
心臓の心房と心室の働きとは?心臓の構造と拍動の仕組みを現役理系大学院生がわかりやすく解説!
心臓といえば血液を全身に送り出す、循環器系の中心的な役割を果たす臓器だという事はみんな知っていると思う。
では、心臓はどのような構造をしていて、どのように制御されて規則正しく拍動して全身に血液を送っているのでしょうか。
心臓の構造と制御の拍動の仕組みを「心房心室」に焦点を当てながら、生物に詳しい現役理系大学院生ライターcaoriと一緒に解説していきます。

ライター/Caori
国立大学院の博士課程に在籍している現役の理系大学院生。とっても身近な現象である生命現象をわかりやすく解説する「楽しくわかりやすい生物の授業」が目標。
心臓とは

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全身の細胞が生きて働くためには、絶えず血液を介して必要な栄養や酸素を送り届け、細胞から排出された老廃物や二酸化炭素を運びだす必要があります。血液を全身に循環させるための中心的な役割を担っている臓器が心臓です。
一般的には心臓は左胸にあると思われていますが、実際には左胸というよりは胸の中央、やや左側の位置にあります。 心臓の大きさはにぎりこぶし程度、重さは200~300gでリンゴ1個分くらいです。成人の血液量は約5~6リットルで、心臓から動脈へ拍出される血流量は安静時には毎分約5リットル、激しい運動時には25リットルと言われています。
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心臓の構造

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心臓は筋肉(心筋)で出来た袋状の構造をしていて、真ん中にある「壁(中隔)」で左右の部屋に分かれ、さらに上下に分ける「弁」によって上の部屋(心房)、下の部屋(心室)に分かれます。つまり、心臓は左心房、左心室、右心房、右心室の計4部屋です。特に血液を全身に送り出す左心室の壁は厚みがあり、右心室に比べて3倍の厚みがあります。
左側の2部屋(左心房、左心室)を左心系といい、肺からの血液を受け入れて全身臓器に送り出すため「体循環」や「大循環」。右側の2部屋(右心房、右心室)は右心系といって、全身からの血液を受け入れて肺に送り出すため「肺循環」と呼びます。
心臓の機能

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心臓は規則的に収縮と弛緩を繰り返し、血液を体全身に送り出すポンプの役割をする臓器です。
具体的には、心室が拡張しているときは心房が収縮して、心室が収縮しているときは心房は拡張する。というように、心室と心房が規則正しく交互に収縮と拡張を繰り返すことでポンプの働きをしています。心室と心房の間には「弁」という逆流防止装置がついているので、血液は「心房→心室」の方向にしか流れないことが重要なポイントです。
心臓は1分間に約60~80回収縮し、拍動の回数は1日約10万回。もちろん生物が生きている途中で心臓が働きを休むことはないので、一生の間にはなんと40億回以上も拍動を打ち続けることになります。途方もない数字ですね。
心臓の制御システムー刺激伝達系ー

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心臓はどのようにして心室と心房を交互に規則正しく収縮・拡張させているのでしょうか。その答えは、心筋を動かすための電気刺激の発生と伝導を行っている特殊な心筋です。
右心房の上の方に、心拍動の命令を出す「洞房結節」という組織があり、電気刺激のスイッチのような役割をしています。「洞房結節」は脳や脊髄からの刺激がなくても、規則正しくスイッチをオンにして電気を流し、心臓の収縮のリズムを作り出すシステムを備えているのです。
洞房結節で生じた電気は右心房の下側にある房室結節へと伝わり心房を収縮させます。さらに、房室結節から「His束」へ、左室に向かう「左脚」、右室に向かう「右脚」へと枝分かれし、細かく枝分かれしたプルキンエ線維へ伝導して、心室へと電気刺激が伝わり心室が収縮します。
つまり、房室結節から電気刺激を受ける時間差があるために、心房の収縮に遅れて心室の収縮が起こる仕組みです。房室結節は自律的に規則正しく電気スイッチをオンにするので、心房と心室の収縮も規則正しく交互に起こります。この一連の電気刺激の流れが刺激伝達系です。
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