この記事では「機微」について解説する。

端的に言えば機微の意味は「微妙な事情や心の動き」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「機微」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「機微」の意味や語源・使い方まとめ

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「機微」は「きび」と読みます。「部下をマネジメントするリーダーには、部下の心の機微を捉える資質が大切だ」などと言われたら、なんと返答するのがふさわしいのでしょうか。とても感覚的な言葉なので、正しい意味はちょっと不安という人も多いかもしれません。

今回は心の動きを表現する「機微」について、語源や注意する点を見ていきましょう。

「機微」の意味は?

「機微」には、次のような意味があります。

表面だけでは知ることのできない、微妙なおもむきや事情。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「機微」

「機微」の意味は容易には察することができない、繊細なおもむきや事情です。そして人に対しても、物事に対しても使えます。

最も一般的な用法は、人の感情に対して使われる場合です。人の感情は常に変化し揺れ動き、本人にしかわからないもの。あるいは本人も自覚していないくらい小さな動きかもしれません。「機微」は表面からはわからない、気持ちや感情の微妙な動きを指す言葉です。

「機微」は物事の変化に対しても使えます。あらかじめ予測できない変化、時と状況で移り変わる様子などを「機微」と表現してみましょう。

「機微」の語源は?

次に「機微」の語源を確認しておきましょう。

まず「機」は仏教用語で心の動きを指す漢字です。「密か(ひそか)」という意味や物事の移ろいや趣を意味することもあります。一方「微」があらわすのは非常に小さいこと、はっきりしないこと。「微細」「微妙」という単語から推測できますね。

この2文字がつながることで、「機微」は「心や物事の非常に小さな変化や働き」を表すようになりました。

\次のページで「「機微」の使い方・例文」を解説!/

「機微」の使い方・例文

「機微」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、その言葉自身の意味のようにとても繊細な使われ方をします。以下で6つの用例を見ながらしっかり区別していきましょう。

1.「昨日の映画は、運命に翻弄される主人公の心の機微に触れることができた」

「機微に触れる」は人の感情の動きに対して使われます。心の奥の繊細な感情を知って心が動いたり、感銘を受けたりしたときに使う表現です。

2.「通勤で一緒になる若手社員が、今日は元気がなかった。心配事でもあるのかと、彼の心の機微を感じる」

「機微を感じる」は一見わかりにくい相手の気持ちの変化きが、ちょっとした仕草などから見て取れた時に使います。こちらも人の心の動きについて使われることが多いですね。

3.「社歴が長い彼女は、営業社員一人ひとりの機嫌を察するのが上手い」

「機微を察する」は人の心や物事の変化にいち早く気づき、理解することを指す表現です。またそのスピードが速い人を指して「察するのがはやい」という使い方もします。

4.「週明けの為替相場が荒れそうな機微を捉えたので、時間をみて買い注文を出しておこう」

「機微をとらえる」という使い方も見ておきましょう。些細な変化を表す「機微」には、必ず変化する瞬間があります。その瞬間、もしくは前後を察知するこを指すのが「機微を捉える」です。「機微を察する」より比較的物事に対して用いられることが多いですね。

5.「一流ホテルでは顧客の機微を穿ったサービスが提供される」

「穿つ」は「うがつ」と読みます。あまり使う機会がない表現かもしれません。「穿つ」には「隠れた本来の在り様に触れる、うまく言い表す」という意味があります。「穿った見方をする」という言い回しは、「物事の本質を捉えた見方をする」という意味です。

\次のページで「「機微」の類義語は?違いは?」を解説!/

6.「彼女は機微に聡い点を買われ、新入社員の研修・育成担当に指名された」

「機微に聡い」は心や物事の変化に対して鋭く気づく感覚を持っていることを指します。とても繊細な「機微」ですが、「聡い」人は敏感に気づくものです。反対に気づかないことは「機微に疎い」と言います。

「機微」の類義語は?違いは?

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次に「機微」の類義語を見ていきましょう。「機微」と似た意味を持つ言葉には、どのようなものがあるでしょうか?

その1「微妙」

「機微」はそれ自体が端的に言い表すことが難しい言葉です。最も近い意味を持つ言葉は「微妙」。「微妙」は細部に大切な意味合いを持ち、簡単には言い表せない様子、何とも言いかねる複雑な変化という意味を持っています。「機微」より口語的な表現ですね。

その2「隠微」

「隠微」は聞きなれない言葉ですね。「隠微」は「いんび」と読み、「外に現れず、わかりにくいこと。かすかで目立たない様子」を表します。「機微」も表面からはわかりにくいちょっとした変化という意味がありますから、一見しただけでは気づかないという点で意味が似ている言葉です。

その3「ニュアンス」

「ニュアンス」はフランス語由来の言葉で「言葉・色彩・音色などの微妙な意味合い、また言外に表された話し手の意図」という意味を持っています。言外に出されている点では「機微」よりわかりやすいかもしれませんね。

「機微」の対義語は?

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非常に繊細な意味を持つ「機微」ですが、対義語はあるのでしょうか。

\次のページで「「野暮」」を解説!/

「野暮」

「機微」が人の心や感情、物事の繊細な変化に気づくという意味ですから、対義語はそうしたことに全く気が回らない、気づかないことを指す言葉になります。「野暮」は風流な心がなかったり、言動や趣味が洗練されいないことを指す言葉です。転じて人の気持ちに配慮が回らない、気づかない人も指すようになりました。

「機微」の英訳は?

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いかにも日本的な意味合いな気がする「機微」ですが、英訳はできるのでしょうか。

「subtlety」

「機微」に相当する意味を持つ英単語は「subtlety」です。発音は「サトルティー」で、アクセントは一番初めに置きましょう。「表現しがたいこと微妙な点、細かい区別」を表します。まさに「機微」そのものですね。

There is an interesting subtlety here that reinforces the point.

「私の論点を補強してくれる、小さいが大切なポイントがある」

「機微」を使いこなそう

この記事では「機微」の意味・使い方・類語などを説明しました。

人に対しても物事に対しても使える「機微」は、ちょっとした変化や一見しただけでは気づかない微細な動きを表します。繊細な言葉ですが、日常会話でもよくつかわれる言葉です。言葉の持つイメージをしっかりと確認しておきましょう。

気持ちというものは他人はもちろん、自分自身のことですら実はよくわかっていないことが多いもの。「機微に聡く」なれるよう心がけると、きっと今まで見えていなかったものが見えてきますよ。

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国語言葉の意味

「機微」の意味や使い方は?例文や類語、注意すべきポイントを元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「機微」について解説する。

端的に言えば機微の意味は「微妙な事情や心の動き」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「機微」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「機微」の意味や語源・使い方まとめ

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「機微」は「きび」と読みます。「部下をマネジメントするリーダーには、部下の心の機微を捉える資質が大切だ」などと言われたら、なんと返答するのがふさわしいのでしょうか。とても感覚的な言葉なので、正しい意味はちょっと不安という人も多いかもしれません。

今回は心の動きを表現する「機微」について、語源や注意する点を見ていきましょう。

「機微」の意味は?

「機微」には、次のような意味があります。

表面だけでは知ることのできない、微妙なおもむきや事情。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「機微」

「機微」の意味は容易には察することができない、繊細なおもむきや事情です。そして人に対しても、物事に対しても使えます。

最も一般的な用法は、人の感情に対して使われる場合です。人の感情は常に変化し揺れ動き、本人にしかわからないもの。あるいは本人も自覚していないくらい小さな動きかもしれません。「機微」は表面からはわからない、気持ちや感情の微妙な動きを指す言葉です。

「機微」は物事の変化に対しても使えます。あらかじめ予測できない変化、時と状況で移り変わる様子などを「機微」と表現してみましょう。

「機微」の語源は?

次に「機微」の語源を確認しておきましょう。

まず「機」は仏教用語で心の動きを指す漢字です。「密か(ひそか)」という意味や物事の移ろいや趣を意味することもあります。一方「微」があらわすのは非常に小さいこと、はっきりしないこと。「微細」「微妙」という単語から推測できますね。

この2文字がつながることで、「機微」は「心や物事の非常に小さな変化や働き」を表すようになりました。

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