この記事では「恣意的」について解説する。

端的に言えば恣意的の意味は「勝手気まま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「恣意的」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

自ら恣意的だと気づくのは難しそうなので、常に客観的に自分の思考や行動を振り返る必要があると感じているとのこと。恣意的とはどんなときに使う言葉なのか、似た言葉との違いも含めて解説してもらう。

「恣意的」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「恣意的」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「恣意的」の意味は?

「恣意的」には、次のような意味があります。

気ままで自分勝手なさま。論理的な必然性がなく、思うままにふるまうさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

このように自由気まま、わがままで気まぐれといったニュアンスの「恣意的」という言葉は、正しい意味を知らない人が意外と多いようです。

「意味」を引用したデジタル大辞泉が行った調査では、約3分1の人が「目的をもって」という意味だと誤った回答を選んでいます(2021年1月時点)。

「恣意的な解釈は誤解のもとだから厳禁だ」などビジネスシーンでも使われる言葉なので、ぜひ正確な意味と使い方を覚えておきましょう。

「恣意的」の語源は?

次に「恣意的」の語源を確認しておきましょう。

まず「恣」という漢字は訓読みは「ほしいまま」。「権力をほしいままにする独裁者」といった表現に見覚えがある人もいるのではないでしょうか。この文字は上が「人が息をついている様子」の象形、下は「心」ですから心臓です。吐息をついてほっとすることから、リラックスして気ままな様子を表しています。次に「意」は意見、意思といった言葉からも分かるとおり「心に思うこと、気持ち」のこと。

ですから「恣意」は自分の思いどおりにふるまう心、気ままな考えのことで、「的」をつけてそうしたふるまい方を示す言葉になっています。

\次のページで「「恣意的」の使い方・例文」を解説!/

「恣意的」の使い方・例文

「恣意的」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・上司が恣意的に部下を評価するようでは、会社の未来は暗いのではないか。

・医療に関する情報は人の命にかかわるものだから、素人が恣意的な判断で意見を発表するのは考え物だ。

・恣意的なことばかり主張する評論家は他者を否定することも多く、大衆からの支持を得られないことが多い。

こうした例文からも分かるように、「恣意的」が用いられるのは本来論理的に行動すべきとか、自分勝手に行動してはいけない場面に限られます

にもかかわらず偶然任せや思いつきで行動してしまったことを非難するニュアンスで使われるのが「恣意的」です。

ですから、そもそも自由が認められることについて使うのは考え物。「レストランで恣意的にそのとき食べたいものを選んだ」などと使うのは違和感がありますから気をつけましょう。

「恣意的」の類義語は?違いは?

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「恣意的」と同じような意味で使える言葉を見ていきましょう。

「気の向くまま」

明確な方針に従うのではなく、そのときの気分次第で物事のやり方を変えるなど、自由気ままな様子を表します。

「風の向くまま気の向くまま」と表現されることもありますよ。英語で言うとランダム、アトランダムという表現が合うイメージです。

この「気の向くまま」は、感情のままにという点では「恣意的」と共通します。ですが「論理的に行動すべきなのに」といった背景はないという違いも。ですから単純に「自由でいいなあ」と言いたい場合なら、「恣意的」よりも柔らかいニュアンスで伝えられますよ。

\次のページで「「独断」」を解説!/

「独断」

正しい根拠に基づかず、自分だけで判断することを指します。例えば自分の好みを表明するときに、「私の独断と偏見ですが一番歌が上手い歌手は○○さんだと思います」などと言いますね。

論理的でない判断という点は「恣意的」と通じる点がありますが、「恣意的」から感じられる「思いつき」のニュアンスよりは確固とした決断のイメージが強い言葉です。

「恣意的」の対義語は?

次に「恣意的」の反対の意味を表す言葉を紹介します。

「機械的」

意思を持たずに決まった動作を行う様子をいいます。機械的に判断すれば自分勝手な考えが入り込む余地はないので、「恣意的」にもなりようがありません。

ただ、「機械的」はあくまでも「意見が入らない」のであって、「恣意的と異なり思いつきではなく論理的」という意味での対義語ではない点に注意しましょう。

ちなみに、一定の決まりに従っていることを表す「規則的」という言葉もありますね。この言葉は「恣意的」が持つ「偶発的で論理に基づかない」という点の反対といえますが、人が何かを判断する様を「規則的」とはあまり言わないので対義語としては弱いかもしれません。

「恣意的」の誤用論議について

桜木先生ご指摘のように、「恣意的」の意味が話題になったことがあるのでご紹介しましょう。

まず、「恣意的」が持つ「勝手気まま」は、1つには「偶発的、ランダム」というニュアンス、もう1つは「意図的」に近いニュアンスが含まれます。「恣意的な報道」という際は後者に当たり、「勝手な判断による報道」ということ。

そして、1つ目の「偶発的」のみが正解で「意図的」に近い使用例は誤用とする指摘がありました。つまり「恣意的な報道」のような使い方はおかしい、というもの。この件については国語辞書の編纂者から「どちらの意味も正しい」という発信があり、一応の決着を見たようです。

違和感のある使い方を見たり聞いたりしたときは、すぐに誤用だと騒ぐのではなく自分で国語辞典などでしっかり確認してから対応したいものですね。

「恣意的」の英訳は?

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最後に、「恣意的」を英語で表現する方法も見ておきましょう。

「arbitrary」

形容詞で、「個人の好みに任せた」や「偶発的な」という意味です。「任意の」「独断の」と訳されることも。原則にとらわれず思うままに、という意味で「恣意的」の訳語としてしっくりきますね。

\次のページで「「恣意的」を使いこなそう」を解説!/

「恣意的」を使いこなそう

この記事では「恣意的」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「恣意的」という言葉は、テレビ番組などで耳にすることはあっても、自分から口に出す機会は少ないかもしれませんね。

職場などで話に出たときにきちんと意図を捉えられるように、正しい意味を覚えておきましょう。

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国語言葉の意味

「恣意的」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「恣意的」について解説する。

端的に言えば恣意的の意味は「勝手気まま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「恣意的」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

自ら恣意的だと気づくのは難しそうなので、常に客観的に自分の思考や行動を振り返る必要があると感じているとのこと。恣意的とはどんなときに使う言葉なのか、似た言葉との違いも含めて解説してもらう。

「恣意的」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「恣意的」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「恣意的」の意味は?

「恣意的」には、次のような意味があります。

気ままで自分勝手なさま。論理的な必然性がなく、思うままにふるまうさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

このように自由気まま、わがままで気まぐれといったニュアンスの「恣意的」という言葉は、正しい意味を知らない人が意外と多いようです。

「意味」を引用したデジタル大辞泉が行った調査では、約3分1の人が「目的をもって」という意味だと誤った回答を選んでいます(2021年1月時点)。

「恣意的な解釈は誤解のもとだから厳禁だ」などビジネスシーンでも使われる言葉なので、ぜひ正確な意味と使い方を覚えておきましょう。

「恣意的」の語源は?

次に「恣意的」の語源を確認しておきましょう。

まず「恣」という漢字は訓読みは「ほしいまま」。「権力をほしいままにする独裁者」といった表現に見覚えがある人もいるのではないでしょうか。この文字は上が「人が息をついている様子」の象形、下は「心」ですから心臓です。吐息をついてほっとすることから、リラックスして気ままな様子を表しています。次に「意」は意見、意思といった言葉からも分かるとおり「心に思うこと、気持ち」のこと。

ですから「恣意」は自分の思いどおりにふるまう心、気ままな考えのことで、「的」をつけてそうしたふるまい方を示す言葉になっています。

\次のページで「「恣意的」の使い方・例文」を解説!/

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