この記事では「欺瞞」について解説する。

端的に言えば欺瞞の意味は「ごまかす・だます」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「欺瞞」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「欺瞞」の意味や語源・使い方まとめ

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「欺瞞」の読み方は「ぎまん」です。日常会話で頻繁に使う言葉ではないため、馴染みがない方も多いかもしれません。「欺瞞」の「欺」は「詐欺」という熟語にも登場しますから、良くない意味であろうことは推測できます。間違った使い方をすると悪い印象を与えかねません。意味を正しく知り、適切な使い方をマスターしましょう。

それでは早速「欺瞞」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「欺瞞」の意味は?

「欺瞞」には、次のような意味があります。

あざむくこと。だますこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「欺瞞」

「欺瞞」はそれぞれが「あざむく」という意味を持つ感じ「欺」と「瞞」で成り立っている熟語です。同じ意味の漢字を重ねることで意味を一層強調しており、明確な意図を持って相手をだます状態を示します。日常の軽い冗談やいたずらに対しては使われません。家族や友人に言われたことに対して「それは欺瞞だ!」と返すと大袈裟で場にふさわしくない表現になります。使う場面に注意しましょう。

欺瞞作戦
軍事用語。兵力を偽る、偽の情報を流す、撤退するフリをするなど、意図的に誤った情報や認識を敵軍に与えることで、相手の混乱を狙う作戦のこと。

自己欺瞞
心理学用語。自分の本心に反していることを知りながら、正当化することで自己防衛を図る心理状態のこと。誰もが経験することだが、深刻化すると精神疾患として治療が必要になる場合もある。

このように「欺瞞」は企業同士、国家・国際問題といった規模、あるいは心理学において、相手に重大な損害を与えた、損失を意図的に隠した場合等に使う言葉です。

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「欺瞞」の語源は?

「欺瞞」の語源は漢字の意味そのものですが、それぞれの漢字が持つ意味を深めておきましょう。

欺:あざむく。だます。
瞞:事実を覆い隠してだます。

同じ意味合いをもつ漢字が繰り返されると、意味が一層際立ちますね。「事実を悪意を持って隠すことで、相手をだましたりあざむいたりする」意味だとわかります。

「欺瞞」の使い方・例文

「欺瞞」の使い方を例文を使って見ていきましょう。例えば以下のような場面で用いられます。

1.あの政治家の言動は欺瞞に満ちている。(名詞的)
2.彼は恋人を言葉巧みに欺瞞した。(動詞的)
3.独裁者が行った国民へのプロパガンダは欺瞞的だった。(形容動詞的)

例文の一つ目は名詞としての用法例です。「満ちる」とよくセットで登場しますが「それは欺瞞だ」という言い方も可能ですね。

例文二つ目は動詞として使った場合です。「~する」をつけることで「相手をあざむく、またその行為をする」意味になります。

例文三つ目は接尾辞「的」をつけ、「~のような」「~についての」「~に関する」と形容動詞的に使った場合です。

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「欺瞞」の類義語は?違いは?

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「欺瞞」に似た意味を持つ表現には、どのようなものがあるでしょうか?

その1「詐欺」

「詐欺」というと「オレオレ詐欺」「結婚詐欺」という犯罪行為が連想されますね。「詐欺」とは「他人に害を与えるような意図的なごまかし」を表し、相手をだまして損害を与えたり金品を奪ったりという違法・犯罪行為を指す言葉です。

「相手をだます」点では「欺瞞」と同じ意味を持ちますが、「欺瞞」は必ずしも処罰対象になる犯罪行為ではない点で異なります。

その2「虚偽」

「虚偽」のはうそ・偽りのこと。故意、あるいはうっかりと真実を誤らせる言明をすることを指します。「虚」は「中身がなくからっぽ、実が伴わない」という意味、「偽」は「いつわる、にせもの」という意味です。二つが重なり、うわべだけを取り繕って中身がない偽物という意味になります。

その3「欺騙」

「欺騙」は「ぎへん・きへん」と読みます。あざむきだますという意味ですが、「虚偽」よりも狡猾で組織的に、悪意を持ってだます状態を指す言葉です。より「欺瞞」に近いニュアンスを持っています。

その4「ペテン」

「ペテン」も人をだますという意味です。だます行為をする人を「ペテン師」と言ったりしますね。「詐欺」を意味する中国語の「bengzi」が訛ったもので、日本では明治初期から使われています。「偽造」が当て字として使われた時期もあり、「意図的に相手をだます」意味を強く持つ言葉です。

「欺瞞」の対義語は?

人をあざむくという意味の「欺瞞」は、対義語はあるのでしょうか?「あざむく」の対義語を考えると見えてきます。

その1「誠実」

「誠実」とは私利私欲をまじえず、真心とともに真面目に人や物事に対することや状態、人を指す言葉です。「誠」も「実」も真面目なまごころという意味があり、同じ意味を重ねた構造は「欺瞞」と同じですね。「欺瞞」が「あざむきだます」漢字を重ねてできたことを考えると、まるで反対の位置にある言葉と言えるでしょう。

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その2「正直」

「正直」は事実に対して正しく、嘘偽りがない良心に満ちたさまを表す言葉です。事実を隠し偽るのが「欺瞞」でしたから、事実ありのままである「正直は」反対の位置にある言葉だと言えます。

「欺瞞」の英訳は?

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「欺瞞」を英語で表現しなければならない場面には遭遇しないのが一番ですが、知識として英語訳も押さえておきましょう。

「deception」

「欺瞞」は英語で「deception」です。「deception」は名詞で、形容詞として「欺瞞的な」と言いたい場合は「deceptive」となります。

The politician deceived the people.
「その政治家は人々を欺瞞した」

The advertisement is deceptive.
「その広告は欺瞞的だ」

「欺瞞」を使いこなそう

この記事では「欺瞞」の意味・使い方・類語などを説明しました。

日常の場面で頻繁に登場する言葉ではないため、改めて正しい意味を知ったという人もいるのではないでしょうか。残念ながら世の中は「欺瞞」に満ちています。自分や大切な人が「欺瞞」の被害者にならないために、日ごろから「一度冷静になる」思考の癖をつけたいものです。

くれぐれも友人や同僚の冗談に「それは欺瞞に満ちている!」という使い方はしないでくださいね。

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国語言葉の意味

「欺瞞」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

「欺瞞」の類義語は?違いは?

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「欺瞞」に似た意味を持つ表現には、どのようなものがあるでしょうか?

その1「詐欺」

「詐欺」というと「オレオレ詐欺」「結婚詐欺」という犯罪行為が連想されますね。「詐欺」とは「他人に害を与えるような意図的なごまかし」を表し、相手をだまして損害を与えたり金品を奪ったりという違法・犯罪行為を指す言葉です。

「相手をだます」点では「欺瞞」と同じ意味を持ちますが、「欺瞞」は必ずしも処罰対象になる犯罪行為ではない点で異なります。

その2「虚偽」

「虚偽」のはうそ・偽りのこと。故意、あるいはうっかりと真実を誤らせる言明をすることを指します。「虚」は「中身がなくからっぽ、実が伴わない」という意味、「偽」は「いつわる、にせもの」という意味です。二つが重なり、うわべだけを取り繕って中身がない偽物という意味になります。

その3「欺騙」

「欺騙」は「ぎへん・きへん」と読みます。あざむきだますという意味ですが、「虚偽」よりも狡猾で組織的に、悪意を持ってだます状態を指す言葉です。より「欺瞞」に近いニュアンスを持っています。

その4「ペテン」

「ペテン」も人をだますという意味です。だます行為をする人を「ペテン師」と言ったりしますね。「詐欺」を意味する中国語の「bengzi」が訛ったもので、日本では明治初期から使われています。「偽造」が当て字として使われた時期もあり、「意図的に相手をだます」意味を強く持つ言葉です。

「欺瞞」の対義語は?

人をあざむくという意味の「欺瞞」は、対義語はあるのでしょうか?「あざむく」の対義語を考えると見えてきます。

その1「誠実」

「誠実」とは私利私欲をまじえず、真心とともに真面目に人や物事に対することや状態、人を指す言葉です。「誠」も「実」も真面目なまごころという意味があり、同じ意味を重ねた構造は「欺瞞」と同じですね。「欺瞞」が「あざむきだます」漢字を重ねてできたことを考えると、まるで反対の位置にある言葉と言えるでしょう。

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