この記事では「ご足労」について解説する。

端的に言えばご足労の意味は「相手に足を運んでもらう」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると丁寧な印象を与えられるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「ご足労」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「ご足労」の意味や語源・使い方まとめ

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ビジネスシーンでは会話でもメールでも「ご足労いただき、ありがとうございます」といった表現を目にします。しかし実際に使用する時になると、上司に使ってよい表現だったか、どんな場面で使う言葉だったかと困る人も多いのではないでしょうか。尊敬語の要素も含むのが「ご足労」です。意味を正しく理解し、適切に使いこなせるとコミュニケーションが一気に円滑になります。

それでは早速「ご足労」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ご足労」の意味は?

「ご足労」には、次のような意味があります。

相手を敬って、その人がわざわざ出向くことをいう語。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ご足労」

「足労」とは文字通り、足に労苦をかけるという意味です。足を動かす、つまり歩く・来る・行くなどの行動を指します。「ご足労」は足労に尊敬語の「ご」を付けた表現で、相手にわざわざ足を運んでもらうという意味です。目上の人・お客様・取引先等に対して使いましょう。相手が足を運ぶ場所は、こちらがいる場所でも指定する別の場所でも構いません。いずれにせよ、こちらが指定する場所までわざわざ足を運んでもらうことに対する感謝と労いの気持ちが含まれています。

「ご足労」はやり取りの中で、自然に気持ちを伝えられる表現の一つです。

「ご足労」の使い方・例文

「ご足労」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、以下のような場面で用いられます。

\次のページで「「ご足労」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.本日はお足元が悪い中、ご足労いただきましてありがとうございました。
2.遠方の会場までご足労いただきまして、誠にありがとうございました。
3.来週の打ち合わせですが、私どもの事務所までご足労をお願いすることは可能でしょうか?
4.ご足労いただくことになりますが、来月のイベントも本県で開催です。よろしくお願いいたします。

「ご足労」が活用される場面を2パターンに分けて考えてみましょう。

一つ目は「お礼」を伝える場面で、例文の1と2が該当。来社してくれた、あるいはこちらが指定した場所まで相手が出向いてくれた事実に対しての感謝を込めて使います。「いただきまして」とセットで使われることに注意しましょう。

二つ目は相手に「依頼」する際に登場する「ご足労」です。例文では3と4ですね。ただし3と4では、使われるタイミングが異なることに気づくでしょうか?

例文3は相手が足を運ぶことを承諾する前の、都合を尋ねる段階です。「その日はちょっと…」と予定を検討する余地が相手に残されていますね。例文4は、足を運んでもらうことが前提で依頼しています。イベントや既に決まっている案件など、相手がほぼ断らないだろうと予想できる場合には使って構いません。ただし相手の都合を尋ねる必要がある場合に「ご足労いただくことになりますが」を使うと、押しつけがましい印象になります。

依頼の「ご足労」は使うタイミングと表現に注意しましょう。

「ご足労」の類義語は?違いは?

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「ご足労」に似た意味を持つ表現には、どのようなものがあるでしょうか?

その1「手間をかけさせる」

「手間」のほか以下の語も同じ意味で使われます。

・手数
・ご厄介
・ご面倒

いずれも「相手にとっとて労力が必要なこと」を依頼したり、お礼を伝えたりする表現です。

「弊社まで来ていただき、お手数をおかけしました」
「当日は会場まで移動のご厄介をおかけしますが、よろしくお願いいたします」
などのように使われます。

その2「お越しいただき」

「お越し」は「行く」「来る」といった移動を示す言葉の尊敬表現です。「いただく」という依頼を示す語と一緒に使うことで、相手に移動の手間をお願いする表現として、「ご足労」と同じように使えます。

「本日は弊社までお越しいただき、誠にありがとうございました」は、「本日は弊社までご足労いただき、誠にありがとうございました」と同義です。「はるばる」「わざわざ」といった副詞とセットにすると、丁寧感が増します。

その3「お運びいただき」

「運ぶ」は本来は物の運搬を示す言葉ですが、相手を主語にし「お運びいただく」「お運びになる」という表現にすると、「行く」「来る」の尊敬語として使うことができます。「本日は弊社まで足をお運びいただき、誠にありがとうございました」と言えますね。

また「足」を文中に置かずに「お運びになる」単体でも使えます。上記の文章は「本日は弊社までお運びいただき、誠にありがとうございました」としても構いません。

「ご足労」の対義語は?

尊敬語表現である「ご足労」には、対義語はあるのでしょうか?言葉の意味の面から考えてみましょう。

「伺う」

「ご足労」は相手に出向いてもらう表現でした。反対の意味を考えると「自分から出向く」ことになりますね。自分が相手のいる場所まで、あるいは相手が指定した場所まで移動することを示す表現は「伺う」です。「行く」の謙譲語ですね。

「来週の打ち合わせは、御社まで伺う予定です。」
「当日は会場に直接伺いますので、よろしくお願いいたします。」

「伺う」のほか、「参る」「お邪魔する」等の表現も知っておきましょう。多彩な表現を使い分け、相手に対する敬意を上手に伝えたいですね。

「ご足労」の英訳は?

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「ご足労」はいかにも日本語らしい表現ですね。英語では表現できるのでしょうか?見てみましょう。

「Thank you for coming today.」

英語には、日本語ほど厳密な敬語表現はありません。

そのため来てくれたことへの感謝や労いを込めたメッセージは、相手が目上であろうとお客様であろうと”Thank you for coming today.”で十分伝わります。

特別にフォーマルな意味を込めたい場合は、動詞をappreciateに置きかえてみましょう。appreciateは「感謝を述べる」意味合いがあり、単に”Thank you for~”を使うよりも格式が上です。

I appreciate your visiting today.
「本日のお越しに感謝申し上げます。」

「ご足労」を使いこなそう

この記事では「ご足労」の意味・使い方・類語などを説明しました。

お互いの利害関係が発生するビジネスシーンだからこそ、お礼や依頼の表現をバリエーション豊富に知っておくことが大切です。円滑で心地よいコミュニケーションは良い仕事の基本!

相手をお呼び立てする必要がある場合に快く応じてもらえるように、「ご足労」を正しく使いこなしていきましょう!

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国語言葉の意味

「ご足労」の意味や使い方、注意すべきポイントは?例文や類語を元大手予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「ご足労」について解説する。

端的に言えばご足労の意味は「相手に足を運んでもらう」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると丁寧な印象を与えられるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「ご足労」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「ご足労」の意味や語源・使い方まとめ

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ビジネスシーンでは会話でもメールでも「ご足労いただき、ありがとうございます」といった表現を目にします。しかし実際に使用する時になると、上司に使ってよい表現だったか、どんな場面で使う言葉だったかと困る人も多いのではないでしょうか。尊敬語の要素も含むのが「ご足労」です。意味を正しく理解し、適切に使いこなせるとコミュニケーションが一気に円滑になります。

それでは早速「ご足労」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ご足労」の意味は?

「ご足労」には、次のような意味があります。

相手を敬って、その人がわざわざ出向くことをいう語。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「ご足労」

「足労」とは文字通り、足に労苦をかけるという意味です。足を動かす、つまり歩く・来る・行くなどの行動を指します。「ご足労」は足労に尊敬語の「ご」を付けた表現で、相手にわざわざ足を運んでもらうという意味です。目上の人・お客様・取引先等に対して使いましょう。相手が足を運ぶ場所は、こちらがいる場所でも指定する別の場所でも構いません。いずれにせよ、こちらが指定する場所までわざわざ足を運んでもらうことに対する感謝と労いの気持ちが含まれています。

「ご足労」はやり取りの中で、自然に気持ちを伝えられる表現の一つです。

「ご足労」の使い方・例文

「ご足労」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、以下のような場面で用いられます。

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