
「独断」
正しい根拠に基づかず、自分だけで判断することを指します。例えば自分の好みを表明するときに、「私の独断と偏見ですが一番歌が上手い歌手は○○さんだと思います」などと言いますね。
論理的でない判断という点は「恣意的」と通じる点がありますが、「恣意的」から感じられる「思いつき」のニュアンスよりは確固とした決断のイメージが強い言葉です。
「恣意的」の対義語は?
次に「恣意的」の反対の意味を表す言葉を紹介します。
「機械的」
意思を持たずに決まった動作を行う様子をいいます。機械的に判断すれば自分勝手な考えが入り込む余地はないので、「恣意的」にもなりようがありません。
ただ、「機械的」はあくまでも「意見が入らない」のであって、「恣意的と異なり思いつきではなく論理的」という意味での対義語ではない点に注意しましょう。
ちなみに、一定の決まりに従っていることを表す「規則的」という言葉もありますね。この言葉は「恣意的」が持つ「偶発的で論理に基づかない」という点の反対といえますが、人が何かを判断する様を「規則的」とはあまり言わないので対義語としては弱いかもしれません。
「恣意的」の誤用論議について
桜木先生ご指摘のように、「恣意的」の意味が話題になったことがあるのでご紹介しましょう。
まず、「恣意的」が持つ「勝手気まま」は、1つには「偶発的、ランダム」というニュアンス、もう1つは「意図的」に近いニュアンスが含まれます。「恣意的な報道」という際は後者に当たり、「勝手な判断による報道」ということ。
そして、1つ目の「偶発的」のみが正解で「意図的」に近い使用例は誤用とする指摘がありました。つまり「恣意的な報道」のような使い方はおかしい、というもの。この件については国語辞書の編纂者から「どちらの意味も正しい」という発信があり、一応の決着を見たようです。
違和感のある使い方を見たり聞いたりしたときは、すぐに誤用だと騒ぐのではなく自分で国語辞典などでしっかり確認してから対応したいものですね。
「arbitrary」
形容詞で、「個人の好みに任せた」や「偶発的な」という意味です。「任意の」「独断の」と訳されることも。原則にとらわれず思うままに、という意味で「恣意的」の訳語としてしっくりきますね。
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