この記事では「矜恃」について解説する。

端的に言えば「矜恃」の意味は「自分の能力を優れたものとして誇る気持ち」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した1804を呼んです。一緒に「1804」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/1804

言葉の由来や意味を考えるのが好き。最近知ったお気に入りの言葉は「あなたは私のオレンジの片割れ」。先日受けた知能検査で言語性IQが141だった。

「矜恃」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「矜恃」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「矜恃」の意味は?

「矜恃」には、次のような意味があります。

《慣用読みで「きんじ」とも》自分の能力を優れたものとして誇る気持ち。自負。プライド。「―を傷つけられる」出典:デジタル大辞泉(小学館)

自身の仕事や立ち位置に誇りを持ったうえで表に出さないという意味合いです。

また、「矜恃」にとてもよく似た言葉として、「矜持」が挙げられます。どちらも、読み方は「きょうじ」(ただし「矜恃」は「きんじ」と呼ぶこともある)で、意味合いとしても「自尊心や誇り、プライドを持っている」点で共通し、混同されることもしばしば。しかし、「矜持」はその自尊心をじっと保ち、自身を抑えることであるのに対し、「矜恃」は見るからに自尊心があり、堂々と振る舞うこと、とそれぞれ違うニュアンスを持っていると言えますね。

「読み方が同じであること」、「意味が似ていること」、「同じニュアンスを含むこと」という3ポイントから混同されてしまうことも正直致し方ないところはあるかと。

なお、筆者の肌感覚ではありますが正直今回紹介する「矜恃」よりも「矜持」の方が目にすることは多いのではないでしょうか。この理由としては、「恃」が常用漢字ではないことが大きいでしょう。「持」は普段も使いますが「恃」はめったに使いませんからね。 なお、今では広辞苑でも「矜持」と「矜恃」は同じだという立場を取っています。 「矜恃」に限らず、言葉がこのような変化をたどることは決して珍しいことではありません。

「矜恃」の語源は?

次に「矜恃」の語源を確認しておきましょう。

まず「矜」。「矜持」の語源は、「矜」の字を訓読みすると「ほこる」になり、漢字の意味が「自負する」「ほこる」になるところから来ています。 「矜」の字は「矛」に「今」。 昔、武士たちは矛を手にすることを誇りに思っていたことから、「誇り」という意味になったのだとか。武器を持てる身分ということ自体が特権とも言えますからね。

次に「恃」は「心」に「寺」。「寺」は、「じっとしているさま」「たもつ」という意味を持ち、「心にたもつ」となるので、「矜恃」も誇りを心に留めているとできそうですが、それは誤りです。

「恃」という字は、「頼む」同様の「たのむ」と言った意味があるため、「相手に伝える」「依頼する」といった意味に繋がるのですね。

\次のページで「「矜恃」の使い方・例文」を解説!/

「矜恃」の使い方・例文

「矜恃」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。…などと文章を始めてください。

1.「この状況でも淡々と仕事に打ち込むのが現場人としての矜恃だ。」
2.「若手の研究を無断引用するなんて、研究者としての矜恃が無い。」

いずれの例文も本人の肩書や職業を全うする、という文脈で使用されているものです。また、その仕事ぶりや業績を表に出すというよりは自分に課せられたある意味本人の「当たり前」と思うラインを指す、ということが出来ます。「能ある鷹は爪を隠す」「不言実行」といった慣用句にも近いニュアンスがありますね。

「矜恃」の類義語は?違いは?

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ここまで「矜恃」についての意味を理解するにあたり「矜持」と比較してきたため、この章ではそれ以外の類義語について触れていきます。「自尊心」「自任」「自負」について見ていきましょう。

その1「自尊心」

自分を尊いとする心と書いて「自尊心」。「矜恃」のように役職や仕事の内容を指す以外にも、自分の存在そのものを大切にするという意味合いがあります。親子関係、人間関係の文脈にも使われますね。なお、「自尊心」が傷つくのは人に雑に扱われたりする時ですが、「矜恃」が傷つくのは実力不足を知るときなどです。

\次のページで「その2「自任」」を解説!/

その2「自任」

「自任」は、自分がそれにふさわしい能力、資格などをもっていると思いこんでいることを指します。自分が思っている、というニュアンスが強いです。

その3「自負」

「自負」は、自分の才能や能力、学問、業績などがすぐれていると信じて誇ること。他から見てどうであろうとも、自分自身がすぐれていると信じ、それを頼みとして誇る場合に使います。「自任」が「自分が思っている」という点が強調されるのに対し、より「責任感」というニュアンスが込められる表現です。「矜恃」とはほぼイコールという解釈で間違いないでしょう。必ずしも態度に出すものではないので、「矜持」ではないですね。

「矜恃」の対義語は?

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「自らを誇りに思う」というニュアンスの反対が「自らを恥じる」もしくはその状態であると言えるでしょう。したがって、そのような意味合いの「卑屈」「己を恥じ入る」などといった表現があてはまります。

その1「卑屈」

「卑屈な態度をとる」「重役相手とはいえ、あまり卑屈になるな」といったように、「どうせ自分なんか」といった曲がった心象や態度を指す言葉です。本人に自覚が無い場合もありますが、いずれにせよ自分に自信がある状態からはかけ離れていますね。

その2「(己を)恥じ入る」

「卑屈」よりはストレートに自身の不適切な発言・行動や無知を受け入れた上で「恥ずかしいなあ」となっている状態を表すものです。謝りつつ恥を感じている、というニュアンスがありますね。

「矜恃」の英訳は?

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「矜恃」の英訳は直訳で「pride」であると言えます。以下で詳しく見ていきましょう。

\次のページで「「pride」」を解説!/

「pride」

「矜恃」を英語で表現する際には、「pride」やその関連語を用いて行うのが一般的。特に次の3種類の表現は、覚えておいて損はないでしょう。なお、今回の「pride」には誇る心を外に出さない「矜恃」も出す「矜持」も両方含まれています。「誇り」に焦点が当てられているという訳ですね。

・take pride in ~
・pride onself on ~
・be proud of ~

上記はいずれも「~に誇り・矜恃を持つ」と訳すことができます。

「矜恃」を使いこなそう

この記事では「矜恃」の意味・使い方・類語などを説明しました。「自らへの誇り」を「心に留める」というのが今回のポイントです。カッコイイなあと感じる人に会った時など、もしかするとその人の矜恃に触れるのかもしれないですね。

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国語言葉の意味

「矜恃」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「矜恃」について解説する。

端的に言えば「矜恃」の意味は「自分の能力を優れたものとして誇る気持ち」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

情報誌系のライターを10年経験した1804を呼んです。一緒に「1804」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/1804

言葉の由来や意味を考えるのが好き。最近知ったお気に入りの言葉は「あなたは私のオレンジの片割れ」。先日受けた知能検査で言語性IQが141だった。

「矜恃」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「矜恃」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「矜恃」の意味は?

「矜恃」には、次のような意味があります。

《慣用読みで「きんじ」とも》自分の能力を優れたものとして誇る気持ち。自負。プライド。「―を傷つけられる」出典:デジタル大辞泉(小学館)

自身の仕事や立ち位置に誇りを持ったうえで表に出さないという意味合いです。

また、「矜恃」にとてもよく似た言葉として、「矜持」が挙げられます。どちらも、読み方は「きょうじ」(ただし「矜恃」は「きんじ」と呼ぶこともある)で、意味合いとしても「自尊心や誇り、プライドを持っている」点で共通し、混同されることもしばしば。しかし、「矜持」はその自尊心をじっと保ち、自身を抑えることであるのに対し、「矜恃」は見るからに自尊心があり、堂々と振る舞うこと、とそれぞれ違うニュアンスを持っていると言えますね。

「読み方が同じであること」、「意味が似ていること」、「同じニュアンスを含むこと」という3ポイントから混同されてしまうことも正直致し方ないところはあるかと。

なお、筆者の肌感覚ではありますが正直今回紹介する「矜恃」よりも「矜持」の方が目にすることは多いのではないでしょうか。この理由としては、「恃」が常用漢字ではないことが大きいでしょう。「持」は普段も使いますが「恃」はめったに使いませんからね。 なお、今では広辞苑でも「矜持」と「矜恃」は同じだという立場を取っています。 「矜恃」に限らず、言葉がこのような変化をたどることは決して珍しいことではありません。

「矜恃」の語源は?

次に「矜恃」の語源を確認しておきましょう。

まず「矜」。「矜持」の語源は、「矜」の字を訓読みすると「ほこる」になり、漢字の意味が「自負する」「ほこる」になるところから来ています。 「矜」の字は「矛」に「今」。 昔、武士たちは矛を手にすることを誇りに思っていたことから、「誇り」という意味になったのだとか。武器を持てる身分ということ自体が特権とも言えますからね。

次に「恃」は「心」に「寺」。「寺」は、「じっとしているさま」「たもつ」という意味を持ち、「心にたもつ」となるので、「矜恃」も誇りを心に留めているとできそうですが、それは誤りです。

「恃」という字は、「頼む」同様の「たのむ」と言った意味があるため、「相手に伝える」「依頼する」といった意味に繋がるのですね。

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