この記事では「拙速」について解説する。

端的に言えば拙速の意味は「下手でも出来あがりが早いこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は大学時代は文学部で日本文化を専攻し、多くの日本語やその意味を知る読書好き主婦ライターのhs.seを呼んです。一緒に「拙速」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hs.se

大学の学部は文学部で日本文化を専攻し、古文書や文献を読みながら日本の歴史や文化を学んだ30代主婦ライター。専業主婦となってから図書館司書の資格を取得。趣味は読書。多くの日本語に触れ、学んだ知識や経験を活かし、「拙速」についてわかりやすく丁寧に解説していく。

「拙速」の意味や語源・使い方まとめ

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拙速」は「せっそく」と読みます。「拙速」は、ビジネスシーンや新聞やニュースなどでもよく目にしたり耳にしたりする言葉ですが、意外と本来の意味を勘違いしている人もいるのではないでしょうか。

それでは早速「拙速」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「拙速」の意味は?

「拙速」には、次のような意味があります。

1.まずくても出来あがりの早いこと。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「拙速」

「拙速」とは、「出来栄えが良くなくても、仕事が早い」を意味する言葉。「拙速」は、「拙」と「速」の二つの漢字で構成されていますが、「拙」は「巧みではない、未熟である」「速」は「スピード・速度がはやい」という意味がそれぞれあります。このことから、「拙い(つたない・まずい)状態でも、早く仕上げる」という意味になることがわかるでしょう。

上司からの依頼をしっかりと理解せず、「拙速」に仕事をこなしてしまい、後から大変なことになったという経験がある人もいるのではないでしょうか。「拙速」は、ビジネスシーンや日常会話でも耳にする言葉ですので、この機会に正しい意味や使い方を覚えましょう。

「拙速」の語源は?

「拙速」は、中国南宋の謝枋得(しゃぼうとく)が編纂した、科挙受験のための参考書である「文章軌範」の「有字集小序」の中で、「巧遅(こうち)は拙速に如かず(しかず))」という格言として出てきます。この格言は、「全体では出来がよくても遅いものは、下手だが早いものに及ばない」という意味。「巧遅拙速」という四字熟語も同様の意味で使われます。

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「拙速」の使い方・例文

「拙速」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.昨年赤字になったばかりの事業を撤退するという判断は拙速過ぎると批判が集中した。
2.憲法改正は、国会では拙速を避け、十分に議論することが求められる。
3.ベンチャー企業が勝ち抜くためには、世の中に出ていない商品やサービスを拙速にでも提供することも必要だ。

「拙速」は、下手でも出来あがりが早いことを意味する用語でしたね。例文では、「拙速過ぎる」、「拙速を避ける」、「拙速に」という使い方を紹介しました。もう少し詳しく例文を解説していきます。

例文1と2は、どちらも「拙速」であることをネガティブな意味で使用。拙速であることが将来に及ぼす影響を悲観的に捉えています。一方、例文3では、「拙速」であることはポジティブな意味で使用。「巧遅拙速」で、クオリティよりもスピードを重視しています。これらから、「拙速」は、ポジティブとネガティブどちらの意味でも使用できることが理解できますね。

「拙速」の類義語は?違いは?

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次に、「拙速」の類義語を紹介します。

その1「性急」

性急」は、「せいきゅう」と読み、「気が短くてせっかちなこと」と「物事の進みかたが急であること」という意味。「性急な結論を避ける」、「性急に事を進める」のように使い方があります。「性急」は人の性格や気持ちを表すものと、「物事の進み具合」を表すものがあることがわかりますね。「拙速」と同様に、進み具合が速いことを意味しますが、「下手で出来あがりがよくない」という意味は持ちません。

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その2「早計」

早計」は、「そうけい」と読み、「早まった考え方」という意味。「そのように判断するのは早計である」、「早計に失する」のように使い方があります。「早計」は、十分に考えないで判断することを意味しており、ネガティブな意味として使われることが多い言葉です。

「拙速」の対義語は?

それは次に、「拙速」の対義語を見ていきましょう。

その1「巧遅」

これまでの説明にも何度か出てきましたが、「巧遅」は、「こうち」と読み、「上手ではあるが、仕上がりの遅いこと」という意味。「巧遅」だけで使われることはあまりなく、「巧遅拙速」、「巧遅は拙速に如かず」、拙速は巧遅に勝る」のような熟語で使われます。

「拙速」の英訳は?

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続いて、「拙速」の英訳も押さえておきましょう。

「hasty」、「rough and ready」、「brisk and slapdash」

「拙速」は英語で、「hasty」、「rough and ready」、「brisk and slapdash」などと訳すことができます。

それぞれ例文を挙げますので、どのような場面で使用できるか理解しておきましょう。

It is very dangrous to make a hasty decision about this matter. (その案件に関し、拙速な決断を下すのはとても危険だ)

My motto is "rough and ready". (私は拙速主義です)

It is better to be brisk and slapdash than painstaking but slow. (巧遅は拙速に如かず)

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「拙速」を使いこなそう

この記事では「拙速」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「拙速」は「下手でも出来あがりが早いこと」という意味の言葉です。ポジティブでもネガティブでもどちらの意味でも使うことができます。

ビジネスシーンだけでなく、外交や政治に関するニュースなどでも目や耳にする「拙速」という言葉。正しい意味を理解できましたか?「拙速」と「巧遅」は対義語であることを解説しましたが、どちらがよい・悪いということではありません。簡単なことではありませんが、その時の状況を客観的に捉え、「拙速」に行うか、「巧遅」に行うか見極めていきましょう。

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「拙速」の意味や使い方は?例文や類語を文学部卒の30代主婦ライターがわかりやすく解説!

この記事では「拙速」について解説する。

端的に言えば拙速の意味は「下手でも出来あがりが早いこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は大学時代は文学部で日本文化を専攻し、多くの日本語やその意味を知る読書好き主婦ライターのhs.seを呼んです。一緒に「拙速」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hs.se

大学の学部は文学部で日本文化を専攻し、古文書や文献を読みながら日本の歴史や文化を学んだ30代主婦ライター。専業主婦となってから図書館司書の資格を取得。趣味は読書。多くの日本語に触れ、学んだ知識や経験を活かし、「拙速」についてわかりやすく丁寧に解説していく。

「拙速」の意味や語源・使い方まとめ

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拙速」は「せっそく」と読みます。「拙速」は、ビジネスシーンや新聞やニュースなどでもよく目にしたり耳にしたりする言葉ですが、意外と本来の意味を勘違いしている人もいるのではないでしょうか。

それでは早速「拙速」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「拙速」の意味は?

「拙速」には、次のような意味があります。

1.まずくても出来あがりの早いこと。

出典:新明解国語辞典(三省堂)「拙速」

「拙速」とは、「出来栄えが良くなくても、仕事が早い」を意味する言葉。「拙速」は、「拙」と「速」の二つの漢字で構成されていますが、「拙」は「巧みではない、未熟である」「速」は「スピード・速度がはやい」という意味がそれぞれあります。このことから、「拙い(つたない・まずい)状態でも、早く仕上げる」という意味になることがわかるでしょう。

上司からの依頼をしっかりと理解せず、「拙速」に仕事をこなしてしまい、後から大変なことになったという経験がある人もいるのではないでしょうか。「拙速」は、ビジネスシーンや日常会話でも耳にする言葉ですので、この機会に正しい意味や使い方を覚えましょう。

「拙速」の語源は?

「拙速」は、中国南宋の謝枋得(しゃぼうとく)が編纂した、科挙受験のための参考書である「文章軌範」の「有字集小序」の中で、「巧遅(こうち)は拙速に如かず(しかず))」という格言として出てきます。この格言は、「全体では出来がよくても遅いものは、下手だが早いものに及ばない」という意味。「巧遅拙速」という四字熟語も同様の意味で使われます。

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