端的に言えば精査の意味は「詳しく調べること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「精査」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/みゆな
元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。
「精査」の意味や語源・使い方まとめ
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「この報告書、もう一度精査しておいてくれ」上司にそう言われました。「精査する」とは何をすれば良いのでしょうか?あるいは取引先が「先日のご提案内容については、社内で精査し検討の上お返事します」と言っていたら、相手は何をしているのでしょうか?
みなさんはビジネスの場で頻繁に使う「精査」の意味を正しく知っていますか?今回は「精査」の意味や語源・使い方をご紹介します。
「精査」の意味は?
「精査」には、次のような意味があります。
くわしく調べること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「精査」
「精査」は「詳しく調べる」という意味で、正しいかどうかをよく考えて調べるというニュアンスがあります。先に挙げた例文で上司が言いたかったのは「この書類が正しいかどうか怪しい点があるから、もう一度よく考えながら正しいかチェックしてくれ」という意味です。数値を厳密に見直すことが求められている仕事と言うことになります。
取引先が「先日のご提案内容については、社内で精査し検討の上お返事します」言う真の意味は、提案したものが本当に自社に合っているのか、社内各部署でよく吟味してから答えを出しますということです。
「精査」の語源は?
次に「精査」の語源を、漢字それぞれがもつ意味から見てみましょう。
「精査」の「精」は「こまやかに、くわしくする。念入りに手を加える。くわしい。まじりけのない」という意味です。また「査」には「よくみて明らかにする。よく調べる」と言う意味があります。
この二つが重なることで単に調べるだけではなく、「状況を細かく詳しく、内容を明らかにするようによく調べる」という意味になるのです。
「精査」の使い方・例文
「精査」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は以下のように用いられます。
1.学会で発表する論文に載せるデータをもう一度精査する必要がある。
2.お客様へのプレゼン資料を精査しておこう。
3.感染症の原因となるウィルスを精査する。
4.この記述が法に抵触しないか、精査してください。
5.警察が火災現場の火の元がどこにあたるか精査中である。
例文のように「精査」は主にビジネスシーン、学術研究分野、行政、警察、消防などのフォーマルな場面で使います。家族や友人といった普段の会話ではほとんど使いませんね。自分が詳しく調べる場合にも、誰かに詳しく調べておいてくれるよう頼むときにも使える用語です。
敬語表現もあります。上司など目上の人に精査を頼まれて引き受ける際は「精査させていただきます」、自分が誰かにお願いする場合は「ご精査お願いいたします」「ご精査ください」と適切に使いましょう。
その1「調査」
「精査」も「調査」も「調べる」という点では同じです。「精査」が調べる対象そのものを詳しくしたい場合に使われるのに対し、実態や動向を明らかにするという目的があって調べるのが「調査」で、単に「調べる」というときにも使えます。
その2「検査」
「検査」とは何かしらの基準があり、その基準に照らし合わせて異状や悪い所がないかを調べる場合に使われます。健康診断で「要精密検査」と言われたり、空港で所持品を「再検査」されたりしますね。全て規定の基準との差異があるので「検査」を使うわけです。
その3「吟味する」
「吟味」は「精査」とほぼ同じ意味でつかわれる言葉です。理論・品質・内容・罪状などについて、詳しく調べ確かめるときに使います。
その4「精察する」
あまり見聞きしない表現ですが、「精察」も「精査」と同じように使える言葉です。間違いがないだろうか、とクリティカルな視点で物事を見ていくというニュアンスを持っています。
「精査」の対義語は?
「詳しく調べる」という意味の「精査」には、対義語はあるのでしょうか?「精査」が細部まで詳しく見て調べるという意味ですから、その反対になる「細部まで見ない、情報を詳しく調べない」という意味を持つ言葉を解説します。
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