この記事では「吝嗇」の意味について解説する。

このことわざの意味は端的に言うと「ケチな性格」といったところですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

公務員として公文書作成や出版社での校閲業務といった経験を持つwebライターの本木を呼んです。一緒に「吝嗇」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/本木

大学では理系専攻で、物事の仕組みや成り立ちについて考えることを得意としている。「吝嗇」の意味について、言葉の細かなニュアンスまでじっくりと解説していく。

「吝嗇」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「吝嗇」の意味や使い方を見ていきましょう。

「吝嗇」の意味は?

「吝嗇」は「りんしょく」と読み、次のような意味があります。

ひどく物惜しみをすること。また、そのさま。けち。「吝嗇な人」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「吝嗇」

上記のとおり、物やお金を使うことを極端に惜しんだり、節約や倹約することが度を過ぎてしまうような状態を指して「吝嗇」と言います。普段使う言葉に言い換えると「ケチ」や「せこい」ですね。ほとんどの場合に悪い意味で使われ、文学作品などでは「けち」、「しみったれ」などといった言葉に「吝嗇」の字が当てられる例が見られます。

次に、漢字を一文字ずつ分けて確認してみましょう。「吝」は音読みでリン、訓読みでしわ-い、やぶさ-か、おし-むと読み、この一文字だけでも「物惜しみする」、「けち」を表します。熟語の例としては「鄙吝(ひりん)」、「倹吝(けんりん)」などがあり、いずれもけちなことを意味するものです。

「嗇」は音読みでショク、訓読みでおし-む、やぶさ-か、とりい-れ、と読み、こちらも一文字のみで「けち」を意味するほか、「作物を取り入れる」という意味もあります。「繊嗇(せんしょく)」、「慳嗇(けんしょく)」という熟語があり、こちらもけちなことを意味する言葉です。

なお「やぶさか(吝か、嗇か)」は「やぶさかでない」の形でよく見られますが、この場合は「喜んで…する」、「…する努力を惜しまない」という意味となります。否定語がともなっているため「仕方なく…する」、「…したくない」などの意味に誤って捉えられやすい表現ですので、気をつけましょう。

「吝嗇」の使い方、例文

それでは「吝嗇」の使い方を、例文を使って見ていきましょう。この言葉は、実際の会話や文章では以下のように用いられます。

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1.妻は何につけても節約、節約で、必要以上に生活費を切り詰めようとする。あれでは倹約をとおり越して吝嗇、おかげで僕の昼食は毎日カップ麺だ。

2.彼は非常にけちなことで仲間内では有名で、喫茶店の砂糖を持ち帰るとか、スーパーの試食に何度も並ぶとか、その吝嗇家エピソードは挙げだしたらとにかくキリがない。

このように、極端にケチなさまや行動に対して、吝嗇という表現を用いることができ、また2のように吝嗇である人のことは「吝嗇家」、「吝嗇漢(男性のみ)」と表わされます。当然ながら、ほとんどの場合において悪い意味で使われ、その対象がケチな人間であると批判していることになるので、本人の耳に入ってもよいのかなど、使用する場面や状況、用法には十分注意しましょう。

「吝嗇」の類義語は?違いは?

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ここでは「吝嗇」に似た意味を持つ言葉について説明します。

「守銭奴」

「しゅせんど」と読み、お金を貯めることに執着するけちな人のことを言います。ニュアンスとしては吝嗇よりも対象をけなす意味合いがさらに強い言葉です。「守銭虜(しゅせんりょ)」とも言います。

「銭ゲバ」

「ぜにげば」と読み、お金に執着する人、ケチな人のことを指す言葉です。この言葉の由来は、1970年代に漫画誌に掲載されていた同名の漫画からきており、その作中で主人公がお金のためならなんでもする銭ゲバである、と説明されています。

なお「ゲバ」とはもともと暴力を意味するドイツ語「Gewalt(ゲヴァルト)」の略語であり、漫画連載当時に流行していた学生運動などにおける抗争や暴力を指すものです。ほかにも内部抗争を「内ゲバ(内部ゲバルト)」と呼ぶなど、「ゲバ」は当時よく使われていました。

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「金の亡者」

「亡者(もうじゃ)」はもともと死んだ人や、成仏できずにさまよっている魂のことを意味しますが、そこから転じてお金や権力などに強く執着する者のことをも指します。ですから特に「金の亡者」といった場合にはお金に執心する人のことを指すこととなり、吝嗇と近い意味を持つ言葉であるといってもよいでしょう。

「吝嗇」の対義語は?

さらに、「吝嗇」の対義語も見ていきましょう。

「太っ腹」

「ふとっぱら」と読み、気前がいいことや度量が大きいことを表現する言葉です。例えば会社の後輩によくおごる人を指して、「太っ腹な人」などと言ったりします。

「浪費」

「ろうひ」と読み、無駄づかいをすることを指す熟語です。吝嗇の対義語としては「お金を無駄づかいすること」の意味に限定されますが、物や時間を無駄に使うことに対しても「浪費」と言うことができます。

「浪」は「波浪(はろう)」などで用いられる波の意味、「浪人」などさすらうという意味、そして「浪費」における「みだりに」の意味、の三つの意味を持つ漢字です。

「吝嗇」の英訳は?

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「吝嗇」を英語で表すとすればどのような表現になるのでしょうか。

「miserly」

お金を貯めるのが好きであったりお金を使うことを強く嫌う様子を表わす形容詞で、「しみったれた」などと訳される単語です。なお名詞形は「miser」で、こちらは守銭奴などの日本語訳が当てられます。

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「cheap」

「cheap」と言えば安い、安っぽいといった訳がまず思い浮かびますが、けちな、しみったれな、という意味も持っています。

「tight」

こちらも、服がぴったりとしている、きつい、などが重い浮かばれる単語ですが、けちな、という意味もあわせ持っています。

「吝嗇」を使いこなそう

この記事では「吝嗇」の意味・使い方・類語などを説明しました。

今の世の中ではお金が大きな力を持ち、極端に言えばお金があれば何でもできる、といったような考えに陥りがちです。しかし倹約や節約も度を越してしまうことはそれ自体が卑しいと感じられますし、ともすれば家族や友人など周囲の人に迷惑がかかることもあります。清貧という言葉があるように、たとえまずしくても心や行いは正しくありたい…と、吝嗇という言葉からはそのようなことが連想されました。

「吝嗇」は普段の会話で使われることは少なく、書き言葉、特に小説でしばしば見られる表現であることから、どこか文学的で知的な雰囲気のある言葉であると思います。機会があれば、この言葉をぜひ使ってみてください。

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国語言葉の意味

「吝嗇」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

「金の亡者」

「亡者(もうじゃ)」はもともと死んだ人や、成仏できずにさまよっている魂のことを意味しますが、そこから転じてお金や権力などに強く執着する者のことをも指します。ですから特に「金の亡者」といった場合にはお金に執心する人のことを指すこととなり、吝嗇と近い意味を持つ言葉であるといってもよいでしょう。

「吝嗇」の対義語は?

さらに、「吝嗇」の対義語も見ていきましょう。

「太っ腹」

「ふとっぱら」と読み、気前がいいことや度量が大きいことを表現する言葉です。例えば会社の後輩によくおごる人を指して、「太っ腹な人」などと言ったりします。

「浪費」

「ろうひ」と読み、無駄づかいをすることを指す熟語です。吝嗇の対義語としては「お金を無駄づかいすること」の意味に限定されますが、物や時間を無駄に使うことに対しても「浪費」と言うことができます。

「浪」は「波浪(はろう)」などで用いられる波の意味、「浪人」などさすらうという意味、そして「浪費」における「みだりに」の意味、の三つの意味を持つ漢字です。

「吝嗇」の英訳は?

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「吝嗇」を英語で表すとすればどのような表現になるのでしょうか。

「miserly」

お金を貯めるのが好きであったりお金を使うことを強く嫌う様子を表わす形容詞で、「しみったれた」などと訳される単語です。なお名詞形は「miser」で、こちらは守銭奴などの日本語訳が当てられます。

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