収を促進させて血中カルシウム濃度を上昇させる方法です。

通常、腎臓の糸球体で濾過されたカルシウムのうち約98〜99%は再吸収され、残りの1~2%(1日200 mg程度)のカルシウムを尿中に排出しています。パラトルモンはカルシウムの再吸収を促進して尿中に排泄されるカルシウムを減らし、血液中のカルシウム濃度を上げる仕組みです。

また、パラトルモンが骨を溶かした際にはカルシウムだけでなく血液中のリンも増加します。これは骨を作っているカルシウムはリンと結合した「リン酸カルシウム」で存在しているためです。血液中でもリンはカルシウムと結合する性質があり、リンの増加は血中カルシウム濃度の低下につながってしまうため、パラトルモンは腎臓でのリンの排泄を促進させています。

さらに、パラトルモンは腎臓でビタミンDを活性型ビタミンDへと変換させることで小腸でのカルシウムの吸収を促進させる働きもあり、このようにパラトルモンは様々な方法で血液中のカルシウム濃度を上げているのです。

カルシウム濃度を低下させるホルモン

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パラトルモンは血中カルシウム濃度を上昇させるホルモンなら、低下させるホルモンはあるの?という疑問が湧くと思いますが、もちろん存在しています。

血液中のカルシウムを減少させるように働くホルモンは甲状腺から分泌される「カルシトニン」です。カルシトニンによるカルシウムの濃度の下げ方の戦略は2つ。1つめは破骨細胞に作用して骨からのカルシウムの放出を抑制して、骨へのカルシウムとリン酸の沈着を促進すること。2つめは腎臓に作用して、尿中へのカルシウムとリン酸の排泄を促進して血液中のカルシウム濃度を下げる方法です。カルシウム濃度が低下すると分泌が抑制されるようにネガティブフィードバック調節を持っています。

カルシウムを摂って日光に当たろう!

血液中のカルシウム濃度を上げる「パラトルモン」について解説をしました。カルシウム濃度は非常に厳密に保たれいて、この調整メカニズムが破綻すると、高カルシウム血症や低カルシウム血症など様々な病気の原因になります。

また、現代の食生活ではカルシウムの摂取不足が大きな問題のひとつです。食事からのカルシウムが足りなければ骨から補給するしかないため、この状態が続くと骨のカルシウム沈着障害により骨が弱くなり、くる病や骨軟化症や将来的には骨粗鬆症へと繋がります。

そして、実はカルシウムを補給するだけでは不十分です。いくらカルシウムを食べたとしてもそれが腸から吸収されなければなりません。そのためには活性型のビタミンDが必要で、ビタミンDの活性化には日光(紫外線)も必要なのです。カルシウムは必要量を摂り日光に当たってカルシウム濃度を保ち、骨の健康を守りましょう。

イラスト使用元:いらすとや

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