この記事では「惰性」について解説する。

端的に言えば「惰性」の意味は「代り映えのしないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「惰性」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。学生生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、少学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で日本語を分かりやすく解説していく。

「惰性」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「惰性」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「惰性」の意味は?

「惰性」には、次のような意味があります。

1.これまでの習慣や勢い。
2.慣性

出典:デジタル大辞泉(小学館)「惰性」

「惰性(だせい)で行動する」などと聞くと、あまりポジティブなイメージを持つことが出来ませんよね。日常的に多く用いられる「惰性」はこの様に「仕方なく」や「何も考えずに」というイメージが付随するものです。

そんな「惰性」の意味は二つあります。一つ目は「今まで続いてきた習慣や癖、物事に対する心構え」ですが、習慣と言っても毎日意味のあることを少しずつ続けていって大きな成果を得るといった自分の成長につながる習慣ではなく、物事に対して深く考えることや変化させることから逃れて今までの楽な習慣や癖を何も考えずに続けているという意味合いが強いです。

二つ目の意味の慣性は、「外力が働かなければ、物体が同じ運動状態をずっと保つこと」を意味します。これは高校の物理の授業で触れる「慣性の法則」という運動の法則ですね。二つ目の意味の「惰性」は、この「慣性」と同じ意味を示し、物体に対してのみ用いることが出来ます。

「惰性」の語源は?

次に「惰性」の語源を確認しておきましょう。「惰性」の語源は、漢字の意味を一つ一つ紐解いていくと理解する事ができます。「惰性」は、「惰」と「性」という二つの漢字から成り立っていますね。まず、「惰」という漢字には「怠る」「気が緩む」「緊張感のない」といった意味と、「これまでの習慣や癖」という意味の二つの意味があります。

「惰」という漢字は、心臓を表現した象形文字から発展した「忄(りっしんべん)」と手で工具を持っている形を表現している「左」、「肉」という漢字が変形してできた「月(にくづき)」という要素で成り立っているという事が分かりますね。ここから考えられる事は、「心や肉体を工具で叩く」つまり「緊張して引き締まっている心や凝り固まった体をほぐす」という事です。緊張を解かしすぎてしまった結果、怠けたり何も考えなくとも行動することのできる習慣や癖に行き着くことになってしまったということですね。

次に「性」という漢字です。「性」には、「生まれつき」や「本質的に」といった意味があります。つまり「惰」という漢字と「性」という漢字を二つ組み合わせると「生まれつきの怠けた癖や習慣」というニュアンスになる事が分かりますね。

\次のページで「「惰性」の使い方・例文」を解説!/

「惰性」の使い方・例文

「惰性」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.今までは特に自分を取り繕う事なく自然のままの性質でファッションも惰性的なものしか身につけた事が無かったが、彼に恋心を抱いてからは人気女性タレントの生き方を真似したり華やかなファッションにもチャレンジするなど、自分磨きを努力するようになった。
2.必要な情報を十分に検索して工夫することもなく惰性で開催場所を選んでしまったため、来場者数は当初見込んでいた人数の半数にも満たなかった。
3.第一志望の大手企業のエントリー締切日時に間に合わず、惰性で経験もない翻訳の仕事の募集に申し込んだところ、なんと受かってしまった。

例文を見ていただくとわかる通り、「惰性」は「惰性で」「惰性的に」といった使い方をします。慎重に緊迫感を持って物事に接したり、いつもと違ったひと工夫をするなどと真逆の状況の時に用いる事が分かりますね。

例文の1番目と3番目は「怠る」「取り敢えず」といった意味合いで「惰性」を用いています。相手に第一人称として与えられる印象は、まずはファッションや見た目の華やかさですよね。1番目の例文で示している「惰性的なファッション」とは、このような自分の第一印象の要となるファッションに特に気を使う事なく自分にとって楽な普段通りの服装などですね。3番目の例文での「惰性」は、「取り敢えず」「特に意味はなく」といったニュアンスを含みます。「惰性」は基本的にネガティブな意味で用いられる事が多いですが、何事も思い詰めすぎるよりも、少し気を抜いた方が上手くいったというような経験はありませんか?そんな時は「惰性だったが上手くいった」などのようにポジティブな意味でも用いる事ができますよ。

「惰性」の類義語は?違いは?

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「惰性」には、「これまでの習慣や癖」という意味がある事が分かりました。しかし、「惰性」を日常的に用いた時、「怠ける」や「取り敢えず」といったニュアンスの方が強い場合もありましたね。

このことを踏まえ、それぞれの意味に対応する類義語をひとつずつ紹介します。

「因習」

まずは「これまでの癖や習慣」の方の類義語として、「因習」が挙げられます。「因習」とは、古くから伝わるしきたりに従うことを表現する言葉で、しきたりをそのまま従いすぎるあまりに生まれる弊害などのニュアンスも表現する言葉です。「惰性」はこれまでの習慣や癖に囚われて躍進的な事に挑戦しないという意味を示すので、「因習」が類義語になる事が分かりますね。

ただの「習慣」だけだといい意味で続けている事という意味も含みますが、「因習」として示すと、古くて時代錯誤な習慣といったニュアンスだけを伝える事が出来るので、「惰性」のネガティブな表現を別の言い方で表現したい場合は、この「因習」が最適です。

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「漫然」

次に、考えることを怠って「取り敢えず」というニュアンスを表現する方の「惰性」の類義語は、「漫然」です。 

「漫然」とは、はっきりとした目的や意識を持たずにぼんやりとした様を表現する言葉。なにか行動を起こす時に、何を目的とするのかという意識があるのかないのかというだけで、結果が随分と変わりますよね。「漫然」はこのような目的を持たずにぼんやりと流れのままに行動する様子を表現する言葉なので、本気ではなく「取り敢えず」何かを選択したり行動することを表現する「惰性」と類義語であるという事がわかります。

「漫然」と「惰性」の使い分けとしては、「漫然」の方がより何も考えずにぼんやりしている場合、「惰性」はわざと気を抜いている場合というように意識的か意識的でないかという面での違いが大きいでしょう。

「惰性」の対義語は?

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「惰性」は、「怠る」や「取り敢えず」などのネガティブな印象の強い言葉でしたね。では、「惰性」の対義語とはどのような言葉なのでしょうか。また、その意味も見ていきましょう。

「積極的」

考えることを怠って「取り敢えず」というような気の抜けた状態で何かに取り組むことを表現する「惰性」と反対の意味を表す対義語は、「積極的」です。

「積極的」は物事に対して、自分の意思に基づいて意欲的に取り組むことを表現する言葉。物事に対して受け身の姿勢である「惰性」と違い、能動的にアクションを起こして自分の意思を貫く姿勢を表す事ができます。

また、「惰性」のもう一つの意味である「慣性」という面でも、物をそのままにしておくのではなく積極的に動かすということで反対の意味を表現する事が出来ますね。

「惰性」を使いこなそう

この記事では「惰性」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「惰性」と聞くと、ネガティブなイメージがすぐに浮かびませんか?しかし改めてその意味を見ていくと、直接的な意味が「これまでの習慣や癖」であるように、一概にマイナスな表現をする言葉であると言い切ることはできませんね。

このように日本語では、本来の意味から派生した使い方を日常的にしている言葉が沢山あります。本来の意味を知ってから派生した使い方をすると、より表現の幅が広がりますよ。

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国語言葉の意味

「惰性」の意味や使い方は?例文や類語を現役学生ライターがわかりやすく解説!

この記事では「惰性」について解説する。

端的に言えば「惰性」の意味は「代り映えのしないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「惰性」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。学生生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、少学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文科系。読書量に比例する文章力で日本語を分かりやすく解説していく。

「惰性」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「惰性」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「惰性」の意味は?

「惰性」には、次のような意味があります。

1.これまでの習慣や勢い。
2.慣性

出典:デジタル大辞泉(小学館)「惰性」

「惰性(だせい)で行動する」などと聞くと、あまりポジティブなイメージを持つことが出来ませんよね。日常的に多く用いられる「惰性」はこの様に「仕方なく」や「何も考えずに」というイメージが付随するものです。

そんな「惰性」の意味は二つあります。一つ目は「今まで続いてきた習慣や癖、物事に対する心構え」ですが、習慣と言っても毎日意味のあることを少しずつ続けていって大きな成果を得るといった自分の成長につながる習慣ではなく、物事に対して深く考えることや変化させることから逃れて今までの楽な習慣や癖を何も考えずに続けているという意味合いが強いです。

二つ目の意味の慣性は、「外力が働かなければ、物体が同じ運動状態をずっと保つこと」を意味します。これは高校の物理の授業で触れる「慣性の法則」という運動の法則ですね。二つ目の意味の「惰性」は、この「慣性」と同じ意味を示し、物体に対してのみ用いることが出来ます。

「惰性」の語源は?

次に「惰性」の語源を確認しておきましょう。「惰性」の語源は、漢字の意味を一つ一つ紐解いていくと理解する事ができます。「惰性」は、「惰」と「性」という二つの漢字から成り立っていますね。まず、「惰」という漢字には「怠る」「気が緩む」「緊張感のない」といった意味と、「これまでの習慣や癖」という意味の二つの意味があります。

「惰」という漢字は、心臓を表現した象形文字から発展した「忄(りっしんべん)」と手で工具を持っている形を表現している「左」、「肉」という漢字が変形してできた「月(にくづき)」という要素で成り立っているという事が分かりますね。ここから考えられる事は、「心や肉体を工具で叩く」つまり「緊張して引き締まっている心や凝り固まった体をほぐす」という事です。緊張を解かしすぎてしまった結果、怠けたり何も考えなくとも行動することのできる習慣や癖に行き着くことになってしまったということですね。

次に「性」という漢字です。「性」には、「生まれつき」や「本質的に」といった意味があります。つまり「惰」という漢字と「性」という漢字を二つ組み合わせると「生まれつきの怠けた癖や習慣」というニュアンスになる事が分かりますね。

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